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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第13章 魔女様の強烈防衛戦! 禁断の大地が活性化してきたと思ったら、女王様、魔王様入り乱れて暴れます!
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254.魔女様陣営、幸先の良いスタートに大興奮するも、次に出てきたやつに絶句する。

「あらら、シモンズの野郎、負けちゃってんじゃん! どうすんのよ、これ」


 こちらは凱旋盗の陣営。

 覆面をした男が大きな声でわめきたてる。

 その声はむしろ明るく、この戦いを楽しんでいるかのように聞こえる。


「ふん、シモンズは霊獣を操れなかったね、それだけ。しかし、さすがは白昼の剣聖。なかなかのものね」


 凱旋盗の一人の魔族の少女は落ち着いた表情だ。

 シモンズが負けたことよりも、それを打ち負かしたクレイモアに関心を抱いている。


「まぁ、所詮、シモンズは人間。やつを使ったのは聖王国の醜い顔を立ててやったまでのことだ」


 その魔族の少女の隣に座っていた魔族もそれに同意する。

 彼は美しい目鼻立ちをしていたが、その声質でかろうじて男性だとわかる。

 

「おいおい、余裕だねぇ、お前ら。よぉし、次は誰が行く? 俺が行こうか? 二番手だけに」


 覆面の男は相も変わらず調子のいいことを言うも、凱旋盗の他のメンバーは笑わない。

 ノリの悪い仲間たちに彼は「はぁ」と溜息をつくのだった。


 彼がメテオをしきりに勧誘していたのは、単に楽しげに会話のできる仲間欲しさもあったのかもしれない。



「†俺が行こう……†」


 席を立ったのは全身を黒ずくめにしている男だった。

 彼は他の凱旋盗のメンバーとは距離を取って座っており、これまでずっと黙っていた。

 

 彼は凱旋盗の指導者のところに近づくと、「†この戦いが終わったら、返してもらうぞ†」とだけ伝えて、返事も聞かずにステージへと向かう。

 あまりにも無粋なその態度に、覆面の男は「おーい、ちょっと待ってよ」などと声をあげるも、一切聞いていない様子。



「あーあ、行っちゃったじゃん。あいつが一番強いのにさぁ」


 黒ずくめの男を見送りながら、覆面の男は口を尖らせる。

 当初の予定では、もっと遅い順番で出させるはずだったのだが。


「あんた冗談が上手ね。……まぁ、とはいえ、あいつに勝てる人間はいないだろうね」


 魔族の少女は少しだけ頬を緩める。

 そして、闘技場を憐れむような瞳で見つめるのだった。





「クレイモア、おつかれ! 無事でよかったよっ!」


 一方、ユオ達の陣営はクレイモアの勝利に沸き立っていた。

 鎧を失ってはいるものの、クレイモアはほとんどかすり傷さえ負っていない。

 結果だけ見れば完勝とでもいうべき内容だった。

 

 ユオはクレイモアにねぎらいの言葉をかけ、皆も笑顔で彼女を出迎える。

 

「にゃはは、あたしが連続して戦ってもいいのだぞ?」


 クレイモアはそんなことを言うが、大会のルール上、それはできない。

 一人一度までしか戦うことができないと決められているのだ。


「よぉし、次は誰が行く? ちゃちゃっとやっつけて、あいつらに土下座させるよっ!」


 ユオは自分が戦わないと決めているので、やたらと張り切っている。

 この女、案外、わがままなのである。


 もっとも、内心はこんな戦いは理不尽だとも思っているのだが、人前で口から怪光線を出して戦うよりはマシだ。


「敵はもう出てきたでやんすよっ!」


 こちら側が誰が出るかを決める前に、敵方は次の出場者を決めたようだ。


「あいつは……」


 リースの女王イリスの顔は一気に険しいものへと変化する。

 それは闇夜に紛れて自分たちを襲い、魔王イシュタルに致命傷とでもいうべき傷を負わせた男だったからだ。

 その呪いで彼女自身も一時的にではあるが、魔力を失ってしまった。

 彼の顔ははっきりと見え、金色の髪で中年の男だとわかる。

 


「ふふふ、あやつがイシュタルを……」


 最強を自負するイリスに、久しぶりに泥を付けた相手である。

 その屈辱をイリスは決して忘れてはいない。

 おそらくは魔剣使いで相性もそれほど良くもないだろう。

 だが、自分こそがあれと戦うにふさわしい。

 

「わらわが行く。八つ裂きにして真っ黒い塊に変えてやる……」


 イリスは殺気を丸出しにして、皆にそう伝える。

 ユオはイリスの言葉の禍々しさに悲鳴をあげる。

 

 とはいえ、順当に考えれば、イリスが戦うことに異論はなかった。

 早々に2勝してしまえば戦いはより有利に進められるからだ。



 しかし、予想外のことが起こる。

 闘技場にはすでにハンナの姿があるのだった。


「なぁあああっ!? なんだアイツは!? わらわの話を聞いてなかったのか!?」


 因縁の対決になるはずが、出し抜かれてしまった形である。

 当然、女王は激怒する。

 彼女の背景には膨大な魔力によるバラの花が咲き、ユオをはじめとして皆が青い顔をする。

 もしも、味方の陣営でなければ、ハンナは燃えカスになっていたかもしれない。


「女王様! そんなに頭に血が上ってたら、勝てる試合も勝てませんよっ! とにかく、早い者勝ちですっ」


 女王から順番をかすめ取ったというのに、ハンナは悪びれもせず明るい声をあげる。

 しかも、不敬ともいうべき言葉さえ投げかける始末。

 ユオは天真爛漫なハンナの言動に「あちゃあ〜」とため息を吐く。


 ハンナは剣聖のサンライズによってこの辺境の村だけで育てられた少女である。

 それがゆえに外の世界をあまり知らず、身分というものもあまりよくわかっていない。

 女王というのは彼女の信奉するユオよりも、ちょっと低い身分ぐらいにしか思っていないのだった。

 ……非常に問題の多い娘であり、その腕っぷしの強さから王都に出てきたりしたら大問題を起こすやつである。



「ふふっ、頭に血が上っているか……。確かに、そうかもしれんな」


 一触即発の事態かと思ったが、女王はどういうわけかハンナの言葉に笑みをこぼす。

 彼女はとある昔、そんなことを言われたのを思い出したのだ。

 ハンナの祖父である、サンライズの言葉を。


 女王が矛を収めたので、ユオはふぅっと安堵のため息をつくのだった。





「おぉおお、これまた好カードの連続やでぇえええ! 」


「謎の黒尽くめの剣士と、剣の達人にして温泉リゾートの看板娘! そして、魔女様親衛隊!」


 メテオとクエイクのアナウンスとともに、観客たちは歓声をあげる。

 第一試合でシモンズが破壊した箇所はドワーフの職人たちがすぐさまに補修してしまった。

 彼らは『ドレス工房』と背中に書かれたツナギを着ており、その姿は大陸中に放送される。

 すなわち、自分たちの技術の高さを視聴者に印象付けるのだ。


「ハンナってなんだ、あの娘? あんなに細いのが強いのか?」


「お前知らないのかよ? あれ、剣聖のサンライズの孫だぞ? この間のドワーフの国の動乱のときも暴れまわってただろ」


 観客の一部は賭けをしているために、入念に下調べをしている。

 とはいえ、ハンナの名前はそれほど知られているわけでない。

 彼女はあくまでもこの村の村娘であり、そもそも剣聖のような二つ名を持っていなかった。

 各国で実績を出していたクレイモアとは知名度という点においては雲泥の差があった。


「さぁ、この黒尽くめの剣士はいったい何者なのか!? 名前はえーと、†シレン・ザ・ダークネス 三世†!! なんやねん、この三世って!? ……なんつぅ、14歳みたいな名前」


「いやぁ、憧れたわぁ、こういうの! 誰かさんも、さすらいの旅商人、メテオ・ザ・ラグランジュとかやってたもん!」


「んがぁあああ!? なに、人様の黒歴史を晒しとんねん、このアホ妹!」


「あいたた、ええやん、かわいいやん、素敵やん。さぁ素性・経歴、一切不明やけど、めっちゃ強そうやでぇ! さぁ、張った張った!」


 黒尽くめの剣士の情報はメテオたち運営にも一切上がっては来なかった。

 賭けをするためには前情報が必要なものだが、シレンの情報は与えられなかった。


 それでも黒尽くめの剣士は異様であり、底知れぬ不気味さを漂わせていた。


「おぉ、ハンナが服を着替えたぞぉっ! 魔女様の親衛隊隊長の本気の印だぁあああ!」


 一方のハンナは胸元に『魔』の文字のついた服を着用。

 ララによって背中に入れるのは禁止されたので、胸元にいれることにしたらしい。


「たいちょぉおおおお! ファイトぉおおお!」


「魔女様の威光を世界に知らしめるときですよぉおお!」


 ハンナの親衛隊仲間も同じ服装で固め、観客席から熱い声援を送る。

 もっともその大半が村人だったわけだが。


「ハンナぁあああ!? その服、やばいでしょぉおお?」


 ハンナの早着替えに、ユオは愕然とした表情でそれを見つめる。

 特に『魔』の装束は危ない。非常に危うい。


 いろいろな思惑が交差する中、二人は闘技場で向き合う。

 観客たちは熱狂の渦の中で、試合が始まるのを見守るのだった。

 

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「なんつぅ名前だよ(憧れるけど)」


と思ったら


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 敵の名前も味方の衣装もヤベェよ!!イロイロと!
[良い点] く、失われた厨二病が疼く... [一言] 対戦相手ハンナのゲフンゲフンじゃ?
[一言] お話を盛り上げるためにはここで一勝一敗にならにゃいけませんしねえ 相手はハンナの父親で、惜しくもハンナが負けるって予想はどうでしょ?
感想一覧
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