16.魔女様、猫耳商人にリゾート計画を話すと、なぜか投資詐欺だと疑われる
「そうだ、ララ、彼女にあの計画について話してみようと思うけど、どう思う?」
私の脳裏には、メテオに温泉リゾート計画について相談してみてはどうかというアイデアが浮かぶ。
メテオは頭の回転が速く、世間ずれしているようだ。
私達の計画を推進するにあたって、いい意見がもらえそうな気がする。
ララは無言のままコクリと頷いたので、私はメテオに例の計画書を渡す。
領地計画を赤の他人に見せるのは生まれて初めてなので、ちょっと緊張する私なのである。
「ふぅむ、これはこれは…、なるほど…、そう来たか…、うわぁ、これはすごいわ」
私の力作である『温泉リゾート㊙計画』の書類を読みながら、彼女は何度もうなずく。
その瞳は真剣そのもので、あきらかに夢中になっている感じ。
「……わかったで、完璧に理解した。裏の裏の裏までわかったで」
メテオはそう言うと私のほうに真面目な顔をして向き直る。
もともとが猫人のへにゃるんとした顔立ちだから、真剣な表情が際立つ気がする。
私はわかっていた。
彼女が私の経営計画を手放しで礼賛するってことを!
「……これは新手の投資詐欺やな。都会に住む年寄りをカモにする罪深いやつや」
「は? 投資詐欺?」
「ユオ様、いくら実家から追放されたいうてもやってええことと悪いことがあるんやで? まだ罪を犯してないし、ここが踏みとどまる最後のチャンスや。なんならうちの用心棒になるのはどないや?」
ぽんっと私の肩に手を置いて、私に犯罪行為に手を染めるなと言ってくる。
さらには冒険者にならないかという勧誘までしてくる始末……。
「なによ、それ! なんで詐欺とか言われるわけ!?」
とはいえ。
詐欺と言われた私は素で怒ってしまうのであった。
だって、温泉があるのは事実だし!
それがすっごく気持ちいいのも事実だし!!
塩も採れるし!!!
ちょっとやそっとの怪我なら治ってしまうのも事実なんだよ。
『崖から不思議な水が出てきて、それに入ったら回復したり、塩が採れたりする』
それだけ聞くと出鱈目だけど、こっちだって命をかけてやっているのだ。
投資詐欺だなんて言われる覚えは一切ない。
「そんなんいうても温泉なんて聞いたことも見たこともないものを信じられるかいな」
「あー、やっぱり珍しいものなんだ……」
そもそもの話として、メテオは温泉を知らないということだ。
様々な国を渡り歩いてきた彼女が知らないということは、かなり珍しいものだということがわかる。
「お湯に入って体力回復なんて、おとぎ話に出てくる聖なる泉やんか!」
そして、次の疑問点が温泉に入ると体力が回復するってこと。
これは確かに私も原理は一切わからない。
わからないけど、入った人がみんな元気になっているのは事実なわけで。
「しかも、そこから塩が採れる? 冗談も休み休み言わなあかんで? 塩は海から採れるんやで」
最後の疑問は塩。
現に今、彼女が食べているのも温泉から採れた塩なんだけどなぁ。
「せやから、寝言は寝ていわなあかんで? うん、まぁ、言い過ぎたかもわからんけど」
とどめを刺すようなことを言って、ふぅ、やれやれと溜息をはきながら首を振るメテオ。
彼女は片方の眉毛をあげ、その大きな瞳はちょっといじわるそうに光る。
完全にバカにされているわけでカチンとくる。
「そこまで言われる筋合いないんだけど! 温泉を知らないなんて商人として感度が低いんじゃないの?」
「ほぉ、言うたな! うちのビジネス感度は地元でも指折りなんやで?」
「ふん、どーだか? んじゃ、うちの温泉を見てみてよ!」
「ふふん、望むところや! 命を助けてもらっても、商売にかけては甘い顔はできへんで!」
売り言葉に買い言葉というのだろうか。
メテオは私の勝負に乗って、さっそく私の温泉を体験することになったのだ。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「詐欺はゼッタイだめ……!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。