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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第10章 魔女様の街道工事! デスマウンテンに乗りこんだら神話の魔物みたいなことになっちゃいました
166/352

166.魔女様、氷の幽霊をやっつけたと思ったら思わぬ奴がドドドドド

「なにこれ……」


 女幽霊が消え去ると、私の頭の中に不思議な光景が現れる。

 幻術か何かの類だろうか?


 深い森の中を吹きすさぶ風、足元には雪が積もっている。

 視界の先には、さきほどの女幽霊によく似た女性がふらふらと歩いていた。


 美しい服を着ているけれど、ところどころ破けていて、靴も履いていない。

 まるで誰かに追いかけられていて、必死に逃げているような表情。

 彼女の後ろには槍を持った兵士たちの姿が見える。


 ただならぬ雰囲気。

 どうやら兵士たちはあの女の人を追いかけているようだ。



「あぁ、寒い。寒い。誰か、助けて。なんでこんなことに」


 彼女の口から洩れる怨みと嘆きの声。

 次第にそれはかすれていき、彼女は山の中腹で命を落とす。

 彼女の手にはさきほどの革のバッグが握られていた。



「ふん、死んでしまったか。我らがサジタリアスの至宝を盗み出すなど大罪人め」


「禁断の大地にまで逃げおって、この愚か者が」


 追いかけてきた兵士たちは口々に彼女をののしる。

 彼女はどうやら、サジタリアスで革のバッグを盗んできたらしい。

 そして、この山まで逃げてきたのだ。


 ずぅううん………。


 突如、兵士の皆さんの後ろで重い音が響く。

 まるで岩か何かが落ちてきたような音。


 そして、森には再び彼女の声がこだまする。

 しかし、それはさっきまでのか細い声ではなかった。



「凍らせてやる。私を追いかけてきた兵士も、何もかも!」


 死んだはずの彼女はアンデッドとなって復活したのだ。


 彼女は手に持っていた革のバッグから大量の吹雪を発生させる。



「なっ、何事だ!? どうして、あの女があれを操れる!?」


 兵士たちはどうすることもできず、その姿のまま、凍り付いてしまう。

 断末魔の悲鳴を上げることもなく、一瞬で氷のオブジェクトができあがってしまう。



「私はこの世界を許さない! ぜったいに! ぜったいに! 近づくもの、全てを凍らせてやる……!!!」


 デスマウンテンの山々に彼女の叫びが響き、次第に遠ざかっていく。

 しばらくすると、幻術はとけて私はもといた場所に立っていた。


 うぅう、何だろう、頭が痛いんだけど。



「ご主人様、大丈夫ですか!? おそらくは精神干渉でしょうね。幽霊系のモンスターがよく行う攻撃です」


 不思議な光景が見えたことを伝えると、ララがその原理を説明してくれる。

 アンデッドと言われるモンスターの一部は、人間だったころの記憶を持っていて、散り際にその記憶を他者に見せることがあるという。


 幽霊の近くにいた私はどうやらその攻撃を直でかぶってしまったらしい。




「ご主人様は魔力がありませんので、精神干渉への耐性が低いのかもしれませんね。お気をつけください」


 なるほど、こういう攻撃もあるのか。

 頭痛もするし、あんまり嬉しくない体験だった。


「魔女様、リリ様、勝ったのだよ!」


「お湯で撃退するなんてさすがは魔女様です! 攻撃の方向が違います」


 私以外に精神干渉をうけた人はいなかったらしく、皆は嬉しそうな顔をしている。

 クレイモアとハンナは嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねている。



「ふぅむ、あのゴーストの呪いも解けてしまったようじゃの」


 エリクサーは辺りを見回しながら、そんなことを言う。

 確かに先ほどまで凍り付いていた地面はすっかり緑が広がる草原になっていた。

 おそらくは、あのゴーストがいなくなったからなのだろう。



「よっし、それじゃ村に帰ろっか」


 私は皆に準備を整えて村に戻ろうと伝える。

 村人の女の子も無事に回収できたし、この上ない成果だと言っていいだろう。

 アンデッドモンスターがいなくなったとはいえ、皆が心配しているのは確かだし。



「……ちょっと、待った! 何か来るのだぞ!?」


 帰ろうとした矢先、クレイモアが叫ぶ。

 彼女は剣を取り出し、明らかに臨戦態勢に入る。


「魔女様、大きいのが来ます!」


 ハンナも何かを察知したらしく、私たちを守るように周囲を警戒する。




「ふははははは! 愚かなる人間どもよ! その小娘を渡せ!」


 しかし、敵は意外なところから現れた。

 唐突に地面がどがぁっと割れ、そこから巨大な骸骨が這い出してきたのだ。


 喋るモンスターなんて珍しい。

 こいつ、もしかして燃え吉の仲間とか、そういう類い!?


 

「や、奴はモンスターではない! 純粋たる魔族じゃぞ! ここまでわしを追いかけてくるとは」


 エリクサーが大きな声をあげる。

 純粋たる魔族!?

 お年頃の子供はとっさにすごい思いつきをするものだと感心する私。


 いや、どうみても、骸骨だけどなぁ。

 たぶん、きっとでっかい巨人が死んで、アンデッドになっちゃったやつだよ。

 


「ひぃいいいいっ!? 魔族相手なんて、私はもうダメですぅううう」


 しかし、リリはエリクサーの発言を真に受けてしまう。


 先ほどからの疲れもあるかもしれないけれど、完全に意識を失ってダウンしてしまう。

 あわわ、アンデッドなら浄化魔法をうってくれればよかったのに。

 

 ちょっとあんた、うちのリリをびっくりさせないでくれる?

 そんな思いで私は骸骨をきぃっとにらみつける。



「恐れるがいい、脆弱な人間どもよ! 我はベラリス様の配下、金剛のガイアジュラ! 100年の眠りから目覚め、再び大地を赤く染めてくれるわ!」


 しかし、私のにらみつけなどなんのその。

 リリが失神したので、骸骨はいい気分になったらしい。

 奴は何だかわからないことをペラペラと喋り始める。


 こんごうのなんとかなんて二つ名まで名乗っちゃって、自己演出が甚だしい。

 どうせそこらへんのさまよう骸骨なんだと思うけど。



「なんだかわかんないけど骨のありそうなやつが出てきたのだ! ハンナ、行くのだ!」


「骨そのものですけどね! やっちゃいましょう! いひひひ」


 クレイモアとハンナは敵の様子を伺うことすらせず、一気に飛び込んでいく。

 

 悪即斬。

 この判断の速さが彼女たちの強さの理由だとも言える。

 今まで、 その斬撃にあまたのモンスターたちが切り捨てられてきた。



「貴様らのような甘い剣など、効かぬわぁあああ!」


 しかし、その骸骨は二人の剣撃をものともしない。

 肘の部分で剣を受け止めるとそのまま弾き飛ばしてしまう。

 あの骨、思ったよりも固いみたいだよ。



「あはは! 強いのだ、こいつ! 燃えるのだっ!」


「あのボボギリと同じぐらい固いですよ! わくわくですっ!」


 無事に着地に成功した二人は嬉しそうな声を上げる。

 二人は「はぁあああ」なんて声をあげながら、骸骨との斬り合いに突入する。

 顔は思いっきり笑顔。

 なんで喜んでるんだ、あんたらは。



「ぐはは! この時代にも多少、骨のあるやつがいたか! しかし、我の姿を見て生きて帰った者はおらぬぅうううう!」


 骸骨は骸骨で、やはり頭が空っぽなやつらしい。

 奴も笑いながら嬉しそうに戦い始める。


 奴が扱うのはとんでもなく大きな剣。

 おそらく4メートルはあろうかというほどの大きさで、当たったら吹っ飛ばされるだろう。


 しかし、そんなものには物怖じしないのがうちの村の村人AとB。



「武器が大きいからって、大味すぎるのだよ!」


「骸骨野郎なんか粉砕します!」


 がぎぃいんんっ!


 辺りに金属のこすれる嫌な音が響き渡り、私は思わず耳を覆う。



「なぁっ!?」


 目の前にあるのはバランスを崩す大きな骸骨。

 私達が目にしたのはクレイモアとハンナの連携プレーだった!

 彼女たちは二人して骸骨の化け物の剣を弾き返してしまったのだ。


 いつもは何かと反目する二人だけど、こういう時には力を合わせて行動できるらしい。

 すごいよ、やっちゃえ!


 

「ハンナ! こういうやつは関節を狙うのだ!」


「りょーかいです! 頭蓋骨の割れ目も効果的かもですよ!」


 しかも戦い方も案外、クレバー。

 普段は頭のネジがちょっと緩んでる方面の二人だけど、戦いの場面となると本領を発揮するのだろうか。


「賢さレベルが上がってますよね」


 ララは真剣な顔をしてそんなことを言う。

 ひょっとしたら、戦闘のために普段は賢さを温存しているのかもしれない。

 私たちは二人の雄姿に大きな声で声援を送るのだった。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この世界に脳筋じゃない剣士っていたっけなぁ……!?」


と思ったら


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 赤熱極撃滅円環・・・ついに魔女様に必殺技が・・・w [一言] 赤熱極撃滅円環・・・ユオさんいつも間に中二病になった?wかっこいいけどw
[一言] 骸骨野郎...浄化温泉はまだ冷めてない?...つまりコイツも沈めよう                    いい出汁取れそう♪
[一言] 毎回、魔女様がやっつけるのもアレなので、ここはひとつ脳筋2人で軽く倒して欲しいものです。 まあ、2人が散らかして邪魔になる骨の残骸は魔女様に片付けていただくとしても・・・ 魔女様なら、多…
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