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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第12章 魔女様の温泉ダンジョン大攻略! ドレスの王位継承権をめぐって、ダンジョンで素材集めにいそしみます!
214/352

214.ドレス、国を出た理由をユオに話し始める。一方、燃え吉は好き放題やってる

「よぉし、もうすぐ新式の兵装が完成だぜ!」


 今から数年前の話。


 あっし、ドレス・ドレスデンはドワーフ王国の王室直属の工房で武器や防具を開発していた。


 それも普通の剣や鎧じゃない。

 最新の魔力理論に基づいた武器や防具の開発だ。


 あっしらドワーフは体は頑丈にできているが、基本は生産職だ。

 そんなに戦闘に向いているわけでもないし、魔法も得意じゃない。


 そこであっしが目を付けたのが、魔石の力を使った武器と防具の開発だった。

 魔石のエネルギーを活用して、ひと振りで岩を割る武器や、剣で切られても傷一つつかない鎧を作りたかったんだ。

 

 その目的は、家族を、仲間を守るため。


 一昔前、聖王国ができたどさくさで、ドワーフの国は大混乱に陥った。

 そのおかげでたくさんの人が傷ついたし、実際に命を落とした人も多かった。


 それに、あっしのオヤジみたいに素材のために危険な旅をして帰らぬ人になることもある。

 冒険者の無謀は自業自得だと笑うこともできる。

 だけど、もし、武器や防具の差で助かるのなら、そっちの方がいいに決まってるだろ?

 誰だって自分の帰りを待っている人がいるんだから。


 世の中を少しでもいい方向にするために、あっしはワクワクしながら仕事に取り組んだんだ。

 あの王様のじじいとは一緒になって開発したりして、楽しい時期だったよ。



「ドレス、すごい発見だよ!」


「おぉっ、すげぇ! さすがだぜ!」


 この仕事のリーダーを務めていたのはあっしだけじゃない。

 ユリウスという天才少年と一緒に仕事をしていた。

 奴はあっしのいとこで、とにかく子供のころから頭の回転が速かった。


 開発の時には、ユリウスが基礎的な研究をして、生産する作業をあっしが担当した。

 二人で手を組めば、何だってつくれる。

 武器も防具も要塞だって、何だって。


 そして、開発したものを通じて世界はもっと平和になる。

 悪い奴やモンスターと戦って命を落とすことはなくなる。


 そう、あっしは信じていたんだ。


 幼かったんだね、本当にバカだったよ。

 この間のレオパルの子分がもっていた、あんな武器を嬉々として作っていたんだから。



 でも、潮目が変わったのは、工房がある研究に手を出してからだった。


 ある日のこと、あっしたちは全く新しい研究に着手したんだ。

 

 それはホムンクルスの開発、簡単に言えば人造の人間を作ること。

 知ってるか知らないけど、それは禁忌中の禁忌。

 どうやら、大昔にそれに挑戦したドワーフがいたらしいけど、精霊の怒りを買って都市ごと燃やされてしまったらしい。


「そんなもんは言い伝えだろ? ようは作れるか、作れないか、だぜ?」


「そうこなくっちゃ!」


 あっしの返事にほほ笑むユリウス。

 あの頃のあっしたちには怖いものなどなかった。

 作れるもんなら作ってみようと着手したんだ。


 

 しかし、研究は難航した。

 人間の体を保持することはとても難しく、人間のように話すことはできなかった。

 お金は尋常じゃなくかかるし、明らかに採算が取れない仕事だった。


「ユリウス、もうこんな研究は止めにしよう。何かが間違ってるぜ!」

 

 それにあっしはだんだん、怖くなってきてね。

 人間が人間を作るだなんて、そんなことしていいんだろうか?

 道に外れたことをしているっていう感覚が日に日に増してきたんだ。 


「何を言ってるんだ。もうすぐで完成するんだよ!? あと少しでこの子はここから出ることができるんだ!」


 一方、ユリウスはものすごく執念を燃やし始めていた。

 徐々に冷めていくあっしと、情熱を保持し続けるユリウス。

 あっしたちの意識は次第に軌道がそれていき、それに伴って衝突することも多くなっていった。


 ユリウスはまるで人が変わっちまったようになってね。

 ホムンクルスに向かって、ぶつぶつと独り言を言うことも増えていった。

 最初は研究熱心だからって思っていたけど、だんだん、空恐ろしくなっていったんだ。


 それでも、ホムンクルスは完成に向かいつつあった。

 魔力液に満たされたガラス管の中に浮かぶ人形は、徐々に人間に似た何かになっていった。

 それがあっしたちの求めたものかは分からなかったけれど。



 そんな時、あっしはとある場面を目撃した。


 ユリウスが実験棟で誰かと話していたんだ。

 それは研究のスポンサーをしている大臣たちだった。


 何かよからぬことが起きている気がしたんで、あっしは物陰からそれを見守ることにした。


「素晴らしいですぞ、ユリウス様! これがあれば無敵の兵隊が作れます!」


「もうこれで我々が傷つくことなく、敵を殲滅できますぞ!」


 大臣の何人かが興奮したような声をあげる。

 これというのは、あっしたちの作ったホムンクルスのことを言ってるんだろう。


 無敵の兵隊、敵を殲滅……、きな臭い言葉ばかりが並ぶ。

 そんなもののためにそれを作っているわけじゃない。

 そんな言葉が喉の奥からこぼれそうになる。


 しかし、見つかるわけにもいかないわけで、あっしは事の成り行きを眺めることにした。

 そもそも、ユリウスが何を言うか、それだけが一番大事だったから。


 あっしは信じていたんだ。

 ユリウスが否定してくれることを。

 この技術は平和のために、みんなの安心のためにあるってことを。



「そうです。これがあれば、僕の最強のホムンクルスがあれば、聖王国を蹂躙できます! 僕の父と母の仇を討つことができるでしょう。これこそが僕たちの研究の集大成ですから」


 ユリウスの口から出てきた、その言葉には驚いたね。


 やつは端っからこの研究はすべて、聖王国との戦争のために開発してきたなんて言うんだもの。


 確かにユリウスの両親が聖王国とのいざこざで命を落としているのは知っていた。

 だけど、普段、ユリウスから聖王国への恨み言を聞くことはなかったし、ユリウス自身、いつも笑顔の気のいい奴だったんだ。

 

 あいつの内側でそんな暗い感情が渦巻いているなんて知らなかった。


 そして、ユリウスが作っている、あのホムンクルスは確かにとってもたちの悪いものだった。

 物理攻撃・魔法攻撃、全てに耐性を持っていて、痛みを感じない。

 しかも、自動回復機能さえついていた。


 あんなものがもしも量産されて戦争になったなら、相手の国はひとたまりもないだろう。

 

 そんなものを作るなんて、あっしはなんて幼稚でバカだったんだろう。


 どうにかしなければならないと焦ったあっしは、真っ先にじじい、王様に相談した。

 あっしには何の後ろ盾もなかったし、頼れるのはじじいしかいなかったからね。

 



 そして、じじいと一緒に説得しようとした日のことだ。


 あのホムンクルスの実験棟で大きな爆発が起きたんだ。

 何が原因なのか、わからない。

 事故だったのか、事件だったのかさえも。


「ドレス!」


 じじいは年寄りの癖にあっしをかばいやがって、爆風の盾になってくれたんだ。

 気づいた時には部屋のほとんどが散乱。


 じじいの片目はなくなり、片足が動かなくなってやがったんだ。

 その場に居合わせたユリウスは腕を一本、なくしてしまった。


 愕然としたよ。


 自分の行ってきたことを悔やんだ。

 あっしがもっと早く気づいていれば、もっと早く研究をやめさせていれば。

 あっしの未熟さがすべてを台無しにしたんだ。


 それなのに、じじいがかばってくれたことで、あっしは無事だった。

 泣くぐらい恥ずかしかった。

 せめて、あっしの足ぐらい吹っ飛んでくれりゃあ良かったんだけど。



「本当に、本当に、すまねぇことをした。あっしは本当に未熟なガキだ。どうかあっしを罰してくれ、牢屋にでもぶち込んでくれよぉ」


 あっしはじじいの意識が戻ると、厳罰にしてくれるように頼みに行った。

 恩人にかばってもらって自分だけ平気な顔をして生きていけるなんてことはできない。

 

「……ドレス、お前はまだ若い。世界を見て、宝を見つけて帰ってこい。なぁに、目ん玉の一個や足の一本ぐらい、昔のドワーフなら戦場で失くしたもんだ、心配するな」


 じじいはそう言うと笑いやがった。

 馬鹿野郎、笑うんじゃないよ、あっしのことを罰してくれよ。

 

 すがりつくあっしの髪をじじいは優しくなでてくれた。

 昔どおりの大きな手のひらだった。


 その後、あっしはじじいに言われた通り、仲間を引き連れて冒険の旅に出ることにしたんだ。

 親父みたいな一流の大工になるため。

 未知の素材に出会うため。

 そして、あっしの魂を震わせる何かに出会うため。



 なんで裏切り者って言われたのかって?


 見ての通り、あっしはすべての研究を途中で投げ出したのさ。

 ルドルフやレオパルみたいな、戦争をしたい奴らにとってはあっしは裏切り者かもしれないな。

 だって国が強くなるチャンスを棒に振ったんだから。


 でも、悔いはなかった。


 だって、あっしはユオ様に出会えたんだから。


 信じられないぐらいに強くて、信じられないぐらいにあっしの心を温めてくれる人に。

 この人のためになら何でも作ってやろう、そう思える人を見つけたんだ。


 だから、じじいから手紙が来た時に自信をもって実家に帰ろうって決めたんだよ。

 ユオ様こそがあっしにとっての一番の発見だし、一番の素材だし、一番の宝物だから。


 そしたら、今回の陰謀騒ぎだもんなぁ。

 本当にユオ様には迷惑をかけてばっかりだよ。面目ない。




「まぁ、そういう感じだったわけだよ。おぉっ、仙寿草があるじゃねぇか! こっちには満月コケがあるぜ!」


「ドレスぅうううう!」


 ドレスは以上のような話をしながら、ぽいぽいぽい素材を集める。

 対する私は涙をふきながら、ぽいぽいぽいと空間袋に素材を投げ込む。


 もぉおおお、こんな時にする話じゃないでしょぉおお!

 もっとしんみりした空気の時に聞きたかったよぉおおお!!


 ちなみにである。


「くはははは、俺っちの頭がぱかりと開く! お前を倒せと轟き叫ぶ!」


 ドレスのお話の間、燃え吉は完全に放置され、モンスター相手に好き放題やっていた。


 しかし、私はもう見なかったことにした。

 あいつの体、あとで帰ったら燃やすからいいもんね、うん。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「作中に『あっし』が出てきすぎて、あっしの一人称もあっしになりそうだ……」


「せっかくドレスがいい話したのに、触手フィンガーのせいですべて台無しに……」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークやいいねもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 移るよね、「あっし」
[一言] うん、そして最後には、ユオ様は赤く燃えている!だな。 いや、まんまやん。いつでもやん。
[一言] 触手フィンガーが用途別出来そうなら熱戦ビーム出せれば遠距離対応も可かな? 或いは絡ませて精神への衝撃も素晴らしい効果がありありな感じもしそう
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