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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第12章 魔女様の温泉ダンジョン大攻略! ドレスの王位継承権をめぐって、ダンジョンで素材集めにいそしみます!
222/352

222.魔女様、ついに待望の光り輝く温泉に至る。しかし、あいつが来る、きっと来る、もう来てる

「そういえば、リリたち、そろそろ着いた頃でしょ。大丈夫かな?」


「そう思いますぜ。それに、敵が攻めてくるなんて、心配のしすぎの可能性もありますし」


「だよね。いざという時は、ハンナとクレイモアもいるし、シュガーショックも守ってくれるから心配いらないか」


「えぇ。それに、ドワーフの王都は昔から防御が固いことで有名ですし。多少の敵が来ても、今頃、お菓子でも食ってますぜ、きっと」


「そうだよね!」


 先程の大きな縦穴をなんとか降りると、そのさきには通路のようなものが広がっていた。

 明らかに人為的なものに見えるけれど、これがダンジョンっていうものらしい。


 私達は冒頭のようにとりとめのないことを話しながら、ぐんぐん進むのだった。

 まぁ、怖さを紛らわすためだよね。



「ふぅむ、なんだか妙なところでやんすねぇ。歩きづらいでやんす」


 燃え吉は私にお仕置きを喰らったあと、間に合わせの体で再スタートすることになった。

 さすがに炎の姿だと目立っちゃうというわけらしいが、そのデザインがものすごいのだ。


 一抱えほどの大きめの頭部から手足が直接生えているというもの。


 そう、3歳児が描く、あのデザインそのままなのだ。

 顔部分はやけに精巧にできているので、ちょっと怖い。

 

 しかも、前頭部には、にょきっと2本の触角のようなものがつきだしているのだ。

 ドレスいわく、触手の名残だというけど、いらない、そんなもの。


「さいこぉっっすよ! ドレスの旦那!」


「そうだろ! あっしは彫刻も得意なんだぜ!」

 

 喜ぶ燃え吉に意気揚々と笑うドレス。

 まさに悪夢のようなデザインなのだが、二人は気に入っているらしい。


 

「足元に気をつけろよ、ここらへん、滑りやすいぞ」


 ドレスは面倒見の良いお姉さんのように、燃え吉をガイドする。

 もえ吉の足はひょろひょろ気味だし、たしかに歩くのは難しそうだ。

 っていうか、もっと太く作ればよかったのでは。


「うぉ、あぶなっ、やばいでやんすぅうううううう!?」


 燃え吉の歩みに注意しながら、進んでいったのだが思わぬ事態が発生。

 途中で緩い下り坂になったあたりで、燃え吉が転倒。


 奴は悲鳴をあげながら、ころころと坂を下り落ちていったのだ。

 やはりあのデザインだと転がりやすいらしい。

 ほーら、言わんこっちゃない!


「燃え吉ぃいいい!?」


「追いかけよう!」


 なかなか面白い絵面ではあったけれど、見失うわけにはいかない。

 私たちは燃え吉を追いかけて、下り坂を駆け下りるのだった。





「ひぃひぃ、なんとか無事でやんす……」


 なんとか下り坂を降りていくと、燃え吉はバテたような姿勢で寝転んでいた。

 無事で何よりである。

 

 辺りを見ると岩の破片が転がっている。

 どうやら燃え吉は岩を粉々にしながら転がっていったらしい。


 私はとりあえず燃え吉の面倒をみることにした。

 ふぅむ、どういう作りになってるんだろうか。



「おぉーい、こっちに来てくれよ!」


 あたりを散策していたドレスが大きな声をあげる。

 私は燃え吉を揺り起こすと、その場所に向かうのだった。


「ええぇえええええ!? な、なにこれっ!?」


 ドレスのいる場所では驚愕の光景が広がっていた。

 足元が光っているのだ。七色に。


「これが七彩晶ですわ! クレイモアたちの言ってたことは本当だったみたいだぜ! 高級素材ですぜっ!」


 ドレスは興奮気味な表情で、鼻息荒く説明する。

 それもそのはず、足元の七彩晶という鉱物はとても不思議な反応をするのだ。

 その上に重量をかけるだけで、ふわんっと波紋が広がるのである。


 その色はけばけばしいものではなくて、とても淡いものだった。

 まるで心のが透き通っていくような、そんな色である。


 なにこれ、すっごいきれい。

 私たちはしばしその不思議な鉱物の反応で遊ぶのだった。

 こら、燃え吉、転がって遊ぶんじゃないよ。



「よぉっしゃ、七彩晶がこんなにあるなら、七彩魔晶もあるかもしれねぇぞ! ヒャッハー! 狩りの時間だぜぇ!」


 ドレスはやたらと興奮して、辺りを駆け巡り始める。

 ちょっとよだれを垂らして、目はギラギラとやばい感じだ。


 でも、分かるよ、その気持ち。

 自分の好きなものを探索するときほど、興奮するものはないよね。



「燃え吉、怪しい人が来ないか見張っててね!」


 と、いうわけで、私も探索開始なのである。

 探すべくはもちろん、クレイモアたちの言っていた七色の温泉。

 村長さんが足湯をした温泉がどこかにあるはずなのだ。


  

 私は心を落ち着かせて、目を閉じる。

 おそらくきっと、私のお湯があるはずだ。

 光り輝く、七色のお湯が。



「こっちだ……」


 私は熱センサーをたよりにどんどん進む。

 見た感じモンスターもいないし、虫もいないっぽい。

 もちろん、ドレス以外の人間の体温も感じない。


 ふふふ、待っててね、私の温泉ちゃん!



「あったぁあああ!」


 そして、私はお湯が溜まっている場所を発見した!

 お湯がちゃぱちゃぱ流れているし、温泉に違いないだろう。

 

 一言で言って、きれいである。

 

 クレイモアたちの言うとおり、床が七色に光っているのである。

 幻想的な温泉、ふひひひ、やばい、これ。


「ドレスー! 温泉が見つかったよぉ!」


 ひとまずドレスに声をかけたら、いざお湯を確かめさせていただくことにする。

 危険な成分が入ってたら嫌だもんね。


「ほほう、これはこれは……」


 ドキドキしながらお湯を手に取ってみると、とろっとした感覚。

 香りは弱いけど、ちょっと金属っぽい匂いがする。

 指先にまとわりつく感じもまた心地よい。

 ふぅむ、温度も熱めで、いい感じだ。


 よぉし、まずは挨拶代わりに足湯でもさせていただこうかな。くふふふ。


 私は靴を脱いで、ズボンの裾を折り曲げて、いざ足を入れてみる。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ、最高であります! ひひゃああ」


 快感のあまり変な声が出る。

 

 足元からじわじわと感じるお湯の感覚。

 ちょっと熱めのお湯で足湯に最適だ。


 しかも、きらきらときらめく床と相まって幻想的な雰囲気だ。

 いいなぁ、これ。

 地上に持って帰りたいなぁ。


 いや、まずは体全体で確かめてからだよね。

 何をって相性を。


 はやる気持ちを抑えきれず、ジャケットを脱ぐ私なのである。

 そう、お湯に浸かっちゃうのだ、誰もいないんだし。


「うぐっ!?」


 しかし、ここで何だか変な感覚が私に突き刺さる。

 なんていうか、冷たいものが突き刺さるというか、悪寒というか、嫌な気分がどうしてもするのだ。


「だ、誰……!?」


 あたりを見回しても誰もいない。

 もちろん、熱探知を行っても誰もいない。

 一抹の不安を覚えた私は、とりあえず裸になるのをやめることにした。



「おぉっ! すげぇなぁ! あっしも足湯させてもらおうかな!」


 そうこうするうちにドレスも到着。

 彼女もぽぽいとブーツを脱いで、一緒に足湯に入ってくる。


「おぉおおお、いいじゃん、これ! 最高だぜっ!」


「あはは! 足の痛みもすっきりだよ!」


 二人で笑い合っていると、さっきまでのきな臭い陰謀騒ぎが嘘のようだ。


 一日がかりの競争とはいえ、やっぱり休憩は必要だよね。

 うふふ、わたし、タオルも持ってきてるし、やっぱり温泉に入っちゃおうかなぁ!?


 ドレスに提案しようとした矢先のことだ。

 私たちは唐突に声をかけられる。



「……ドレス、あんた、何やってんの!?」


 振り返ると、そこにはあのイリーナという女の子。

 後ろには彼女のパーティが数名。

 もちろん、武器を携えて。


「ひっ!? イリーナ!?」


 完全な不意打ちとなるわけで、当然、私たちは驚いた声を出す。

 あわわわわ。





◇ カルラさん、逆恨みする



「イリーナ、あれ……」


 ダンジョンに潜り始めて数時間。

 私たちは順調に素材を確保した。


 他の参加者と戦闘になるかと思ったけど、拍子抜けだった。

 まぁ、私はS級冒険者だし、挑んでくる相手がいるとは思えないけど。



 その後、私たちは偶然、ドレスたちを発見する。

 ドレスは魔物のようなものを引き連れて歩いていく。

 なにあれ? 気持ち悪いけど、ちょっとかわいい。


「よし、あいつらをつけるわよ。手ぶらなのが怪しいわ」


 イリーナはドレスの後を追いかけるという。

 確かに私たちは十分に貴重な素材を手に入れていた。

 この状態で細かい素材を採取するのは得策ではないだろう。



「すごい……!」


 気配を殺しながら降りていくと、そこには未知の世界が広がっていた。


 七色に光る地面はイリーナいわく、七彩晶という貴重な素材らしい。

 しかし、そんなものよりも遥かに光り輝く人がいる。


 私のユア様だ。

 今日も相変わらず、しゅっとした着こなしで、私の心を鷲掴みにしてくれる。


「見てくる……」


 私は率先して、旦那様、じゃなくてユア様をおいかけることにした。

 あぁ、ちらっとしか見えなかったけど、今日も今日で美少年!!

 私は彼を陰から見つめることにした。じっくりと。


 私は気配を隠すのが上手い。

 自分の体温をぎりぎりまで下げて、あたりのものと同化できるからだ。

 

 うふふふ、ユア様、私が今日、あなたをドレスの魔の手から解放してあげますからね!


 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ、最高であります! ひひゃああ」


 ユア様はあたりを散策すると、水たまりのようなものを発見。

 彼は何かをしたのちに、足を水たまりにつけるではないか。


 そして、わけのわからない声をあげる。

 何をしてるのかさっぱりわからない。

 でも、謎が多いって素敵。

 ミステリアスな男性ほど、私の心をくすぐるものはない。


 それにである。


 何はともあれ、美少年しゃまの生脚いただきましたぁあああっ!

 ユア様の御脚は、それはそれはきれいな脚で、まるで女の子みたいにつるつるだった。

 はぁはぁ、いいなぁ、かわいいなぁ。

 あの脚なら蹴られてもいい。


 彼はその後、周りを確認するとジャケットを脱ぎ始めて……。


 えっ。


 嘘でしょ!?


 こんなところで水浴びしちゃうわけ!?

 いくら男の子でもワイルドすぎる。

 私、心の準備ができてないよっ!?


 結婚前なのに、いいのこんなこと!?

 いや、結婚するからいいとしても、ものには前後が!?


 ……とはいえ、彼を見張るのは私の責務である。


 そうだ、悪いことをしているわけではないのだ。

 はぁはぁ、しょうがない、これは事故だ。

 鼻血が出そうだけど、凍らせとけばいいや。ひひひ。



「おぉっ! すげぇなぁ! あっしも足湯をさせてもらおうかな!」


 しかし、すっごくいいところで、あのドワーフのドレスが現れる。

 彼女は馴れ馴れしくも私の旦那様にボディタッチ。

 

 さらには一緒に水たまりに足を入れる。

 しかも二人して、キャッキャウフフやってくれるのだ。


 ぞわぞわっと背筋が凍り、きぃいいんと耳鳴りがしてくる。

 な、なによ、あの女!?

 いくら私のユア様が天使だからって、親しくしすぎでしょうが。この泥棒猫!

 

 心の中でドレスへの敵意がどんどん増していくのがわかる。

 私ってクールなはずなのに、ユア様に関してだけはそうも行かないらしい。



「……いるわね?」


「えぇ……」


 やがてイリーナたちもやってくる。

 彼女は武器を携えたまま、ぶっきらぼうな口調でドレスに声をかける。


「……ドレス、あんた、何やってんの!?」


「ひっ!? イリーナ!?」


 ユア様とドレスは驚いた声をあげる。


 私たちがいるとは想像もしていなかったようだ。

 ふふふ、そんな顔もかわいいいいい!


 待っていてくださいね、ユア様!

 私があなたをドレスの重圧から解放して差し上げますから!

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「頭足人、あっしは大好きさ……」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークやいいねもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 天元突破しそうなデザインだなぁwww
[良い点] 虹色の温泉か~...是非入ってみたいね!(入った後身体テカってそう?) [気になる点] 頭足人って何?と思ってggたら成る程って思ったよ...自分の小さい時どんな絵を描いてたか覚えてないけ…
[一言] 魔女様?熱感知の逆も出来る?のでは? 熱感知でカルラを感知出来なくても一定の範囲に熱を放ち熱を感じない物体?空間?が有ればそこに何かがあるー! 練習すればサーモグラフィー的な低い温度は青で普…
感想一覧
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