表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/352

140.魔女様、アクト商会を完膚なきまでに崩壊させるも、自分のせいだとは気づきません。だって、爆破してないし

「ひぃいいいい、地震やぁああ!?」


「ユオ様が暴れるからやでぇええ!?」


 ブルーノに閉じ込められた私達なのであるが、どういうわけか地面が揺れてきた。

 メテオとクエイクの二人は抱き合って青い顔をする。

 いやいやいや、私のせいじゃないと思うけど。


 だってここ、魔法空間なんだからたかだが熱視線程度で崩れたりなんかしないでしょ。

 たぶんきっと、別のことが原因だよ。



 ごがががががが……!!


 しかし、揺れは収まらない。

 それどころか、どかんどかんと壁が崩れ始め、天井からは建材みたいなものさえ落ちてくる。




「いやや、うちはまだ死にたくない! 金貨のお湯につかる夢があるんや!」


「うちだって勝ちまくり、モテまくりしたいんやぁあああ!」


 抱き合ったまま煩悩の限りのことを言い出す二人。

 こういう時にその人の本性が垣間見えるんだよね。


 とはいえ、天井が崩れてきたら一巻の終わりかも知れない。



「二人とも私の所に来て!」


「わ、わかったぁあ!」


「ひぃいい、お助けぇ!」


 私は二人の手をとると、三人分の熱鎧をイメージする。

 これまでの熱鎧は私だけを覆っていたけれど、今回は三人分だ。


 私達を熱の鎧が覆って、危害を与えてくるものを排除する。

 そんなイメージをするのだ。


 一呼吸もすると、熱の鎧が私達全員を覆っている感覚に包まれる。

 ひび割れた天井の破片が当たっても、じゅっと音がして蒸発してしまう。


 よぉし、大丈夫!


「ジャンプするよ!」


 とはいえ、こんな陰気なところに長居なんかしていられない。

 私は足の裏に意識を集中させてジャンプしてみることにした。

 燃えキチを説得する時に開発した、あの技だ。



 次の瞬間、私達の体は一気に加速する!


 天井を突き抜けると、ばしゅんばしゅんっと何かを通過する。

 気持ちいいような、そんな気分。



「えぎゃああああ!?」


「にぎゃああああ!?」


 猛スピードで移動したからか、メテオとクエイクの悲鳴が耳をつんざく。

 そして、気づいたときには、沢山の人だかりが目の前にあった。


 あれ?

 ここって、アクト商会の外だよね?


 私達、外に出られたってこと!?



「見ろよ、どうなってるんだ!?」


 人々は何かを指差して叫び声をあげていた。

 まるで火事のときのように騒々しい。



「あれ? アクト商会ってこういうのだったっけ?」


 後ろを振り返ると、アクト商会の建物に異変が起きていた。


 所々に大きな丸い穴や、刃物で切断されたような直線状の切り口がある。

 穴あきチーズをめちゃくちゃに切ったような感じというか。


 しかも、真っ白い建物のはずが焦げてるし。

  

 地盤沈下でも起きたのか、建物の1階部分までが完全に陥没。

 建物の周辺の地面には亀裂が走っていた。



「おおぉおおい、倒れるぞぉおお!?」


「逃げろぉおおおお!」



 商館を囲んでいる人々が大きな声を上げる。



 どがぁあああああん……

 


 私達も足早にそこを離れると、10秒もしないうちに商館は崩壊してしまうのだった。

 危ないなぁ、もうちょっとで巻き込まれるところだったじゃん!?


 しかし、突然、建物が崩れるなんてことがあっていんだろうか。




 ……あ、わかった。


 これってもしかして不正建築ってやつでしょ!?


 建材が高騰しているから柱をけちったとか、そういう奴だ!


 ドレスが言ってたもん、そういうのが都会では横行しているって。


 たぶんきっと、アクト商会の建物では隣の部屋の人のくしゃみさえ聞こえてきたに違いない。



 それにしても、アクト商会の皆さんは無事なんだろうか。

 ひどい仕打ちをしてくれたけれど不運な事故に巻き込まれたのには同情してしまう。




「ぼ、ぼ、ぼ、僕の商会があぁあああああ!?」


「ブルーノ様ぁあああああ!?」


 幸運なことにブルーノ・アクトやその仲間たちは生きていた。

 白い服はどろどろに汚れていて、顔はすすだらけになっていたけど。



「お、お、お前らのせいでぇええええ!」


 彼はこちらに気づいたのか、脚を引きずりながら怒鳴り込んでくる。


 どっちかというと、怒るのは我々のほうだ。

 変な迷宮に閉じ込められたし、カマドウマと遭遇したし。

 あれはもう最悪だったんだからね!

 うぅう、思い出したくないけど、しっかり覚えているのはなんなんだろう。



「うっさいわ、ぼけっ!」


「お姉ちゃんに地獄で詫びろっ!」


 私をかばうように、メテオとクエイクが前に出る。

 彼女たちはブルーノにダブルでパンチを加えるのだった。


 ちなみにメテオは生きているよ、念のため。


「ひ、ひぶぅううう。なんで僕がぁぁあああ」


 ブルーノは情けない声をあげながら地面を転がりまわる。

 どうやら彼の防御力はだいぶ低いらしい。

 インチキ品を売ったのは悪いことだし、そこらへんは反省してほしい。




「ブルーノ・アクトとその一味! 詐欺罪・国家騒乱罪・収賄、その他もろもろの容疑で逮捕する!」


「ひ、ひぇええええ」


 さらに、場面は急展開。


 瓦礫の山の前で絶望するブルーノの前にザスーラ首都からの騎士団が現れ、彼を捕縛してしまったのだ。

 他のアクト商会の面々も無事だったらしく、どんどん捕縛されていく。


 悪事が全部、バレてしまったっていうことなんだろう。



「頼む、待ってくれ! すべて、あの化け物が悪いんだぁああああ!」


「黙れ! この詐欺師が!」


 ブルーノは抗議の悲鳴をあげるも、聞く耳は持ってくれないらしい。

 彼はそのまま縄で縛られて連れていかれるのだった。

 

 それにしても、私達を指差して化け物だなんて、どこまでも失礼なやつ。

 メテオもクエイクも、二人ともいい子だって言うのに。



「……終わったん、これ?」


「……たぶん」


 メテオとクエイクは呆然とした表情で瓦礫の山を見つめている。

 偶然、大事故に巻き込まれたからだろう。


 時間は夕方近くになっていて、赤い夕焼けが空に広がりつつあった。


 ふぅ、一応、これで一件落着なのかな。



「ふふ、メテオ、おかえり」


「ユオ様、たっだいまぁああああ!」


 私はメテオを今度こそ抱きしめる。


 がっちりと抱きついてくるメテオは目に涙を浮かべていた。

 本当に怖い目にあったんだね、かわいそうに。


 それに食事も満足に食べられなかったのか、ちょっと痩せちゃってる気がする。

 水浴びだって満足にできなかったろう。


 かくいう私だってホコリまみれだ。


 となれば、することは決まっている。


「ユオ様、これですよね!」


 クエイクは例の白い粉を出してにやっと笑う。

 さぁ、フレアさんのところで、即席の温泉を作るよっ!




◇ ブルーノの供述書



 ブルーノは捕縛後、自身の商館が崩壊したときについてこのように供述していた。


・突然、床から怪光線が飛び出し、棚に置いてあったワインの瓶が全て一直線に切られた


・次の瞬間、壁や天井に丸い穴が開いた


・何事かと手に剣を持つも、その剣の途中から消えた


・あたりに焦げ臭い匂いが立ち込め、部下たちは恐れをなして逃げ始めた


・そうこうするうちに、建物はどんどん削られていき、頑丈な柱さえも破壊された


・自分が逃げ出した直後に商館が崩壊した


※注記:以上はブルーノの錯乱による幻覚と判断



【魔女様の発揮した能力】

熱付与:魔女様と物理的につながっている相手を熱で包む。とてもポカポカする。


熱視線および熱平面(魔法結界貫通型):魔法空間の中に隔離された場合、通常では物理的な攻撃を魔法空間そのものに加えることはできない。これは魔法結界が張られているためで、これを破るためには膨大な魔力と高度な術式が必要になる。しかし、魔女様の恐怖心による攻撃はその結界を貫通し、外の世界にまで干渉する。平たく言えば、強固な魔法防御を貫通する攻撃を放つということである。チリも残さず、即死技。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「爆破してないからセーフ……!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

メイドさんの活躍する新連載スタートです! 下のURLをクリックしたら見られます

https://ncode.syosetu.com/n0699ih/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

書籍版第三巻が発売中です。
l017cqekl6nkc64qf50ahkjj6dry_vk2_dc_ix_7qao.jpg

コミカライズ版第1巻が発売中です。

g2opjx6b84b9kixx3rlfe0tedyf_1b5q_dc_iy_2tr1.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] まあ史実でも金に寝転がった戦国武将が居るから金貨風呂はセーフ モテまくりたいも人の欲としてはまあ真っ当なのでセーフ でも爆破じゃなくてもアウトだよ!w
[一言] 某広告の紙幣風呂ならともかく、金貨風呂を掻き分けて入るのはちょっとムリじゃないかな? 身体入れるだけでも大変だしクソ重いし。
[一言] ブルーノさん体に大穴が空かなくて良かったねw まさに「生きてるだけでまるもうけ でもこれってフレアさんの筋書き通りですよね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ