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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第11章 魔女様の独立国家の作り方! 悪い魔族をふっ飛ばして、もののはずみで独立宣言しちゃいます
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187.魔女様、新しい攻撃の方法を編み出し、ベラリスの絶界魔法陣を打ち砕く。ヒント:雲も湿気も熱には弱い


「まぁじょぉさまああぁあああ!」


 空飛ぶ魔族に啖呵を切った矢先、私のところに聞き慣れた声の持ち主が現れる。

 彼女は城壁からしゅたっと着地すると、こっち側に走ってくる。


「ハンナ!? 無事でよかった! あぁあっと、私に抱き着いちゃダメだよ燃えるから!」


 それは私の村の村長さんの孫、ハンナだった。

 今回はサジタリアス救援のためにかけつけてもらっていたのだ。


 無事そうでなにより。


「ごほっ、ごほっ、魔女様、お会いできてよかったですぅううう!! みんな、何とか無事ですよ! ごほっ、ごほっ」


 彼女は泣き出しそうな顔で喜んでくれる。

 わざわざ迎えに来てくれたのだろうか。


 それにしても、すっごい咳き込みようだ。

 やっぱり戦闘で疲れているのかもしれない。


「ま、魔女様、どうしてこの霧の中で平気なんですか!? これって、体力と魔力を奪うとっても危険なものなんですよ! ごほっ、ごほっ」


 ハンナはそう言うけれど、私にはたいして変化を感じられない。

 これぐらいの湿気はちょっとしっとりしてるのかな程度のものである。

 

「ふくく、わしはこう見えても魔族じゃからのぉ。瘴気には慣れておるぞ!」


 エリクサーはそういうと小さい胸を張る。

 かわいい、えらい、よしよし。


 なるほど、この真っ黒な霧って体に悪いものだったわけか。

 夜を演出しているのだとばかり思っていた。


「ふはははははは! この闇霧はお前たちの魔力全てを奪う! 今に呼吸することさえできなくなるぞ!」


 あの意地の悪い魔族が上の方でごちゃごちゃ言ってくる。うるさい。

 

 まぁ、早い話、このご自慢の霧さえなくなればイイってわけなんだろう。

 あの上空の大きな魔法陣も目障りだよね。



「ハンナ、離れてて。すぐに楽になるよ」


 まずは城を壊すとか言う魔法陣だ。

 真っ黒な雲の上に赤い線で描かれたそれは、やはり見るからに不気味。

 まぁ、私は魔力ゼロだし魔法陣の文字が読めないんだけど。


 でも、私には秘策がある。

 雲に魔法陣を描いているというのなら、雲ごとなくしちゃえばいいのだ。

 ものの本によれば雲は水分でできているという。

 ということは、熱には弱いっていうこと。


 これって常識だよね?




「えいっ!」


 この間、トビトカゲをやっつけたのと同じ、熱の円を上空に飛ばす。

 それはふわふわと浮かび上がって、そのままゆっくりと拡大していく。


 どうも上方向に飛ばす時には速度が出ないみたいだ。


「ぎゃははは! なんだそれは? そんなものは絶界魔法陣の前では無力ぅうううう!」


 あの魔族の煽り声が響くけど、無視を決め込む。

 ふん、派手さはないけど、なんでも焼いてくれるんだからね。


 熱の円環はぐるぐると回りながら、やがて拡大していく。

 その大きさはサジタリアスの城よりも大きいぐらいかな。

  

 上空には巨大な真っ赤な円が現れて、黒い雲にゆっくりと突入しようとしている。


 しかし、相手の魔法陣は高い位置にありすぎるのか、衝突までに時間がかかりすぎているかもしれない。


「ま、まずいぞ、そろそろ発動しそうじゃぞ!?」


 そうこうするうちに敵の魔法陣が光り始め、何やら雲行きが怪しい感じ。

 あれって城を破壊するって言ってたし、真正面からぶつかったらきついかもしれない。


 とはいえ、熱視線じゃ細すぎて魔法陣を攻撃できるか分からない。

 もっとこう出力の大きな攻撃の仕方はないかしら。


 例えば、手のひらや拳から熱線が出てくるとか。

 

 ……そうだよ、それだよ、かっこいい!



「えいやっ!!」


 手のひらに思いっきり熱を込めるイメージする。

 そして、私の中でたぎる熱が拳を通じて一直線に伸びていくイメージをする。


 じわじわと熱くなってくる右の拳。


 いい感じ!


「えいやあっ!」


 いい具合に仕上がってきたのを感じた私は拳を思いっきり振り上げる。



 どぎゅぁああああん!



「はえ?」


 出てきたのだ、特大の熱光線が。

 青白い光を放つそれは上空へとまっすぐ伸びて、魔法陣の一部をズタズタに崩す。


 しかし、出てきたのは私の拳の先からではなかった。

 

 私の口からだったのだ。


 えぇえええ、これじゃ燃え吉と同じじゃん!?

 嫌なんだけど、絶対。



「まだ終わってはおらぬ! やつの魔法陣が作動するぞ!」


 エリクサーの叫び声。

 確かに敵の魔法陣は未だにチカチカと点滅している様子。

 赤い光の帯がこちら側に降りてこようとしている。

 

「これでどうだぁあっ!」


 敵の魔法陣に対して、もう一度拳を突き上げる。

 

 どっぎゃっぁああああああああん!!


 などと耳をつんざく音がして、大量の熱が放射。

 やはり口から。


 慣れてきたのか、さっきよりも威力の大きいものができた。

 しかも、きぃいいいいんって耳ざわりな音もするし。



 しかし、こうなればヤケだ。

 かっこ悪いとか言ってる場合じゃない。

 大きく口を開けて、ががぁーっと光を飛ばす。


 数秒後、私の口から放たれた光は空に浮かんだ魔法陣を焼き尽くす。

 残るのは歪つに穴の開いた魔法陣の残骸だけだった。



「うぬぬ、まずい、わずかではあるが作動したようじゃぞ!?」


 それでも魔法陣の残骸からは赤い光がゆっくりと落ちてくる。

 まるで血液が滴り落ちてくるみたいに。


 うぅう、不気味。悪趣味。


 でも。

 


 …………しゅぼっ

 

 ずいぶんのんびりした音をたてながら、熱の円が赤い光を飲み込む。

 そして、何事もなかったように上空の黒い雲にぽっかりと巨大な丸い穴を空けるのだった。


 ふふ、お日様の光がさしこんできてまぶしい。

 


「魔女様、すごいですぅぅうう! まるでバハムートみたいですよぉお! ごほっ、ごほっ」

 

 ハンナは咳き込みながら大喜び。

 バハムートってあれだよね、世界の半分ぐらいある神話の竜。

 確か口から高温のブレスを吐いて神様を焼き尽くすとかいうやつ。


 嫌だ。そんなの嫌だ。


「いや、煉獄のズィーラガッにそっくりじゃぞ! 口から青白い炎じゃ!」


 エリクサーは発音しにくいものに私を例えてくれる。

 なんだか分からないけれど、それって多分化け物だよね?


 二人の反応に色々つっ込みたいことはある。

 だけど、まずはこの黒い霧をどうにかしなきゃいけない。

 ハンナも苦しそうだし、お城の人たちも困っているかもしれないから。


 

「じゃあ、この湿気を飛ばすよっ! からっと行くわ!」


 私は目を閉じて、ふぅっと息を吐く。

 そして、イメージするのだ。

 この真っ黒な湿気を解消する熱が溢れ出ていくことを。


 じめじめの季節にはまだ早いってことを教えてあげなきゃね。



「おぉおおおお! 闇霧が晴れていくのじゃ!」


「すごいですっ! 体が軽くなりましたぁあ!」


 10秒もたたないうちに、二人の明るい声が響く。

 

 私の発した熱があの気味の悪い霧を飛ばしてしまったのだ。


 まぁ、湿気は熱に弱いし、これぐらい当然だよね。



「ハンナ、エリクサー、今、あなたたちは何も見なかった。……いいわね?」


 一件落着に思えるかもしれないけれど私はやらなければならないことがあった。

 それは二人にきっちりと釘を刺すこと。


 特に口から破壊光線を出したとばれてしまったら最悪だ。

 あぁいうのは人外がやることでしょうよ。



「ひぃいいいい、言いませんんんんっ! 魔女様が口から大量の炎を出したとか言いませんっ!!」


「ふくく、わしは口が堅いので通っておるぞ。髪の毛がびかびかなったのは皆の者には黙っておこう。本当だぞ?」


 ハンナもエリクサーもこくこくと頷く。

 ふむ、いいでしょう。

 

 ん? 髪の毛がびかびかってなに?



「な、な、な、なにが起きているぅうううう!? 絶界魔法陣が、闇霧が消えたぁああああ!?」


 上の方から相変わらず、おじさんの声がやかましい。

 ふふふ、そりゃそうだよね、「これでおしまいだ、キリッ」とか言ってたのに、消えちゃったんだもの。



「よぉし、お城に行くよっ!」

 

 おじさんには反省と降伏の機会を与えてあげよう。

 私たちはとりあえずシュガーショックにまたがって、サジタリアスの城へひとっ飛びするのだった。



◇リース王国にて



「女王様、あれをご覧ください!」


 リース王国の女王は険しい顔をする。

 王都の上空に映し出されたのは、サジタリアスの様子だった。


 城の上に巨大な魔法陣が描かれ、怪しげな光を放っている。


「あれは、絶界魔法陣!?」


 女王はそれを見るなり、すぐに状況を理解する。

 サジタリアス上空に現れたその魔法陣は、一度起動すれば、その影響下のことごとくを焼き尽くすものだった。

 起動するまでに時間がかかるものの、その威力は大戦の際の逸話として残っている。


 そして、それほどの魔法陣を作ることができる魔族はそう多くはなかった。

 魔王もしくはそれに準ずる実力を持っていることがわかる。



「サジタリアスは、終わりか……。あの辺境伯をなくすとは惜しいことをした」


 女王の拳に力が入る。

 サジタリアス上空で回り続ける魔法陣は一般的な魔法の届く範囲をはるかに超えていた。

 つまり、人間側には打つ手がない状況なのだ。

 せめて、飛行魔法の使える女王がいれば、打つ手はいくらでもあったのだが。


「王都・各都市に厳戒態勢を敷け! 結界を張り直し、騎士団を戦闘態勢に入らせよ。魔族はすぐにでも侵入してくるかもしれん!」


 女王は状況を見守りながら、部下に次々と指示を出す。

 電撃的に攻めてくる可能性も高く、その場合にはこの王都が、次のサジタリアスになる可能性もあるのだ。


 しかし、予想外のことが起きた。


 

 どぎゅぁああああん!


 おかしな音がしたのち、分厚い雲に描かれた絶界魔法陣に穴が開いたのだ。


「な、なんだ、あの青い光は!?」

 

 凄まじい速さで青白い光が一直線に貫いていったのを女王は見逃さなかった。


 さらに続いて、何発も破壊光線が魔法陣を貫く。 



「ど、どういうことだ? サジタリアスにはあの魔法陣に魔力干渉ができる術者がいるのか?」


 女王は目を見張る。


 通常、魔力によって構築された魔法陣は物理的な干渉によって崩れることはない。


 いくら雲を崩したところで、魔法陣が破壊されることはないのだ。

 

 その青白い光は違った。

 

 魔法陣をいとも簡単に貫き、その上の雲を貫き、ズタズタにしてしまったのだ。

 

 しかし、それでも状況はまだ明るくはない。


 絶界魔法陣は発動の時を迎え、真っ赤な破壊の光を溢れ出し始める。

 量は多くないものの、その光に当たった場所は廃墟と化してしまう、特殊な光だった。


 

 しかし。


 ……しゅぼっ


 正体不明の巨大な赤い円が現れて、発動した魔法陣の破壊の光ごと包み込んで消し去ってしまった。

 さらには暗い闇夜の中のようだった視界がどんどん晴れていく。



「な、なんだあれ? え、え、え? はぁ?」


 もはやまともな言葉さえ出てこない状況。

 博識で知られる女王でさえも、「わけがわからないもの」を目にしたのだった。

 それは、かつて彼女が魔王と対峙した時以来の衝撃だった。



 

【魔女様の発揮した能力】

熱線放射(口):口から高温の熱を一気に放射する技。熱視線よりも大量の熱を放出できるため、破壊力に優れている。本気やけになれば、魔法干渉も可能。お行儀があまりよろしくないため、魔女様はお好みではない。無論、めちゃんこな即死技である。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「奴を刺激するなと言っただろうが……」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば、ドレスの作った燃えキチ駆動石像も口から火を噴いていたような・・・ ドレスさん予知能力でもあるんだろうかw
[良い点] (^^;)ノ ん○ゃ~! [気になる点] 魔女様に燃え吉くんディスられる...そして魔女様は人外... [一言] 先を越されたので口から虹....やめておこう 
[一言] 巨人兵(魔女仕様) 熱線放射を発射するときの熱が集まる時の音:パパパパと音がしながら火の粉の様な物が口の中に溜まっていく
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