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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第13章 魔女様の強烈防衛戦! 禁断の大地が活性化してきたと思ったら、女王様、魔王様入り乱れて暴れます!
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267.魔女様、消極的理由で大将戦に出ることを決断する。リリはスピードの向こう側を目指し、聖王様はご立腹の様子

「あ、あれはなんだぁあああ!?」


 次の瞬間である。

 会場のスクリーンには怪物の姿が映し出された。


「あぁっとぉおおおお! 村の上にでっかいサイズのアレがおる!」


「うわちゃああ、最悪やぁああ!」


 メテオとクエイクの絶叫が闘技場にこだまする。

 観客たちは映像を指さし、大きな声をあげ、あるものは目を背け、あるものは悲鳴を上げる。


「ひぃいいいいい、無理! あれはあれで無理っ!」


 ……そこに映し出されていたのは、大きな大きな芋虫だった。


 しかも、である。羽が生えているのだ。

 ちっこい羽が芋虫の背中に生えていて、ぱたぱたとしているのである。


 ええぇ、どういうデザインよ!?

 どうして、羽化していないわけ!?

 そもそも、あの小さい羽根でどうして浮けるわけ!?


 いきなり現れた不条理極まる事態に腹立たしいことこの上ないのだが、羽の生えた芋虫モンスターなんて非常に趣味が悪い。

 ぷくぷくしているのが一瞬かわいく見えたけど、やっぱりダメ。

 一応、アレじゃなかったのでそれだけは救いだけど、絶対に近づきたくない。


 うぎぐごぉぉおおおおおお!


 そうこうするうちに、羽の生えた芋虫は紫色に怪しく光る粉を飛ばし始めた。

 そもそも叫び声みたいなのがキモくて無理。

 ひぇえええ、さっきの男の話からすると、あれって毒じゃないの!?


 村の空に紫色の何かがゆっくりと拡散していく。

 これってやばいでしょ!?

 私が出て行って燃やすしかない!?



 わぁおおおおおおおおおんっ!


 そんな時に画面に現れたのはシュガーショックだった。

 しかも、である。


「やっぱり無理ですぅうう! あんな虫聞いてないですぅうう!」


 どういうわけか、リリがシュガーショックの背中に乗っている。

 いや、乗っているというか、結び付けられているっていう感じである。

 だ、大丈夫なの!?


「リリ様、今こそ疾風かぜになるときですよっ!」


「か、風になんかなりたくないですよぅうう!」


「このままじゃみんな、死んじゃいますよっ! それにユオ様が見ていますよっ! かっこいいところ見せてやってください!」


 ララはリリに対して、意味不明な励ましを送る。

 そんなこと言っても、リリは半泣きになっちゃってるじゃん!


 私にかっこいいところ見せろって言ったって、さすがに無理じゃない?


「……あたしが手に入れてやる……! “その領域”……、“スピードの向こう側”を……!! ユオ様、見ててくださいっ!」


 しかし、意外や意外。


 さっきまで震えあがっていたリリが一瞬にして自分を取り戻したのだ。

 ララがなんだかいいこと言ったのだろうか。


 いや、それだけではない。

 明らかに人が変わったかのような力強い瞳になっている。

 何を手に入れるのか知らないけど、すごい決意がびんびん伝わってくる。

 びしぃっと気合が入ったというか。


「ドエレーー、“COOOL(クール)”じゃん……?」


「ビッとしてるでやんすぅうう!」


 私の中からリリをたたえる言葉が自然と湧き出してくる。

 クール、それ以外に言うべき言葉があるだろうか。


「飛べ、シュガーショック!! 皆癒しにしちまうぜ!」


 わぉうううう!!


 巨大な狼となったシュガーショックは全身をバネのようにして一気にジャンプ!

 リリとシュガーショックは案外、いいコンビなのかもしれない。


「テメー、“ベコベコ”にしてやる! “聖女”の“祈り”を“喰らい”やがれぇええええっ!」


 シュガーショックのジャンプが頂点に達したところで、リリは桃色の光を発生させる。

 それは過去に魔族と戦った時にも見たものと同じものだった。

 すなわち、あらゆる邪気を払う、聖なる光のバリア!


 ヴァルルル!! オォオン!! ゴパァッ!!


 それはものすごくうるさい音を伴って、どんどん広がっていく。

 最後の「ゴパァッ」は何の音なのかわからないけど、すごく爽快だ。


「ありゃああ、ギギラスさんご自慢の紫の粉が無くなっていくでぇええ!」


「さすがはリリ様! 爆音聖女! 憧れちゃうううう!」


 メテオとクエイクの解説通り、リリの光は空を覆っていた紫色の鱗粉を全て消し去ってしまう。

 シュガーショックのスピードを利用することで、バリアの拡散力を何倍にも増加させたのかな?


「!?」


「!?」


 リリのあまりの浄化力に私たちは皆、思考を奪われてしまう。

 観客たちの頭にも「!?」が浮かんでるだろうけど、考えたってしょうがない。


 すごいよ、これが聖女なんだね!

 原理は分からないけど、とにかく気持ち悪い虫の攻撃を防げたのはよかった。



「なぁあああっ!? なんだとぉっ!?」


 これには凱旋盗の人もびっくり仰天の模様。

 そりゃそうだよね、巨人がやっつけられたと思ったら、鱗粉攻撃さえ無力化されるんだもの。



「あっちゃあー、虫の粉どこいったん? 何やねんアイツ、見かけ倒しやん」


「しっ、お姉ちゃん、そんなこと言うたら凱旋盗の人に失礼やで? あの人ら、一生懸命に考えてこのザマなんやから。そっとしとこ? な? これ以上つついたら破裂するかも」


 敵を無効化したことに気を良くしたのか、メテオたちもさらなる口撃を加える。

 あの子たち、口は災いの元って言葉を知らないのかしら。

 後でひどい目に会っても知らないからね。


 しかし、ここで気になるのはあの気味悪い虫はまだ死んではいないって言うことだ。

 クレイモアが何かを投げてるけど、思った以上に硬いみたいでダメージが通らない。

 むくむくした雰囲気なのに固い芋虫とか非常に嫌である。


「うぅむ、困りましたねぇ。あの虫を撃ち落とすのに、どなたか応援を頼みたいのですが……。そうだ、炎が使える人がいいですねぇ」


「そ、そうですね! 炎でどぎゅうんっとしてくれる人がいい……のかな?」


 画面のララとアリシアさんは、こちらをチラチラ見てくる。

 明らかにそこに来てくれというプレッシャーを感じる。

 っていうか、アリシアさん、絶対にララにセリフを言わされてるでしょ! 顔引きつってるし!


 ぐぅむ、困った。

 こちらで戦えるのは私と燃え吉ぐらいであり、そのどちらもが炎が使える。私のは破壊光線みたいなのだけど。

 つまり、私たちのうちどちらか一人に応援に来いと言ってるのだ。


「どうするでやんすか? ララさんからバックレると怖いでやんすよ」


 不安そうにこちらを見てくる燃え吉。

 その口調は少しだけリリに影響されつつあった。


 嫌だなぁ、あんな虫がいるところに行きたくないよ。

 下に落ちてきたら嫌だし、他の種類の虫も出てくるかもしれないし。

 サソリに始まり、ハエ、イモムシだもの。

 絶対にセンス悪いやつしか出てこないわけで。


「……燃え吉、やっぱり、大将戦は私が出るわっ! あんたは外で化け物の相手をお願い」


「わ、わかったでやんす! それはそれで助かるでやんす!」


 そんなわけで私は燃え吉の代わりに大将戦に出ることにした。

 仮面で変装していれば正体はバレないだろうから、この際あきらめよう。


 人間の悪者を相手にした方が、へんてこな虫と戦うよりよっぽどましなのである。


「ええと、ここら辺だったっけ?」


 私は空間袋からいつぞやの仮面を取り出す。

 この間、ララに色を塗ってもらったので、さらにかっこよくなったブツである。


 私はそれをはめて闘技場にすたすたと向かうのだった。

 しょうがない、さくっと気絶させちゃおう。

 うん。




◇ 聖王国の受難:虎の子兵器のギギラス不発で聖王様お怒りを表明



「なっ、なぁんだとぉおおおおおっ!?」


 ニヤニヤと笑いながら映像を眺めていた聖王国の一同は一瞬で顔を引きつらせる。

 彼らの扱う黄金蟲ギギラスの攻撃が無効化されたからである。


 場合によっては村だけではなく、ここら一帯の生命を滅ぼす鱗粉攻撃である。

 それを防ぐ方法はないとさえ言われていたはずなのだ。


 しかし、それを防いだのはピンク色の髪の毛の少女だった。

 彼女は鬼気迫る勢いでモンスターを操り、巨大な浄化のドームを発生させたのだ。

 

 ギギラスの放つ滅びの鱗粉はあれよあれよという間に消えてなくなってしまう。

 聖王国アスモデウスの笑顔は数分程度しかもたなかった。

 

「あ、あれはパズズの時にも少しだけ出てきたドームではないか……」


 ハマスはそのドームを見て顔面蒼白になる。

 あの悪竜の体当たりを防いだ、あのピンク色のドームが再現されたからだ。

 彼女はその正体が分からず、おそらくはドワーフの防御兵器かなにかだと思っていた。


「お、愚か者! あれは聖女だ! 聖女の浄化魔法ではないかっ! おのれぇえええ!」


 しかし、聖王アスモデウスだけはその浄化魔法の正体を見破る。

 彼女の顔は引きつり、過去に何らかの因縁があることを予感させた。


「聖王様! ギギラスはまだやれます! 死んではいません!」


 唯一の救いはギギラスは上空を飛んでいるために攻撃が通らないことだ。

 しかし、鱗粉攻撃は防がれ、こう着状態入っているのは確かだ。

 もちろん、隙あらばギギラスに村を襲わせるよう指示しながら。



「くそっ、あの凱旋盗とかいう男に任せるとはな……。まぁいい、奴は化け物だ。あの男と戦う相手はすぐにでも死んでしまうだろう」


 そうなると禁断の大地の村の攻略は凱旋盗に任せることになる。

 聖王は気を紛らわすかのように目を閉じて、ふぅっと息を吐く。

 

 彼女は知っていた、凱旋盗の男が尋常ならざる技の使い手であることを。

 

 そして、彼女は知らなかった。

 途方もない化け物が何の緊張感もなく闘技場に上がってしまったことを。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「ひぃいいい、あの通りすがりの親切な仮面の人が出てくるなんてぇえええ」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークやいいねもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] メテオ姉妹はどう紹介するんだろう?? 下手な紹介したら溶岩温泉の刑だよ!?
[一言] 魔女様なら"凱旋盗"なんざあっつーまにグシャにしちまうぜー
[一言] 通常な化け物と途方もない化け物…ヤ○チャとサイ○人ゴットぐらいの差がありそう…
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