228.魔女様、奴を捕獲するとか言い出します(知ってた)
「ぐうぉおおおおおおお!」
頭を一つ失った大蛇はそれでも懲りずに噛みつき攻撃を仕掛けてくる。
それも一つの頭ではなく、複数の頭で。
私はといえば、それをただ受け流すだけだ。
いや、正確に言えば、受け燃やす、なのかな。
ひゅぼっ、じゅおわぁああ、ふしゅん、どぱっ、ぼぼぼ……
どうやら頭の一つ一つの素材が違っているらしい。
私の熱鎧に触れると、それぞれが変な音を立てて、燃え尽きてしまうのだった。
うぅ、あんまりよろしくない匂いがする……。
この戦いが終わったら、私、温泉に入るんだ……。
「ば、化け物めぇええ! 七彩晶の猛毒がどうして効かない!!!??」
蛇は頭が残り一つになった状態。
それでも元気に恨み言を言っている。
「七彩晶の猛毒?」
「ユオ様、七彩晶の内側には毒があるんですわ。あいつはどうやら七彩晶からそれを抜きとって濃縮してるようですぜ」
ドレスが後ろの方から補足してくれる。
なるほど、あいつの毒は七彩晶からとられたものだったのか。
ふぅむ、成分を濃縮できる能力があるなんて……便利なやつ。
あのキラキラの温泉を安全に使うためにも、その能力、けっこう欲しいかも!
「あんた、そろそろ負けを認めて降参しなさい! 命までは取らないわ! 土下座で許してあげる」
頭をほとんど燃やし尽くした私はけっこうストレスを解消できていた。
確かに死にそうな目には遭ったけど、過去のことは過去のことなのだ。
しかし、よくよく考えたら、モンスターが土下座ってできるのかしら。
「ま、負けを認めるだと!? 貴様ら人間に受けた仕打ちを我が忘れろというのかぁあああ!?」
蛇は私の言葉にやけに反応してくれる。
しかも、人間に受けた恨みがどうのこうの。
それって、私と関係なくない?
精霊って燃え吉もそうだけど、過去を引きずりすぎるよね。
「我の恨みはこんなことでは消えぬぞぉおおおお!」
蛇がそう叫んだ瞬間、残された首の一本から奇妙なものが飛び出した。
ひゅぽんっ!
そんな音を立てて、虹のようなグラデーションの変な7色の生き物が現れたのだ。
大きさは人間の頭よりも小さく、目玉は一個しない。
それは燃え吉のデザインによく似ていたが、燃えてるわけではない。
どっちかというと、綿あめとか、雲みたいな形をしている。
尻尾みたいなのがにょろっと出ているのも面白い。
「ユオ様、それが本体だぜっ!」
後ろからドレスの声。
なるほど、この7色のやつが本体なのか。
さっきの大蛇は仮の体というわけらしい。
……あれ?
……こいつ、けっこう、かわいくない?
色使いがいいのもあるけど、目玉が一つっていうのが斬新で面白い。
「あんた、かわいい外見してるわね。気に入ったわ」
私はそいつを捕まえようと、手を伸ばす。
「ひ、ひぃいいいい? なんだ、その目は!? 我は災厄の六柱の一つだぞ!? く、来るなぁあああ!?」
だがしかし。
奴は怯えた声を出して、逃げ去ってしまう。
燃え吉と同じように空中に浮かぶことができるらしく、ふよふよと天井近くに。
スピードは速くないので、捕まえることは難しくなさそうだ。
「くははは! 残念だったな、我は七彩晶の中に入れるのだっ! 我は外の世界で思うように生きて見せるわ! 屍の山を築いてみせるぞぉおお!」」
奴は天井の中に、すぅ〜っと入ってしまうではないか。
なんてことだろう、せっかくおもしろいのが見つかったっていうのに。
しかも、なんだか物騒なことを言っている。
どうせできもしないくせに、プライドだけは高いらしい。
こうなったら人間の知恵っていうものを見せるしかないよね。
「ドレス、私、あの七色のやつ、連れて帰るわ!」
「へ? えぇええ? あれをですかい? あいつ、悪いやつですぜ!? さっき、半殺しにされかけたじゃないすか!?」
「過去のことは過去のことよ。あいつ、色々、使えると思うわ。七彩晶を操れるし、アクセサリーショップをやらせるわ」
「七彩晶のアクセサリー!? いや、まぁ、それはいいとして、七彩晶の中に入られちゃあ手も足も出せないですぜ!?」
ドレスは頭を抱えて、うむうむ唸る。
確かに普通に考えたら、床や天井に同化してしまうやつを捕まえるのは至難の業だろう。
しかし、どうにか手があるはずだ。
あいつを七彩晶から飛び出させる方法が。
「……そうだ! ドレス、カルラ、イリーナも! みんなも、こっちに来て!」
そして、私の頭の中にあるアイデアが浮かび上がる。
それは皆の力を合わせなきゃいけない作戦だった。
「えぇえ、私も参加しなきゃいけないわけ? 一応、私たち敵同士でしょ!?」
イリーナはそんなことを言うが、やつは外の世界に出たら悪さをすると宣言しているのだ。
ここでみすみす逃がしてしまっていいものでもないだろう。
ここは敵味方を超えて協力すべきタイミングのはず。
「しょ、しょうがないわね! 今回だけだからねっ!」
彼女は腕組みをして、若干怒った表情。
うわぁ、かわいいなぁ。
年下の生意気な女の子って感じで。
「ドレスとイリーナと他のみんなはこうして……」
「でぇええ、それをやれってのかい!?」
「あんた、正気!? ドレス、あんたのボス、無茶ぶりが過ぎるわよ!」
「ユオ様には慣れたつもりだけど、慣れねぇなぁ……」
私はドレスたちドワーフの皆さんに作戦を伝える。
ドレスもイリーナもびっくりしてるけど勝算はある。
無茶ぶりかもしれないけど、ドレスたちならやってくれるけど。
「カルラはごにょごにょ……」
「…………ひ」
次にカルラに耳打ちする私である。
彼女の役割は特に重要だ。
彼女の力と私の力が合わさることで、奴をあぶりだすことができるはず。
「カルラ、頑張ろうねっ!」
私に耳打ちされたカルラは顔を赤くして、かなりのやる気を見せている。
この子、無口だけど、けっこう、熱いハートを持っているのかもしれない。
作戦が成功したら、頭をなでなでしてあげよう。
それじゃ、捕獲作戦スタートだよっ!
◇ カルラさんの脳内
「カルラはごにょごにょ……」
「…………ひ」
ユ、ユオしゃまの吐息が耳にぃいぃいいいいいい!!!!!???
私の体はそれだけで溶けそうになっていた。
こんなに近距離に近づいてくれるなんて、う、う、嬉しすぎる。
それにいい匂いがしゅるぅううう。はぁはぁ。
「カルラ、頑張ろうねっ!」
しかも私を信頼して、ウインクするユオしゃま。
その姿があまりにも愛らしくて、私はもう死んでもいいとさえ思った。
でも、死ねない。
いつかきっと、ユオしゃまが私の頭をなでてくれるまで。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「カルラさんの死期が近すぎるんではないですかね……」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークやいいねもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。






