207.魔女様、村に戻って素材戦の下準備に入ります!
「たっだいまぁああ!」
ドワーフの王都でお土産を買い込み、メテオやドレスが用件をすますと村に戻る私達なのである。
途中、メテオはフレアさんのところで色々話し合っていたけど、スムーズに帰りつくことができた。
「お帰りなさいませ! ご主人様!」
満面の笑みで迎えに来てくれるのはララや村人たちだ。
いやぁ、悪いね、ありがたいねなどといいながら、屋敷に戻って今後のことを話す。
そう、ドレスの素材戦がこの村のダンジョンで開催されることについて、みんなにしっかり伝えておかなければならないのだ。
「くひふふふ、厄介ごとなら喜んでですよ! ご主人様、昔からトラブルは買ってでもやれといいます」
ララは独特の言い回しで喜んでくれる。
そんなことわざは聞いたことないけど、彼女が大丈夫っていうのなら大丈夫だろう。
しかし、この人もトラブルに首を突っ込むのが好きだよね。
「冒険者ギルドの本部からも連絡が来ていますので、ダンジョンはいったん封鎖しています。びっくりしましたよ、まだ開通式もやってなかったですし」
うちの村で冒険者ギルドをまとめているアリシアさんが報告してくれる。
さすがは冒険者ギルド、仕事が早い。
アリシアさんはダンジョン目当てできた冒険者たちを説得して、周囲の探索業務を行ってもらっているとのこと。
ララといい、アリシアさんといい、こういう事務方がテキパキやってくれると、すっごく助かる。
まさに縁の下の力持ち。
まぁ、ララは事務方っていうか、裏からほとんど全権掌握してる人だけど。
「しかし、こっからの準備が大変だよ。団体客だもの」
「ドワーフ王国の重鎮がいらっしゃるのでしょうから、失礼のないようにしなければなりませんね」
おそらくは100人を超えるドワーフの皆さんがやってきても、きちんと対応できるように準備しなければならないのだ。
しかも、期間は一か月。
私はそれぞれのスタッフに仕事をしっかりと割り振っていくのだった。
◇ メテオとララ:統括
「お任せください、ご主人様! 命に代えても遂行します!」
まず私とララとメテオは全体の統括業務。
必要な仕事を割り出して、村人や冒険者の皆さんに作業を配分していく仕事だ。
かなり大切な仕事で、ここで間違ったら、たぶん、間に合わない。
だけど、命に代えてもはいいすぎだ。
きちんと寝て、きちんと休むのが前提だよ。
「よぉっしゃ、まかしとき! 移民さんの住宅地だけじゃなくて、リゾートの拡張工事も進めとくでぇ!」
メテオもわくわくした表情。
たしかにリゾートを拡張するにはいい頃合いだ。
リゾートの客室を増やすのも当然ながら、一軒家風の離れとかつくるのは素敵かもしれない。
◇ クエイク:街道の整備
「でえぇええ、うちが街道の整備をするんですかぁっ!?」
そして、次の大事な仕事が街道の整備だ。
担当者はクエイク。
直近の都市であるサジタリアスから、うちの村までの街道を整備してもらうのも大切な仕事だ。
一緒に立札や小さな休憩所を等間隔で作ってもらい、道に迷わずに来てもらえるようにしたい。
シュガーショックや冒険者の皆さんと頑張ってもらう。
他にも力持ちな人がいたらいいんだけど。
「あ、そうだ、あいつって村にいたんだっけ!? あのサル」
「サル……ですか? あの目のいってる獣のことですか?」
「そいつ、そいつ。クエイク、あのサルって大きくなれるから、一緒に作業してみて」
うちの村は基本的に働かざるもの食うべからずなのである。
あのサルはどういう経緯でうちの村に来たのかしらないけれど、いるなら働いてもらいたい。
クエイクは非力だし、看板を立てるだけでも大変だろうからね。
「はぁっ? あいつ、のっぱらの未開拓温泉にカピバラと入ったりして、まんま獣ですよ、ほんまに」
「あいつ、言葉分かるし、大丈夫だから!」
「ひ、ひぇええ、うち、猛獣使いになってもうたん!?」
私の仕事配分にびっくりするクエイクだけど、もちろん、仕事は受けてくれた。
サジタリアスまでの道に詳しい彼女にぴったりの仕事だと思う。
◇クレイモア:お土産開発 ハンナ:おもてなし部隊のトレーニング
「おぉっしゃ、世界でいちばん美味しいお土産をつくるのだっ!」
「魔女様のために最高のおもてなしができるようにしますねっ!」
その後、私はクレイモアにお土産の商品づくりを、ハンナに温泉リゾートのさらなる充実を促す。
この二人、ダンジョンが閉鎖されると聞いて、やたらと落ち込んでいたからね。
それでも、次の目標を与えたら、やる気になってくれたのは嬉しい限りだ。
クレイモアの作るお菓子は絶品だから、今から非常に楽しみ。
ハンナは温泉のスタッフたちを束ねて、わいわい楽しそうに働いている。
ふふ、この子たちの働く横顔を見ていると、まさか二人が化け物戦士だとは思わないよね。
◇リリアナ:癒しサロンの拡充
「よぉっしゃああ! 気合を入れろよ、手前らぁあああ! 癒しっていうのは小手先じゃねぇ、魂でやるんだよっ!」
「うおっしゃあああ!」
そして、やたらとやる気になっているのがリリの率いるセラピーサロンの人々だ。
温泉リゾートに併設されたそれは、疲れを優しく癒してくれると評判なのである。
リリの開発した奇跡の癒しマッサージの評判も相まって、業績は好調。
セラピーサロンのスタッフもさらに増員した。
私は物陰から、彼女たちがミーティングしているのを眺める。
っていうか、声が大きすぎて筒抜けである。
「よぉし、てめーらは誰なのか!? このあたしにでっけェ声で言ってみろ!? あぁ!?」
「魔女様のほんわか狂獄悪炎せらぴぃサロンでぇす!」
「声が小せぇ! もぉ一回!」
「まぁじょっさまのぉっ、ほんわかぁっ、狂獄悪炎、せらぴぃサロンでぇえええす!!」
「うぉし、最高だぜ、お前らぁっ!」
リリは魔族との一件以降、癒しの能力がさらに開花したらしい。
癒しの仕事をしている時だけは感極まって、まるで人格が変わったかのように働いている。
セラピーサロンのスタッフたちも、もんのすごい気迫。
まるで今からケンカにでもでかけるんじゃないかってぐらいの勢い。
後ろの方からはセラピーの練習なのか、ビキッ!? とか、シャゴォッ!? とか、音がしてるし。
それにしても、セラピーサロンの名前が不穏過ぎる。
今度、注意しておこう。
◇ ドレス:温泉リゾートのリフォーム・住宅づくりの統括
「よぉっし、きびきびやるぞっ!」
ドレスは村に戻ると再びいつもの調子で働き始めていた。
相変わらず髪をざくっとツインテールにして、ショートパンツに履き替えて。
きらびやかな衣装を身に着けていた時も素敵だったけど、やっぱりこっちがかわいいし、かっこいい。
彼女は工房の皆を指揮して、大工仕事をどんどん片付けるのだった。
「ユオ様、あのぉ、お願いがあるんですが……」
「ん、どうしたの?」
彼女たちが作業するのを眺めていると、ドレスがやってきてお願いがあるという。
「あっしらドワーフは酒が大好きでして、空き時間に酒の仕込みをさせてもらえませんかね?」
何かと思ったら、酒蔵を作ってみたいとのことだ。
そう言えば、彼女は故郷に戻った時に、お酒造りの材料をしこたま買い込んでいた。
彼女の仲間の一人が酒造りに詳しいとのことで、やり方は分かるとのこと。
冒険者にとっても酒場でのお酒は楽しみの一つだろうし、これも一大産業になりそうな予感。
私はもちろん、Goサインを出すのだった。
くふふ、私の村がどんどん発展してくよ!
これも素材戦を誘致した効果なのかも。
◇ ドレスのライバル:レオパルと部下の会話
「どういうわけだ!? なぜドレスを無傷で帰した!?」
「そ、それが、ドレスを狙ってモンスターを放ったのですが、イリーナ様に邪魔されまして……」
「くそっ、あのいけすかない小娘め……。ドッドウェルといい、使えない男だ……」
「申し訳ございません!」
「奴らの騎士の調査は済んでいるのか?」
「イリーナのつれている冒険者のカルラはS級、かなりの凄腕です。おそらくは一番の障害になるでしょう」
「ふむ、あのドレスの騎士は何者なのだ? 顔だけしか取り柄のない、ひょろひょろのいけすかない小僧だ」
「あのユアという小僧は経歴不明です。おそらくは幻術の使い手でしょうか。カルラもそうですが、得体の知れない部分があります」
「ふんっ、愚かな。何人たりとも我ら革新派が誇る魔導兵器にかなうものか!」
「さ、さようでございますとも! あなた様が王位につけば、世界を統べることも可能でございます!」
「そうだ、その通りだ。素材戦の準備には余念がないだろうな!」
「ははっ、我々の最強の精鋭を用意しております! 最新の武器もできあがっています! こちらをごらんください」
「……いいだろう。くははっ、この素材戦を機に、ドワーフこそが最強だと知らしめてやる」
ここはドワーフの王都、ドアン。
王位継承者第4位のレオパルは目の前に並べられた魔導兵器を前に、下品な笑みを浮かべていた。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「セラピーサロンっていうより、ほとんどチーム名では……?」
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