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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第12章 魔女様の温泉ダンジョン大攻略! ドレスの王位継承権をめぐって、ダンジョンで素材集めにいそしみます!
221/352

221.リリアナさん、無謀な村人AとBのおかげで無事に戦いに巻き込まれてしまう

「あわわわわ」


 遠路はるばる旅をして、ついに今日、ドワーフ王国の王都が見えてきました。

 ほっと一安心するところのはずですが、私の口からは変な音が漏れ出てきます。


「やっばいやん! あれ全部モンスターやで!?」


 クエイクさんは城の方を指差して驚きの声をあげます。


 それもそのはず、ドワーフの王都はモンスターに包囲されつつあるのでした。

 それも10匹や20匹ではありません。

 たぶん、きっと千を超えてると思います。


「うっそぉおおお!?」


 恐怖で私の足元はすくみ、軽くめまいを覚えます。

 サジタリアスでの戦いで少しはモンスターの群れに慣れたかと思いましたけど、そんなことはありませんでした。


 それにしても、ドレスさんたちの言っていたことが本当になるなんて……。

 彼女たちの洞察の深さにも感服する思いがしました。



「ひぃいいいいい、お役ごめんやぁああ! うちはもう帰るぅううう!」


 クエイクさんはそう叫ぶと、シュガーショックの中に潜り込んでしまいました。

 確かに身を隠せると言えば、もうここしかありません。

 もふもふの毛がとても気持ちよさそうです。



「にゃはははははは! いいよねっ!? もう、やっちゃってもいいのだよね?」


「待ってください! 一番槍は私って決まってるんです!」


 怯える私達とは異なり、クレイモアとハンナさんは戦う気でいっぱいです。

 旅の疲れをものともしないとか、そういう次元ではありません。

 むしろ、モンスターの群れを前にして元気になっているぐらいです。


 彼女たちは武器を取り出し、腕をぶんぶんっと振ります。

 鎧は軽装のもので、動きやすさ重視といった形です。


 私は回復魔法しかできませんし、もちろん、戦いたくありません。

 それでも、ドワーフの城の皆さんが大変な状況にいるのはわかります。

 私の回復魔法で、できるだけ力になってあげたいっていう気持ちもあります。


 だけど、それでも怖いんです。

 魔族と対峙したとき、どうしてあんなに力が湧いてきたのかわかりません。


 誰かを癒やしたいって心の底から思えたときに、私の力は開花するのでしょうか。

 私は腕組みをして、どうすればいいのか考えるのでした。



「リリ様、これを見てほしいのだ! ララさんに作ってもらったのだよ!」


 そういうとクレイモアはバッグから一枚の大きな布を取り出しました。

 それはユオ様の大好きな「♨」のマークの書かれた旗でした。

 この記号の意味は分かりませんが、温泉リゾートのてっぺんにも掲げてあるものです。


 彼女いわく、自分の目印として作ってもらったとのこと。



「ふふふ、私だって旗を持ってきていますよ!」


 今度はハンナさんも旗を取り出して見せてくれます。 

 そこには「ゆ」という謎の記号が描かれていました。

 これまた、ユオ様の大好きな記号で、温泉の入口の布にも描かれています。


「本当は『魔』が良かったんですけど、ララさんにはこっちを勧められました!」


 ニコニコっと笑うハンナさん。

 きれいな金色の髪の毛も、愛くるしい瞳も、まさしくかわいさの極地です。

 ちょっとそのセンスは理解し難い部分がありますけど。


 しかし、クレイモアとハンナさんはこれを片手で担いで戦うつもりなんでしょうか。

 ちょっと無茶が過ぎるというか、邪魔じゃないんでしょうか。

 


「それじゃあ、一番、たくさんやっつけたのが勝ちなのだ!」


「ほほぅ、面白いことを言いますね。言っておきますけど、私、新技を開発したんですよ!」


「あたしだって、すごいのがあるのだ! しゅばっとジャンプして、どかんとやるのだ」


 私の動揺などなんのその。

 二人は何やら不穏なことを言って盛り上がっています。


 あれだけのモンスターを前になんの策略もなく切り込んでいくというではありませんか。

 ひぃいいい、正気なんでしょうか。

 まさか私も一緒だなんていいだしませんよね?


 

「リリ様たちは大丈夫なのだ! ヨーイドンを言ってくれるだけでいいのだよ」


 クレイモアのその言葉に私は心底安堵します。

 張り詰めていたものが消えて、ちょっとだけ涙が出そうです。


「よかったぁああ、死ぬかと思ったわぁ」


 クエイクさんも心の底から安心したという表情です。


「ほな、うちらはここらへんでシュガーショックとのんびりさせてもらいますわ」


 彼女はシュガーショックの顎の下をくいくいと撫でてあげます。

 シュガーショックは目をとろんとさせて、眠そうにあくびをするのでした。

 

「それじゃ、リリ様も安全のためにシュガーに乗るのだよ」


 クレイモアは私をシュガーショックの上に乗せてくれます。

 確かに地面にいたのでは危ないですよね。


 あと私達がやるべきことは、号令をかけて、のんびり隠れているだけです。

 頃合いを見てドワーフ王国の城に向かいましょう。

 はぁあ、本当によかったぁ。



「ほな、うちが号令かけたるでぇ! よおぉおい、どぉおん!」


 クエイクさんはノリノリで号令をかけます。

 彼女の大きくて陽気な声はメテオさんそっくりで、かわいいなぁって思うのでした。



「よぉっしゃ、スタートなのだ! って、ハンナ、ずるいのだ! フライングなのだぞっ!?」


「甘いですね! ヨーイドンでしか走れぬものは光の戦士とは言えませんよっ!」


 号令のかかった二人は嬉しそうに敵方に突入していくのでした。

 しかも、ふたりともあろうことか旗を使って敵をなぎ倒します。


 ……旗の意味があんまりわかっていないのかもしれません。



「モンスターどもぉおおお! 史上最強の村人Aがやっつけてやるのだぁああ!」

 

 クレイモアは耳鳴りがするほど大きな声で叫ぶのでした。

 

「こっちに来なさぁあああい! 魔女様の村人Bが相手になりますよぉおおおお!」


 さらにはハンナさんも絶叫します。


 村人AとかBとか言ったところで、モンスターに理解できるのでしょうか?


 グルルルルルルルルル……!



 なんて思っていたのですが、その予想は悪い方に外れました。

 二人が大声を上げたせいで、モンスターの注意が私達の方にも向いてしまったんです。

 モンスターの一群はこちらにむかって唸り声を上げはじめます。


 口からはダラダラとよだれを垂らし、見るからに恐ろしげな様子。

 ひぃいいいいい。



「うっそぉ、ちょっと待ちぃや。うちらは留守番みたいなもんやでぇ……!? あっちいけって」


 これにはクエイクさんも呆然とした表情。

 しかし、シュガーショックはさきほど「のんびりしてればいい」と聞いていたためか、起き上がる素振りがありません。

 そう言えば、ユオ様は言っていました。

 シュガーショックは一度眠り始めると、なかなか起きないと。


 

「シュガーショックさん、起きてくださぁい!」


「起きっろっちゅうねん! ヨーイドンやで!」


 私達は必死でシュガーショックを起こそうとします。

 耳をぴくぴくさせるぐらいで反応がなかったのですが、クエイクさんが放った「ヨーイドン」の言葉に即座に反応。


 わぁおおおおおおおん!


 シュガーショックは遠吠えをすると、だだだっとものすごいスピードで駆け出しました。

 

 どこにって?


 前方に、つまり、すなわち、モンスターの方向にです!



「にぎゃあああああ!?」


「ひきゃあああああ!?」


 私達はモンスターの群れの中に突撃することになったのです。

 本当は逃げたかったのに。



「ヨーイドンって戦えとかそういう意味とちゃうでぇえええ!?」


「あきゃあああああ!?」


 襲い来るモンスターも恐ろしいのですが、シュガーショックの速度こそが一番恐ろしい。

 私達は振り落とされないように、ただただ背中に捕まります。



 ぐごあぁああああああ!?


 ふぐぎぃいいいいいい!?

  

 四方八方に飛び散っていくモンスターの死骸。

 地獄のような光景ですが、意識を失ったら最後、モンスターの群れの中に振り落とされてしまいます。


 私たちは絶叫しながら、シュガーショックに掴まるのでした。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「光の戦士……!?」


「リリ、いつになったら覚醒してくれんねん……!?」


と思ったら


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― 新着の感想 ―
[一言] 光の戦士と言うと自分はシュヴァルツシルトが出てくんだけど、もう知ってる人いないだろうな。
[良い点] ヨーイドン!=戦闘開始! [気になる点] 光の戦士...誰が?村人Bさんや光の戦士はヒャッハーしながらジェノサイドしたりしない...君が魔の戦士なら納得。そして君は言うなればバーサーカーだ…
[一言] 普通、この手の大規模攻撃は間隔が空いてから起こるはずなのにこんな短期間で2回目か……魔女様の呪いか?
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