227.魔女様、反則みたいな熱を発生させ、魔法防壁とかイキがるあいつを黙らせる
「なぁにが授業料だぁあああ!? 我を災厄の六柱が一つ、罪の聖霊セブンシンズ様と知っての言葉かぁああああ!」
七首の蛇は私に挑発されたからか、怒り心頭らしい。
罪の聖霊なんて言われても知ってるわけない。
「燃え吉、知ってる?」
「うぐ、精霊族ってことは、遠い親戚みたいなもんでやんすねぇ。ご迷惑をおかけして申し訳ないでやんす」
燃え吉は微妙な表情をして、そういう。
なるほど、精霊つながりで親戚というわけか。
ふぅむ、これ以上、性格の悪い精霊が出るようだったら、精霊界に文句を言ってやらなきゃいけない。
「ユオ様、気を付けてくれ! あいつの状態異常攻撃だけはやっかいだぜ! 毒と混乱と石化と暗闇に無音、それに呪いに空腹まで、ありとあらゆるデバフがついてくるぜっ!」
ドレスが後ろから、あいつの情報を教えてくれる。
よくもまぁスラスラと喋れるものだとちょっと関心。
それにしても、石化まであるなんて悪意山盛りの技をもっている。
どうりで体が動かなくなったのか。なるほど。
私の場合、温泉があったから助かった。
あぁ、よかった、温泉があって。
「我はかつて炎の魔神、ラヴァガランガ様にも比肩すると言われた精霊! その偉大さを思い知るがいい!」
蛇はうねうねとうねりながら、どこかで聞いたことのある名前を口にする。
ラヴァなんとか……、燃え吉のことだよね。
なるほど、この蛇、燃え吉と同じぐらいの強さなのか。なるほど。
「……死ね」
蛇はその後も自分の偉大さについて意気揚々と喋ろうとする。
だが、カルラはそんなことお構いなしらしい。
彼女は特大の氷柱を出現させ、蛇に向かって一直線に飛ばす。
それも数本じゃきかない、数百本というレベル。
あんなのに貫かれたら死んじゃうかもしれない。
ガガガガガガッ!
しかし、意外なことが起こった。
奴に氷柱が当たる前に、一つ残らず砕け散ってしまったのだ。
まるでそこに透明の壁が現れたかのように、一定の距離までしか届かない。
「くかかか! その程度の攻撃で傷がつくものか! 七彩晶を利用した我の七彩魔法防壁は無敵なのだぁ!サンライズとくそエルフの女どもでさえも、我を閉じ込めることしかできなかったのだ!」
ふぅむ、村長さんとも知り合いだったとは……。
エルフの女の人たちは誰だか分からないけど。
「……死ね、死ね、死ね」
ちなみにカルラはさきほどから一心不乱に攻撃を加えている。
相手の話など聞く耳を持たないみたいだ。
無表情で怒っているのは、ちょっと怖い。
しかし、それでも攻撃は通らない。
「……死塵凍結波」
カルラは頭上に巨大な吹雪の渦巻きを発生させる。
あわわわ、あんなの出されたら、こっちまで氷漬けにされちゃうよ!?
「カルラ、待って! 私に行かせて」
「……ユオしゃま」
寸前のところでカルラを止める私。
攻守交代というわけなのである。
「喰らえぇええええっ!!!」
カルラの攻撃が止んだためか、奴は攻撃に転じてくる。
ずべん、ずべんと変な音をたてて、口から黒いものを吐き出してきた。
その攻撃はやつの毒がたくさんはいった塊なのだろう。
「あんたねぇ、人にそんなもん、当てちゃダメでしょ!」
頭に来た私はゆっくりと奴に進んでいく。
私の体に黒いものが当たっては弾ける
しかし、じゅわっ、じゅわっとすぐさま蒸発するだけだ。
熱鎧さえ出していれば、こんなの怖くない。
油断さえしてなければ、怖くなんかない。
「な、な、なんだ、貴様ぁぁあああああ!!!?」
攻撃が効かないからか、大蛇は怯えたような声を出す。
しかし、すぐに攻撃に転じるべきだと考えたらしい。
「死ねぇっ!!!」
奴が叫ぶと、天井がどどんっと落ちてくる。
ずがぁあんと大きな音と衝撃。
あたりには砂煙が舞う。
普通なら、ぺしゃんこに潰されて終わりなんだろう。
「ぐはははは! これぞ我のもう一つの力! 七彩晶を操り、どんな形状にでもできるのだ! あっけないな人間!」
化け物の品のない笑い声が響く。
どうやら私を罠にはめたとでも思っているらしい。
そりゃそうよね、いきなり天井が塊になって落ちてくるんだもの。
「悪いけど、あんたの思惑通りにはいかないわよ」
とはいえ、私は無事だった。
私の発動していた熱鎧が落ちてきた岩を蒸発させたからだ。
私の触れた部分が熱によって、くりぬかれているのが、ちょっと面白い。
「な、な、なんだ、貴様はぁあああ!? どうして無事でいられるのだ!?」
自信満々から一転、驚きの声をあげる大蛇。
ふぅむ、こいつ、七彩晶を操る力を持っているのか。
案外、貴重な力を持ってるっぽい。
例えば、七彩晶を加工してキラキラのアクセサリーを作ったりできるってことだよね。
他にも温泉リゾートの内装にも使えるかもしれない。
「だが、我の操る七彩魔法防壁の前には無力ぅうううう! 貴様らなど近づくことさえできないのだぁああああ!」
攻撃が通じないとわかっても、やつは自信満々だった。
なるほど、確かにカルラの氷柱さえ防いでしまう鉄壁の守りだ。
それは私の目の前で、薄い光の壁となって現れていた。
完全に透明ってわけじゃなくて、少しだけ色がついているようだ。
向こう側がふよふよと少しだけ揺れて見えるのが面白い。
とはいえ、こんなところで立ち止まってなんかいられない。
「ふぅん」
私はその壁に手を伸ばす。
指先に当たる固い感覚。
確かに壁って感じだ、どんな原理か分からないけど。
「ぎゃははは! 貴様などに破ることができるものかぁああ!! 貴様からは何の魔力も感じられないぞ!! 聖剣でもなければ、この防壁を破ることはできぬぅうう!」
蛇はくねくねと首を動かして挑発する。
もちろん、聖剣なんて私は持ってないし、どこにあるのかも知らない。
しかし、だからと言って、帰るわけには行かない。
今の私はちょっと怒っているのだ。
そりゃあもう、しっかりとごめんなさいと言わせるつもりである。
それに、こいつを外に逃がしちゃったら、きっと災難が起きちゃうよね。
「えい」
掛け声とともに、指先に力を込める。
魔法の壁でもなんでも燃やすことができる、そんな途方もない熱をイメージする。
刹那、指先が青白く輝き始める。
ふふ、いい感じ。
ずぶ…………
思った通り、私の指先は蛇の作り出した魔法の壁にめり込んでいく。
少しだけ抵抗はあるけど、ぐにゅうって進む。
うふふ、なんだか面白い。
「な、な、な、なんだ貴様は!? どうして私の鉄壁の守りが!?? 聖剣もないのに、どうして素手で!?」
大蛇は私が素手で壁を破壊したことに驚いている様子だ。
ふふふ、
「くそぉおおおお! 死ねぇええええ!!」
魔法防壁を抜けると、あいつの蛇の頭の一つが大口をあけて、こちらに迫ってくる。
丸のみにされてもおかしくないぐらい大きな口だ。
私は普通の女の子だから、悲鳴をあげるべきところだろう。
でも、この期に及んで反撃してくる、この悪い精霊には頭に来ているのだ。
ちょっとは反省してもらわないと。
「えいやっ!!」
私は蛇の口に向かって、かっこよく手を広げて腕を伸ばす。
そして、高熱の炎の剣を出現させるのだ。
……口から。
ええええ、分かってはいたけど、ここは手のひらから出るべきじゃないの!?
ごぉおおおおおおおおおっ
もんのすごい出力の青白い炎。
この間、魔族と戦った時に使った技の至近距離版とも言える。
それにしても、なぜ口から!?
まさか口から出すのが癖になってるとか!?
ぶしゅん………
次の瞬間、奴の大きな口は変な音を立てて消え去った。跡形もなく。
「なぁあああああっ!? 我の首がぁああああ!!???」
1秒ぐらいの空白の後、奴は大きな叫び声をあげる。
なるほど、あの首は毒を発生させる首だったらしい。
「ふふふ、噛みつくっていうのは、こういうふうにやるのよ?」
正直、口から出すなんて品のない技をだしたくはなかった。
しかし、出ちゃったからにはかっこつけるしかないよね。
さぁて、悪い精霊にはしっかり謝ってもらいましょうか。
【魔女様の発揮した能力】
熱指:魔女様が思いっきり熱をこめた場合の指先である。岩や金属といったものから、魔法陣、魔法障壁、はてには異次元空間の壁さえも切り裂く、まさに破壊の指。
熱剣(初級):近くの相手に膨大な熱を喰らわせる技。問答無用で対象を燃やす。初級であるがゆえに、口からしか出せない。高潔な魔女様にしてはちょっと品のない技であるが、スカッとする。即死技。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「カルラさん、怖い……… (知ってた)」
「罪の聖霊さん、逃げた方がいいよ……」
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