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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第12章 魔女様の温泉ダンジョン大攻略! ドレスの王位継承権をめぐって、ダンジョンで素材集めにいそしみます!
206/352

206.魔女様、とんでもねぇ奴にロックオンされる (二重の意味で)


「ほんっとぉおっに申し訳ねぇ! 巻き込むつもりはなかったんだ」


 王様との面談の後、私たちは手ごろな食堂へと移動する。

 席に座るや否や、ドレスは開口一番に謝ってくる。


「いいよ、いいよ。ドレスがうちの村に残りたいって言ってくれて嬉しかったし。一人で抱え込まれるより、よっぽど楽だよ」


「ユア様、大好きだぜっ!」


「わわっ」


 がばっと抱きついてくるドレス。


 いつでもシャキシャキしてて、きっぷのいい彼女にしては珍しい感情表現に思える。

 逆に言えば、それぐらい今回のことで色々思うところがあったんだろう。


 おそらくだけど、国を出た理由も複雑なものがあったんだと思うけれど、彼女が話してくれるまで待つことにした。



「それにしても、メテオ、うちの村のダンジョンに素材戦を誘致しちゃったけどよかったの? 素材を持っていかれるんでしょ?」


 ドレスがひと段落したところで、先ほどのメテオの交渉について問いただすことにした。

 私はメテオに全幅の信任を置いてはいる。

 だけど、裏で何を画策しているかは聞いておかなければ。


「ふふーん、大丈夫や。素材持ってかれる言うても、所詮は日帰り探索やで? ダンジョンに本格的に潜る言うたら、普通は数日かけるもんや。そこまで高価なお宝が見つかるかわからへんやろ?」


「そりゃあ、確かにそうかもね」


「どっちかというと、参加者だけやない、その取り巻きの関係者各位がうちの村に泊まることの方が大きいねん。団体で大量のお客様が来るんやで? 当然、飲み食いもするし、遊びもする。ドワーフは酒飲みで有名やし、お土産も買って帰るし」


「なるほど、そっちの経済効果の方がでかいかもしれねぇな」


「それに、王位決定戦のために使われたダンジョンっていうのはえぇブランドになるんやで。宣伝力もえぐいことになるんやでぇ」


「参りました、メテオ様」


「ふくく、わかればよろしい」


 思わず平伏する私とドレスなのである。


 ドヤ顔するメテオの顔はかわいいけれど、相変わらず腹が立つ。

 しかし、なっかなかに考えられたものである。

 お土産需要も狙っているとは、恐るべし、メテオ。

 村に帰ったら早速、お土産について会議しなくちゃいけないね。


 将来的には酒蔵なんてのも作らなきゃいけないのかも。

 


「それにや、当然のことやけど、一番価値の高いものを持ってくるのはドレスのパーティに決まってるやん。ユアさんがおるんやし」


 メテオは、くかかっと笑うと、さらっととんでもないことを言う。

 いや、前半はいいんだよ。

 ドレスが素材戦で勝利するっていうのは。


「え? 私、出ないよ? ダンジョン、なにそれ」


 私がびっくりしたのは、メテオの言葉の後半部分である。

 何が楽しくて私がダンジョンなんかに潜らなきゃなんないのか。


 だって、暗くてジメジメしてるんでしょ?

 絶対、何かいるし、絶対ヤダ。


「でぇえええええ、何言っとんねん!? そんなん、いつものあれで蒸発させればええやん! 周りの人も蒸発させるのはなしやけど!」


「そうだぜ、あっしが潰してもいいぜ!? 外にいるのは案外怖くないから、足でぐりぐり行けるぜ?」


「えー、ぜったい、やだやだやだやだ」


 メテオとドレスがフォローに入ってくれるけれど、今回ばかりは首を縦に振らない。

 狭いところで暴れたら危険だっていうのは知っての通りだし。


 それにしても、あんたらご飯食べてるときに虫をやっつける話をするな!



「ふぅむ、まぁ、クレイモアとハンナだけでもえぇやろうけどなぁ」


 私の猛抗議をメテオは分かってくれたようだ。

 そう、うちの村には体にしっかりと栄養がいっている剣の達人二人組がいるのである。

 ふふふ、あいつらを投入すれば戦力的には問題ないでしょ。


 ……あとはシュガーショックでも、燃え吉でも入れちゃおう。うん。


「うーむ、うちの村って人外兵器ばっかりやったんやなぁ……」


「まったくだぜ……」


 私の提案にメテオとドレスは深くうなずく。

 そうだよね、気づいた時には物騒なのが棲みついてるんだよね。

 なんでだろ。




「モ、モンスターだぁっ!? 実験場から逃げ出してきたぞぉっ!?」


 これから街をぶらぶらしようかと思ったら、通りの方で大きな声がする。

 見れば、ダンゴムシを巨大にしたようなモンスターが暴れながら走ってくるではないか。

 うぅう、足がいっぱいあるぅうう。


 逃げてきたっていう言葉を聞いたから、ペットとして飼われているのだろうか。

 

「ひぇえええ、ヨロイムシやぁあああ。せ、せんせい、やっちゃってください!」


 メテオは私の後ろに隠れて、「どーぞ、どーぞ」などという。

 この子、交渉事は得意なんだけど戦闘力はゼロに近い。

 

 しかし、私だって足のいっぱいあるモンスターは苦手なのだ。

 先生なんて言われても困る。

 ドレスは構えはするものの武器を持ってはいない。

 つまり、戦えるのは私しかいないっていう状況なのだ。



 うぎぐゆぅううううう!


 往来に人通りがいなくなったのもあって、大きな虫は私に狙いを定めたらしい。

 変な音をたてながら、ドドドドっとすごい足音を立てながら走ってくる。


 うぅぅ、熱失神で転がすしかないかな。


 私が覚悟を決めた矢先のことだった。


 ものすごい悪寒が私の背筋を駆け巡る。

 今まで感じたことのないような、それこそ、不用意にGを発見した時よりもひどい悪寒が。

 いや、Gほどじゃないか。ごめんなさい、言いすぎた。


 とにかく、この間の魔族と対峙した時と同じような感覚が私の内側を走っていったのだ。



 そして、ぴたりと魔物は動かなくなる。

 私は何の能力も発揮していないわけで、ちょっとびっくり。


 な、何が起こったの?



「けが、ない?」


 そして、私に声をかけてきたのは、ショートカット髪の女の子だった。

 その髪の毛はとても珍しく水色で、陽の光でキラキラとしていた。


「あ、ありがとうございます。助かりました!」


 そして、私は合点が行ったのだ。

 彼女がでっかい虫をやっつけてくれたということを。


 あんまりにも嬉しかったので手を握って、しっかりとお礼を言っておく私なのである。

 彼女は冷え性なのか、手がとってもひんやりとしていた。


「あ、あ、あの」


 私に手を掴まれた彼女は目を丸くして驚いた表情。


 ……あ、しまったぁあ。


 私、今、男装してるんだったぁあ。

 気安く女の子の手を握るとか、どう考えてもダメ男だ。

 女の子は顔を真っ赤にして怒っているし、私って、やばい奴じゃん!


「す、すみませんっ! とんだ、ご無礼を!」


 あたふたと謝る私。

 ええい、やっちまった。

 所詮は付け焼き刃だもんなぁ。ごめんなさい。


「おぉっ、氷晶のカルラがやっつけてくれたぜっ!」


「さすがはSランク冒険者!」


 虫が動かなくなったのを見て、通りには人が戻ってくる。

 彼らは一部始終を見ていたらしく、虫をやっつけてくれた女の子を称え始める。

 ほうほう、Sランクの冒険者だったとは。

 Sランクってあれだよね、すっごく強くて実績があるっていう人。



「カルラ! 遅いわよ、何してるの!」


 そうこうしていると、虫の陰から小さい女の子が出てきた。

 エリクサーほど子供ってわけじゃないけれど、ドレスより身長が低い。

 髪の色は赤に近く、ツインテールがよく似合っていた。

 

 口調からして、明らかに生意気そうな性格だけど。


「別に……」


 彼女の生意気な態度に、水色髪の女の子はちょっと不満気だ。

 さっきもそうだったけど、この子は無口なのかもしれない。


「げげ、嫌な奴に会っちまった……」


 私の後ろにいたドレスが独り言のように言う。

 嫌な奴っていうのは、目の前にいる赤髪の少女のことを言うのだろうか。


「ドレス、久しぶり。のこのこ帰ってきたと思ったら、素材戦に出るんですってね?」


「まぁな……」


 女の子はドレスに突っかかるような態度。

 ふぅむ、因縁の相手とかいう相手なのだろうか。


 ドレスはいかにも話したくなさそうな表情。


「ふふん、今さら王都に戻ってきても、もう遅いわよ。言っとくけど、王位はこのイリーナ様が頂くわ。あんたもユリウスもけちょんけちょんにしてやるんだから」


 イリーナと名乗った女の子はそういうとふふんと笑う。

 話の内容からして、彼女もあの素材戦に出場するってことらしい。

 つまり、ドレスのライバルっていうわけである。



「じゃ、カルラ、行くわよ」


「ん……」


 彼女は先ほどの水色の髪の毛の女の子、カルラというらしい、を連れて、立ち去ってしまう。

 終始、自信たっぷりという表情で圧倒される私なのである。


 

「ドレス、今のが…」


「あぁ。あいつが王位継承権1位のイリーナだ。実績では群を抜いて一番だよ」


「神眼のイリーナやろ、まったくけったいな相手やなぁ」


 メテオとドレスが言葉を交わす。

 話している内容はあんまりわからないけど、あの生意気な顔した子供、結構、優秀らしい。

 

 私は立ち去る二人の背中を見送りながら、村になんのお土産を買って帰るか考えていた。




◇ カルラさんの内面はこんな感じです



 ひ、ひきゃああああああ!


 生まれて初めて、男の人に手を握られたぁあああああ!


 村を出て以来の椿事(ちんじ)です!

 

 だって私はこれまで冒険者一筋だったし、色恋沙汰なんて縁がなかったんだもの。


 しかも、相手は美・少・年!


 切れ長気味の瞳が涼しげで、すっごい肌が綺麗で、まるで女の子みたいだった。

 だけど、体型的にしゅっとしてたから、どうみても美少年だよね!

 うん、胸元とかすらーっとしてたもん。

 ちょっと華奢な感じが素敵すぎる!


 しかも、手を握られたってことは、わ、わ、私のことを好きだってことだよね!?

 す、す、好きじゃない相手にそんなことしないよね?

 私だったら、す、す、好きな子の手を握りたいもの。


 ひえっぇええ、困るなぁ、一目惚れされるとか、困る。

 いや、困ってないけど、困るんです!

 相手はたぶん私よりも年下だし、私がリードしなきゃいけないのかもだし。

 で、でも、私、そういうのに疎いし経験ないし。


 

 しかし、一つだけ気がかりなことがある。

 あの男の子、雇い主のライバルのドレスっていう子と一緒にいたのよね。

 も、もしかして、ドレスの騎士なのかしら?


 いえ、そうであっても、無理やり騎士にさせられてるんだわ。

 だって、そうじゃなきゃ私の手をとって微笑みかけるなんてしないはずだよね。

 彼の手はすっごく温かくて、気持ちよかった。

 私の冷たい手がじんわり温かくなるぐらいの熱気を持っていた。


 こんなこと、初めて!

 あの人は私を初めて温めてくれた人!

 いわば、初めての人!!

 これってもう運命だよね!!!

 


「カルラ、遅いわよ! きびきび歩きなさい!」


 私の雇い主のイリーナがわぁわぁわめく。

 うるさいので、この人、キライ。


 だけど、禁断の大地に行くために利用させてもらおう。


 待っていてください、私の王子様!

 

 あの目立ちたがりの加熱女を倒したら、すぐに会いにいきますからね!!



【魔女様の発揮したスキル】

握手:魔女様の体の中は熱がぐるぐると循環している。そのため、一般人よりも遥かに手足が温かく、握手をされるとけっこう気持ちいいのである。とはいえ、汗ばんでいるわけでもない、変な体質なのである。握手をすると冷え性の女性にはことのほか喜ばれる。ちなみに魔女様が出力を上げて握手をすると、相手の手が(以下略

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「村に棲みついた人外って、魔女様のことですか……?」


「おい、作者、これ以上、やべぇ奴を出すんじゃねぇよ……?」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークやいいねもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] すまねぇ、俺が愚かだったよ。新キャラの性格がぶっ飛んでるのはいつものことなのに…… 人気が少ないからって頂上決戦するのはやめてくれよ?
[一言] 男装ユオ様を白目剥くまでわからせてやりてぇなぁ…
[一言] >気づいた時には物騒なのが棲みついてるんだよね。 と一番物騒なのが言っていました
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