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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第12章 魔女様の温泉ダンジョン大攻略! ドレスの王位継承権をめぐって、ダンジョンで素材集めにいそしみます!
225/352

225.魔女様、『温泉ハグ』に目覚めてカルラを堕とすも、生まれて初めてまともに攻撃を喰らってしまう

「……凍って」


 突如、怒り出したカルラは吹雪を発生させる。


 それも猛烈な勢いなのだ。

 この間のデスマウンテンの幽霊もすごかったけど、それ以上の冷たさ。

 

 周りの空気がキラキラと輝くぐらい凍り付いている。

 足元が凍り付き始め、壁が氷で覆われ始めている。


 いくら温泉の水温が高いとはいえ、凍り付くのは時間の問題のようだ。

 早い所、対処しないとすべてが氷の中に閉ざされてしまう。



「カルラ! やめろっ! みんなを氷漬けにする気!?」


「……うるさい」


 あちらの上司のイリーナがカルラに攻撃停止を伝えるも、言うことを聞くつもりはないようだ。

 感情的になってしまった彼女はイリーナでも手がつけられないのかもしれない。


 もはや暴走状態といってもいいのかもしれない。



「凍らせるもんですかっ!」


 しかし、負けるわけにはいかない。

 温泉を氷漬けにされたらかなわないし、そもそも寒いのは嫌いなのだ。


 私はじりじりと熱の出力を上げていく。


 この熱の加減が難しいのだ。

 ここが平原で相手がモンスターなら、この間みたいに口から熱の光を吐くこともできるだろう。

 しかし、ダンジョンと人間を蒸発させてしまうわけにはいかないのだ。



「……大嫌い」


 カルラの目が冷たく光っている。


 彼女の攻撃は明らかな殺意の現れなのかもしれない。

 それでも、私は彼女を傷つけようとは思わない。

 素材戦での衝突が仕方のないものとされていても、私は率先して誰かを傷つけたくない。


 おそらく、彼女と私の間には大きな誤解が生まれているのだ。

 男装がばれたことで驚かれはすれども、怒られることなんてないはずだから。


 私は彼女の体を包み込むように熱を伝えていく。

 時折、跳ね返され、押し戻されるけれど、じわじわと少しずつ。


「泣いてるの?」


 吹雪の中、カルラの顔を見つめると、涙を流していることがわかる。

 戦いの中で何かを思い出し、悲しさが溢れてきたのだろうか。


 でも、どうして?

 


「……私はいつだって一人なのに」


 カルラはそうつぶやくと、さらにおびただしい冷気を発生させる。

 彼女の心を反映させたような、全てが凍りつく冷気だった。

 魔法の詠唱も何もなく、ただただ大量に注ぎ込まれる圧倒的な冷気。

 

 命の灯を消すのには十分すぎる量だろう。



「イリーナ、一時休戦だ! 避難するぞ!」


「わかってるわよ! カルラ、待ってるからね!」


 ドレスたちはあまりの冷気にいなくなったようだ。

 イリーナは最後までカルラのことを心配していて、きっと、根はいい人なんだと思う。


「あっしの熱でなんとかするでやんすぅううう」


 燃え吉の声も響いてくる。

 すっごく寒いだろうけど、燃え吉の炎があれば少しは暖がとれるだろうか。



「カルラ、話を聞いて」


「…………うるさい」


 私の問いかけに彼女は応えない。


 私には彼女の心が揺れている理由は分からない。

 自分の持っている力の至らなさに歯がゆい感じがする。


 もし私がリリだったなら、相手をもっと優しく癒すことができるのに。

 私は力押しすることしかできないのだろうか。


 でも、ないものねだりしてても始まらないよね。

 自分にできることをやってみなくちゃ。


 私は目を閉じて、彼女のどこから冷気が飛んでくるのかを感じる。

 まるで彼女の心の内側を探るように。


 冷気を通じて感じるのは彼女の悲しさ。

 彼女がこの世界に対して感じている悲しさ。

 人々に対する諦め。


 いろんな負の感情がその攻撃に乗せられているのが分かる。


 なんでこんなことが分かるんだろう。

 それとも、カルラだからできるのかな。


 そして、私の脳裏でつながるのは、一人、という言葉だ。

 

 彼女はずっと孤独感を感じていたんだ。

 たぶん、その能力が原因で人を避けてきたんだ。



「カルラ、あなた、ものを冷やす力を持っているのね?」


「…………」


 相変わらず、私の言葉に彼女は応じることはない。

 彼女は両腕を広げて、猛吹雪を発生させるだけだ。

 頬には涙のあとが光っていた。


 ごぉおおおおおおおおおっ


 辺りはもはや一面が氷に包まれている。

 冬の朝どころの騒ぎではない寒さに、吐く息さえも凍り付く。


 彼女の能力は尋常じゃない。

 ひょっとしたら、、彼女は変な能力をもらったがゆえに悩んでいるのかもしれない。

 ひょっとしたら、彼女自身が自分の能力を恐ろしく思っているのかもしれない。


 私だってそうだ。


 もしも、自分一人なら、この力がいつ暴走するかと恐れていただろう。

 不器用だから、誰かを傷つけてしまったかもしれないし、山を破壊したりしたかもしれない。


 それでも、ララをはじめとして皆が私を認めてくれたから、ここに立っていられるのだ。



 だったら、私にできることは一つしかない。

 

 目の前で泣いている、あの子の心の氷を溶かすこと。

 

 そう、私自身がぽかぽかの温泉になっちゃえばいいのだ。


 彼女との力比べなんて興味ないわけで。




「……来ないで」


 私はゆっくりとカルラの方向に歩き出す。

 猛吹雪の中、視界はほとんど真っ白。 

 足元はすぐに凍りつくけれど、それを溶かしてまた進む。


 進むにつれて、体がポカポカしてくる。

 ふふ、こういうのも面白いかもしれない。


「カルラ、待ってて」


 そして、私は彼女のところに辿り着く。

 彼女は必死に吹雪を出すも、もはや私には届かなった。


 なぜかって?

 私の心には火がともってしまったから。

 彼女を一人にしてはおけないって。


「大丈夫、あなたは一人じゃないよ」


 そして、私は彼女に抱き着く。

 両腕を広げて、がばっと。

 足元が凍り付いていて、バランスを崩したために、むりやり抱き着く形になったんだけどね。


「………ひっ」


 カルラの口から小さな声がこぼれおちる。

 その声が案外にかわいらしかった。


「落ち着いて」


 今だに冷気を発生させるカルラの体は氷のように冷たかった。

 骨の髄まで冷え込むような、とてつもない冷気が体中を流れていく。


 うぅうう、寒い。

 凍えるようだよ。


 それでも私は彼女を離さない。

 離してやらないのだ。


 だって、私の腕の中の彼女は小さく震えていたから。

 


「………う、うぅううう」


 次第に、かすかながら彼女の嗚咽する声が聞こえてくる。

 ふるふると彼女の水色の髪の毛が揺れる。


 まるで小さな子供みたいに。

 大丈夫、怖くないよ。


 よしよしと背中をさすってあげる。

 さらさらの髪の毛もなでてあげる。


 次第に彼女の冷気が収まってくるのを感じる。

 


「……あったかい」


 そして、カルラはそう言ったのだ。


 その言葉はとても嬉しいものだった。

 誤解が溶けて、分かり合えた気分というか。

 

 まぁ、私の腕の中なんてたいしたことはないんだけどね。

 本物の温泉に入っちゃえば、その数倍あったかいのだ。

 ふふ、カルラにも温泉の良さを教えてあげなければ。




「……!?」


 しかし、次の瞬間だった。

 私の前方に何かの気配を感じる。


 それはどす黒い意思を持っていて、カルラの背中へと伸びていた。


「危ないっ!」


 私はカルラをどんっと突き飛ばす。

 わけわからない攻撃に彼女をさらすわけにはいかなかったから。


「うっ……!?」


 しかし、そのどす黒い何かは私の肩に命中する。

 次の瞬間、私はひどい痛みにのけぞるのだった。




◇ ???????



 ゆっくりと七彩晶の中を上がっていくと、そこには人間どもが抱き合っていた。

 何をしているかはわからない。


 しかし、やるべきことは決まっている。

 血祭りだ。

 

 人間どもの苦しみこそが、我の喜び。

 我はゆっくりと近づき、最大の攻撃を放出するのだった。



【魔女様の発揮した能力】

温泉ハグ:温泉とちょうど同じぐらいの温度になって抱き着く癒しのスキル。人によってはとてつもない回復を見せる。魔女様の持っている人への愛情と、温泉への愛情の二つが掛け算されることによって生まれた。余談であるが、温度を上げるとマグマハグになり、即死技になる。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「心に温泉がある限り、温泉は死なない……」


「魔女様がついに攻撃を喰らった……!?」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークやいいねもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] あら?魔女様ってば初のピンチ??
[一言] じやあ、復活したヤツにはマグマハグで…(^^ゞ
[一言] 癒やしだ愛情だの言ってて最後は即死技かよw
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