138.アクト商会、突然のビビッド商会の攻勢に手も足も出ません。だけど、一発逆転の奇策を思いつきました!
「何をやってるんだ! 貴族どもに金をばらまいて、販売禁止にさせろ!」
あ、あ、ありえないことが起きている。
あの悪名高きビビッド商会が特効薬に参戦してきたのだ。
しかも、著しく安い値段で。
このままでは高値でさばいていたものが売れなくなる。
僕の儲けが吹っ飛んでしまう。
僕の連合国首相への道が遠ざかってしまう。
僕は各地域の権力者に連絡を入れて、販売を止めるように強く伝える。
いくらビビッド商会が悪辣な手を使っても、所詮はぽっと出の成り上がり商会だ。
アクト商会は先祖代々、各地の貴族と商売をしてきた。
有力者からの信用は遥かに上だ。
案の定、数日もしないうちに奴らの販売はストップする。
ふくく、これが信用の力というものだ。
「ブルーノ様、冒険者ギルドがやつらの薬を本物と認定しましたぁああ!」
しかし、奴らの卑怯な攻撃は止まらない。
ビビッド商会は冒険者ギルドとつながって、『本物』と保証を受けてしまう。
くそっ、冒険者ギルドめ、なんて恩知らずな奴らだ。
これまでいくら金をばらまいてやったと思っている。
ついこの間も、冒険者ギルドに上がってきた『禁断の大地に聖域草の群生地がある』というデマ情報を握りつぶしてやったというのに。
「ブルーノ様、各地域からぞくぞくと離脱が出ております!」
冒険者ギルドが裏切ったおかげで、貴族の中には僕の指示を聞かない連中も出始める。
大局の読めない愚か者どもめ!
この騒ぎが収まったら、ぶっ潰してやるからな!
「ゆ、許せない……!! 僕をコケにしやがって! 銀魔の10人にやつらの荷馬車を襲わせろ! 徹底的にやれ!」
こうなったら本領発揮だ。
商会の子飼いの裏工作軍団である銀魔の10人にビビッド商会の荷馬車を襲わせるのだ。
連中はこれまでにも沢山の表では言えない仕事をしてきた。
犠牲者の第一号は首都に向かってやってきた荷馬車だ。
その馬車には、「造れ! 送れ! 撃て! とっこうやく販売中!」とのぼりがつけられていた。
まるで狙ってくださいと言っているようなものだ。
くくく、愚かなやつらだ。
ビビッド商会には影の十人という凄腕がいるのは知ってる。
だが、うちの銀魔の10人は実際には47人もいる。
戦いは数だ。
うちの銀魔が負けるはずはない。
あわよくば、ビビッド商会の特効薬を奪うのもいいアイデアだろう。
そうだ、ビビッド商会の在庫を全部奪ってしまえばいい。
さすが、僕、ブルーノ・アクトは天才だ!
「ブルーノ様ぁあああ、銀魔の連中が全員、やられましたぁあ!」
「はぁああああ!? 影の10人にやられたのか!?」
「いいえ、鬼のように強い金髪の少女一人に蹴散らされたそうです!」
「な、なんだそれはぁああ!?」
「笑いながら戦う悪鬼のような少女の前に失神したそうです!」
「ぬぉがぁあああ!?」
執務室でほくそ笑んでいると、部下が血相を変えて飛び込んでくる。
僕の銀魔の10人が商会に担ぎ込まれたというのだ。
命に別状はなかったものの、トラウマのためにもはや戦えない状況だと言う。
どうして、50人近い猛者たちが一人の少女にやられるのだ!?
くそっ、ビビッド商会め、化け物でも飼っているというのか!?
「ブルーノ様、私達の商館が平民どもに囲まれております! ものすごい数です!」
さらに事態は悪い方向へと加速する。
これまで僕が薬を売ってやってきた連中が「金を返せ」だの「インチキ野郎」だの抗議にやってきたのだ。
涙を流すほど感謝して買っていったくせに、何を言ってるんだ、こいつらは。
「ええい、黄金の騎士団を出して蹴散らしてしまえ!」
イライラが募った僕は商会の私兵団である<<黄金の悪夢>>を投入する。
各国の騎士団から凄腕たちを引き抜いてきたオールスター軍団。
もちろん武器も防具も一級品。
どんな相手でも踏み潰す、強靭な騎士団なのだ。
はっきり言って、ザスーラ首都の騎士団よりも強力に違いない。
いくら数が多くても、所詮、相手は平民。
身の程知らずの平民など、簡単に追い返せるはず。
多少、殺してしまってもしょうがないだろう。
獅子に歯向かった報いをうけるがいい!
これで少しは僕のうさも晴れるというものだ。
「ブルーノ様ぁぁあああ、黄金の悪夢が全員、やられましたぁああああ! 半殺しです!」
「んがぎぃ?」
騎士団を投入して十数分後、部下は真っ青な顔をして飛び込んでくる。
なんと、僕の黄金の騎士団が壊滅させられたのだ。
さっき送り出したばかりだぞ。
ほとんど瞬殺されているじゃないか。
「そ、それが素手の相手にこてんぱんにやられた模様です! 身ぐるみ剥がされて縛り上げられています! 半裸です!」
「な、な、な、何が起こってるんだぁ!?」
もはや現実が信じられないほどの状況だ。
僕の騎士団が素手の庶民にやられただと!?
脚が震え、喉の奥が乾き、頭がくらくらしてくる。
騎士団を壊滅させた平民共は商館をぐるりと囲い、わぁわぁと声をあげる。
やばいぞ、このままじゃ火でもつけられかねない。
僕の商会が終わってしまうぅううううう!?
「平民共は『姉を返せ』と『許すまじ、アクト商会』などと世迷い言を叫んでいます! どういうことですか、これは!?」
部下は恐怖の張り付いた顔でそんなことを言う。
うぅう、姉を返せ?
どういうことだ!?
……も、もしかしたら、あの牢屋にいる猫人のことか!?
ええい、あの女め、とんだ疫病神になってくれたな!
僕は商会が壊滅するのをなんとか回避すべく、ビビッド商会に急いで伝令を送る。
あの猫人を返却してやると伝えるのだ。
「くそっ! くそっ! くそがあああああぁぁぁっ!」
僕のはらわたは煮えくり返っていた。
僕を罠にはめて、特効薬の商売を滅茶苦茶にしてくれたことに。
さらには平民どもを操り、僕の商館を襲ってくれたことに。
僕らはただ正直でまっとうな商売をしているだけなのに。
ビビッド商会はなんて最低最悪の集団なのだろうか。
このまま邪悪な奴らを放っておくことが許されるだろうか?
答えはノーだ。
天誅を加えなければならない! この僕が!
「……くくく、あの猫人を迎えに来たら、そいつらを人質にしてやろう」
僕の脳裏に最高のアイデアが浮かぶ。
よぉし、この策略でフレアを震え上がらせてやる。
僕たちの戦いは始まったばかりだ!
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「くそっ、何周してもブルーノの破滅を止められない!?」
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