20.魔女様、大木の化け物を無キズで破壊してしまうも、しょせん木は熱に弱いよねと一人で納得する
「このままじゃ、あの人たち危ないよね、私、行くよ。爆発させてくる」
巨大すぎる樹木のモンスター。
その表皮は硬く剣も歯が立たない。
メテオは「ひぃいいい、化け物どころの騒ぎやないで」とガタガタと震えている。
確かに見た目は恐ろしい。
でも、相手はどこからどうみても樹木。
樹木ってことは熱に弱いんじゃないの?
昔から、たき火をするのは好きだったし、そんなに驚くような相手なんだろうか。
「ご主人様、あいつは火炎魔法に耐性があるようですよ!? いくらなんでも危険です」
「いやいや、しょせんは木でしょ? なんとかなるよ、たぶん!」
ララの制止を振り切って冒険者たちを助けに行くことにする。
彼らは私たちの村に来てくれた二番目のお客様ともいえるのだ。
このまま見殺しにするわけにはいかない。
5人ばかりで構成されている冒険者の一団は斧や剣で交戦し、炎の魔法で火球を飛ばす。
しかし、敵の外皮は異様に硬く、炎があたってもすぐに掻き消えてしまうようだ。
村長さんがなんとか防いでくれているけど、さすがに一人で相手にできる大きさじゃない。
「超高級素材だぞ、ちったぁ根性見せろ! このアホども!」
冒険者たちの中でも、異彩を放つのが小さい体で大きなハンマーを持った女の子だ。
栗色の髪の毛を左右でおさげにしていて、ショートパンツがとてもよく似合っている。
「団長! そんなこと言われても、こいつ硬すぎます!」
「ええい、言い訳する前に手を動かせ!」
団長と呼ばれた彼女は大きな声で叫び、跳び、戦う!
筋肉質で小さな体つきから言って、彼女はドワーフの種族だろう。
彼女たちは木の化け物の攻撃を何とかかわし、どうにかこうにか攻撃しようとしている。
とはいえ、相手には効いていないようだ。
ボボギリとかいうモンスターは「ぎげぇええ」とお腹に響いてくる声をあげて襲い掛かってくる。
その体は黒光りしていて高級家具に使えそうな光沢を放っている。
超高級素材っていうのもあながち嘘じゃないのかもしれない。
ううむ、木っ端みじんにするのはちょっともったいないかな?
「ユオ様、ちょおっとお待ちくださぁーい!」
私も動き出そうとした矢先、ララが駆け込んでくる。
「どうしたのよ!? いったい」
「トレントの額に大きな魔石がありますよね、あれだけを破壊してください! うまくいけば素材も回収できます!」
「ナイスアイデア!」
ララが的確なアドバイスをしてくれる。
確かに化け物の額には赤紫色のおおきな魔石が埋まっている。
モンスターの一部だけを爆発させるって芸当ができるかしら。
この間、ちょっとだけ練習してみたけれど、やってみるしかない!
「村長さん、ハンナ、敵をひきつけといて!」
「心得たぞい!」
「りょーかいです! あははは、こっちにおいで!」
私は村の守護神である二人に陽動をお願いする。
指示通り、村長さんとハンナは素早い動きで敵の腕をひきつけ、さらにはばっさばっさと枝葉を切り落としていく。
その間に敵の足元まで猛ダッシュする私なのであった。
トレントのごつごつした足部分を爆発できれば、こいつを動けなくできるよね。
私は根っこの一角に近づき、手を当てようとする。
「ちょっと、うそ、まじでぇぇえええええ!?」
だが、見かけに反して脚部分も触手のように柔軟に動く!
なんたる誤算!?
気づいた時には腰をぐるぐる巻きにされて空中に浮かんでしまうのだった。
ぎりぎりと締め付けられ、呼吸ができないほど苦しい。
目の前に迫るのはモンスターの邪悪に光る眼と大きな口!
あんなものに飲み込まれたら、わたしの人生、終わっちゃうじゃん!
「ええい、とにかく、魔石だけ爆発して!」
こうなったら今の体勢でやるしかない!
私は自分を掴んでいる岩のような根っこに手を置いて、強く念じる。
自分の体から赤い熱線が出ていって、モンスターの額の一か所だけで炸裂するイメージ!
魔石だけが私の熱によって粉々になっていくイメージ!!
その直後!
ガシャンとガラスの割れるような音があたり響く。
次の瞬間、怪物の魔石にひびが入り、一気に爆裂四散。
数秒もしないうちに、怪物は動きを止めるのだった。
「ふぅ……、終わった」
かくして私を掴んでいた根っこは完全に沈黙する。
トレントの口の中にも目の中にも、あの邪悪な光はもう残っていない。
いやぁ、見える位置に魔石があるタイプでよかった。
最悪の場合、全体を爆発させるしかなかったと思う。
とはいえ、所詮は木だったなぁ。
熱に弱いところとか。
「ご主人様、かっこよかったです!」
「すごいで! やっぱり、めっちゃ強いやん! ユオ様、ぜったいやばいやつやん!」
どうにかこうにか根っこをすり抜けて地上に落ちると、ララやメテオが抱き着いてくる。
見回せば冒険者の皆さんも、村長さんもハンナも無事なようだ。
なんとかみんな無事で済んだようでよかった。
「さすがは我らが灼熱の魔女様ですじゃ!! いけにえでも供えねば!」
「魔女様に一生、ついていきます! またいけにえになっても大丈夫です!」
村長さんとハンナもやってきて、私の手をもってぶんぶんっと振る。
いや、その理屈はおかしいでしょ。
そもそも、一回もいけにえにした覚えはないんだけど。
「みんな、大げさすぎるって。この間のスライムと同じで、しょせんは木だからね、燃えるでしょ。普通」
「だから、普通のモンスターじゃありません!」
「んなわけあるか!」
あんまりにも周りがワイワイ言うので、念のため、くぎを刺しておく。
今回のモンスターは単に大きく育ち過ぎただけの木材だったってことを。
しかし、ララもメテオも納得できないのか激しいツッコミをいれてくる。
ええい、いつになったら私が普通の女の子だってわかってくれるのだろうか。
「ま、魔女……!? 灼熱の魔女って本当にいたの!?」
気づいた時には冒険者の皆さんは私のことを愕然とした表情で眺めていた。
うぐぐ、この人たちに魔女じゃないってわかってもらえるかなぁ。
【魔女様の発揮した能力】
・選択加熱:対象の目標とする部分だけを加熱する能力。魔石などの高耐久物質にも適用可能。心臓や脳に行うと即死する。
【魔女様の手に入れたもの】
・ボボギリの体:300年ほどの樹齢を持つトレント。トレントは世界樹の変異種であるため、魔力伝達に優れた素材。高級素材。購入すれば数億ゼニー以上する可能性あり
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「魔女様、即死技ばっかりやん……!」
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