201.魔女様、まさかの才能を開花させてドレスの実家へと向かいます! だけど、新たな事件の予感です
「ドレス、かっわいいじゃん! これも似合う!」
ドレスが里帰り、それも王位継承者の一人として戻るということで、私たちはそれにふさわしい服を見繕うことにした。
まぁ、継承権は破棄するって話ではあるんだけど。
「えぇえ、こんなフリフリなのはちょっとなぁ。げっ、こんなスカートが長いんじゃ作業できねぇよ!」
ドレスは困惑の声をあげるけど、お構いなしだ。
私たちは彼女のもつ素材に気づいたのである。
あれ、この子、めっちゃかわいいんじゃないの? と。
ドレスは基本的に髪の毛を左右にざくっと持ち上げてるし、服も汚れていいものしか着ない主義だ。
そのため、スカートなんか履かないし、かわいらしい服など選択肢の範囲外だったのだ。
「似合いますよ! ドレスさん、こういうのはどうでしょうか!」
「うっわぁああ、花柄はちょっとぉおお」
リリはドレスの素材の良さに興奮しているのか、手持ちのドレスをどんどん持ってくる。
私も可愛い服は大好きなので、彼女をコーディネートするのに気合が入る。
髪の毛をララが整えると、あら不思議。
結構なお姫様へとチェンジするではないか。
ついさっきまでハンマーを振り回していたとは思えないよ。
ふふふ、こんな姿で現れたら、国王陛下だってびっくりしちゃうんじゃないの?
◇
「ご主人様、よくお似合いです。これはこれでいいですね。はぁはぁ、やっぱり私の目に狂いはなかった」
次に調整しているのが私の服装だ。
なんと、私は男装に挑戦してみることにした。
目隠しをしていたと言えど、私の顔はドワーフの国にも知れ渡っている可能性がある。
そんなのを連れて帰っちゃったら、いらぬ混乱を招く可能性もあるからね。
衣装や髪の毛のカツラはララが準備してくれた特注のもので、なぜかジャストフィット。
ふぅむ、黒髪じゃない私ってこんな感じなんだ。
なんだかすごく新鮮である。
それにしても、ララはどうしてこんなものを用意していたのか。
やたらと興奮しているララに嫌な予感がしたので、それ以上は聞けなかったけど。
「やっぱり私はユオ様でいいですぅうう」
男装を完成させると、リリはしなしなっとなって、私にもたれかかってくる。
熱でもあるんじゃないのってぐらい顔も赤い。
あらあら、私って実はこういう才能があったってこと?
まぁ、褒められるっていうのは嬉しいことだよね。何であれ。
「ふぅむ、これは……逸材やったな。オブラートに包んで言うと、ユオ様はすとーんとしてるから似合うんやな、かっこえぇけど」
「お姉ちゃん、それ、オブラートに包んでないで。でもまぁ、うちらやと息苦しいやろうなぁ、かっこえぇけど」
が、しかし。
私の思い上がりを真っ正面から打ち砕く奴らがいる。
我が村が誇る、いや、我が帝国が誇る、通称『人に言っちゃいけないことをずけずけ言う猫姉妹』である。
あぁ、そうですよ、私も気づいてましたよ。
胸元にたいして違和感がないってことをさぁ!
いちおう、胸を布でぐるっとしてもらっているけど、別にそこまで苦しくないし!
あんたら、『かっこいいけど』が免罪符になると思わないでよ。
「いやいや、ユオ様は何をしても素敵ってことだぜ。よぉし、あっしも準備しねぇとな。お土産でも見繕うか」
ドレスは里帰りを渋っていた割に思った以上に笑顔だ。
イケメンそのものみたいなことを言いながら、私をフォローしてくれる。
っていうか、口調と服装のギャップがすごい。
「姫様、申し訳ございません。大変なご無礼を」
ドレスの心づかいに機嫌を取り戻した私は、彼女にかしずく姿勢を取ってみる。
まさにお姫様と騎士。
ふふふ、こういうのされてみたかったんだよなぁ。
リリはたまにクレイモアにされてるみたいだけど、ものを壊した時に。
「うきょあぁああ! ご主人様、私にもそれやってください!」
「はわわわわ、私もしてほしいです!」
「うちはお姫様だっこしてぇ!」
「うちは腕にぶら下がりたい!」
私が調子に乗ったせいなのか分からないけれど、ララたちは嬌声をあげる。
いやいや、みんなにこの動作をするのはめんどいよ。
それにメテオとクエイクのご要望は私の力量を超えているし。
男の人じゃないんだから、お姫様だっこなんてできるわけないでしょ。
「ご主人様、これは練習ですよ正体を見破られてはいけませんですから練習するのです、さぁさぁ早く私にどうぞ、ララ様は私が守るでどうぞはいください、はぁはぁ」
「えぇええ、あんた早口すぎるでしょ!?」
ララは真剣な表情で私にアドバイスしてくる。口調も必死だし、目が怖い。鼻血出てない?
とはいえ、その言葉は確かに一理あるともいえる。
女性と男性とでは仕草が違うし、騎士ともなればなおさらだ。
バレちゃダメだというわけで、その夜、私は彼女たちに延々と練習させられるのだった。
◇
「それじゃ、行ってくる! くれぐれも留守をよろしくね!」
もろもろの用事を片付けると、私たちはドワーフ王国ドアンへと出発する。
ドレスいわく、ドアンというのが国名らしい。
話によると、昔はもう一つドワーフの国があったそうなのだけど、滅んでしまったとのこと。
「行ってらっしゃいませ、ご主人様! ご武運を!」
ララにご武運をなんて言われるけれど、私は暴れるつもりは毛頭ない。
ドワーフの国を視察して、うちの村に取り入れるものはないか調査に行くのだ。
そして、メテオが温泉を売りこむ様子を応援するのだ。
うふふ、ドワーフの人だって絶対に喜んでくれるはず。
「それじゃあ、出発!」
わおぉおおおおんっ!
シュガーショックは勢いよく走りだす。
もちろん、気絶するほど早いってわけじゃない。
あくまでも快適さを維持した上で走ってもらう。
服装については途中で着替えることにした。
じゃないと風でめちゃくちゃなことになるからね。
「おっ、そろそろドアンの王都に入るぜ!」
数日間走っていくと、ドレスが指さす方向にドワーフ王国の王都が見えてきた。
その姿は異様そのもので、なんていうか煙突がめちゃくちゃ立ち並んでいる。
白い煙をもうもうと吐き出していて、都市全体がまるで何かの工場みたいだ。
ドレスいわく、ドワーフの王都は発明の都とも呼ばれているらしい。
言われて納得である。
「おぉっ、ドレス姫! おかえりなさいませ!」
「ふぅむ、お連れは猫人の商人に騎士の方ですね。どうぞ、お通りください!」
都市に入るドレスは身分証明書を持っているし、メテオは商人としての身分証明書を持っている。
私は完全なる職業不詳の人物だけどドレスの騎士ということで通してもらえた。
シュガーショックは単なるペットの犬として。
うふふ、えらいよ、シュガーショック。今回は何も壊さずに入れたね。
検問を通ると、あちらこちらでがっちゃんがっちゃんやっている。
通りには諸々のお店が立ち並び、まったくもって面白い。
片っ端からお店に入ってみたい気持ちが湧いてくる。
「それじゃあ、団長。俺らもこの辺で帰ってきますわ! 用が終わったら合流しましょう」
ドレスと一緒に里帰りしたドワーフの面々は自分自身の実家に帰ると言っていったんお別れだ。
彼らも久しぶりの故郷を楽しむことだろう。
「ユオ様、あっしも自分の家に行きたいんだが、いいかな? 久々に実家の工房がどうなってるのか見てみたいんだ。部屋がそのままなら泊まれるぜ」
検問を抜けると宿屋にでも泊まろうかと思っていたら、ドレスが素晴らしい提案。
宿屋に泊まるのもいいけど、この街で暮らしている人たちの様子を見るのも楽しいものだよね。
私はもちろんOKをして、ドレスの実家に行くのだった。
おっと、その前にお互いの呼び名を考えておかねば。
だって、私はドレスに仕える騎士なんだし。
「じゃ、ユア・タリはどうや? 湯あたりからとったんやけど」
「ユア・タリ、いい名前じゃん! ユアってわけね!」
メテオがなんだかとっても強そうな名前を提案してくる。
確かに私たちにとって湯あたりは強敵である。
使い捨てとはいえ、それに因んだ名前っていうのも面白い。
それでは、騎士ユアはドレス姫のご実家にレッツゴー!
「な、何が起きてんだ、こりゃあ!?」
「ひいぃいいいえええ!?」
ドレスの実家はなんていうか、工房みたいなところだった。
屋根に煙突もあるし、レンガ造りのしっかりした外装だし。
しかし、私たちが驚いているのはそれが理由じゃない。
家の内側がめちゃくちゃに荒らされているのだ。
引き出しは全部開けられているし、衣類ダンスも取り出されている。
ところどころ床がひっぺがされている。
半屋外になった工房も同じように荒らされていた。
留守の間に泥棒にでも入られたのだろうか。
「って、えぇえええ!? なんで、こんなところに寝てんだよ、じじい!」
そして、もう一つ驚いたことがある。
しっちゃかめっちゃかになった工房の床に、ドワーフのおじいさんが倒れていたのだ。
幸いなことに息はあるらしいけど、なんでこんなところに!?
しかも、ドレスは言った、じじい、と。
ってことは、この人、もしかして。
「た、祟りじゃぁああああ!」
メテオは叫ぶ。
しかし、そういうのは村人側が叫ぶもんだと思う。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「そこまで、すとーんじゃないよ…… (作者注)」
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