130.魔女様、メテオが例の粉で捕まったんじゃないと知って安堵する
「ま、魔女様! お姉ちゃんが捕まってしまいましたぁああああ」
聖域草の丸薬をいざ売り込むよ! と思っていたら、これである。
なんとメテオがザスーラで捕まってしまっというではないか。
クエイクはシュガーショックにしがみついて村まで帰ってきたという。
ああぁ、恐れていたことがついに起きてしまった!
「あんのバカ、裏でこそこそ白い粉でも売りさばいたんでしょ?」
そう、メテオが捕まる理由なんて一つしかない。
それはクエイクが開発した、温泉を再現する白い粉だ。
発表会のときも、彼女はやたらとあれに執着していた。
たぶんきっと怪しい奴だと思われたに違いない!
『うひひ、最初の一回目は無料やで? 友達にも声かけといて』
などと言いながら売りつけたのだ。そうに違いない。
「いや、あの、アクト商会の街で聖域草を持っていただけで捕まったんです……」
「あ、そうなの? ごめん……」
違ったらしい。
盛大に邪推してしまい、気まずい空気が私達の間に流れる。
そっかぁ、白い粉じゃなかったのか。よかったぁ。
聖域草で捕まったんなら、しょうがない……?
いや、そんなわけないじゃん!
「聖域草持ってただけで捕まった!?」
「そうなんです。実は……」
クエイクは事の顛末を詳しく教えてくれる。
アクト商会は聖域草を禁制品として扱っていて、メテオはそれを盗んだと勘違いされたとのことだ。
「これはまずいですね。せっかく、聖域草の活用法がわかりましたのに……。それにメテオ様にはたくさんのお仕事が残ってるんですよ? これじゃ肩こりがさらにひどくなります」
突然の事件発生に皆の顔が曇る。
特に一緒に仕事をすることの多いララはいつになく不機嫌だ。
「あ、あのぉ、ユオ様、ララさん、やたらとセクシーなのはどうしてですか? ぱっつぱつですよ? 肩こりの原因は別のところにあるんじゃ……」
「あぁ、それはね……。まぁ、いつか教えるから後にしようね」
「えぇええ、生殺しですやん、それ!?」
クエイクはララの体型の変化について聞いてくる。
だけど、今はそれについて掘り下げてはいられない。
そう、まずはメテオを無事に取り戻すことだ。
別に私の体型が変わらなかったことに怒ってるわけじゃないよ。
「このままじゃ、お姉ちゃん、盗人として処刑されちゃうかもですよ! まぁ、うちの姉はあぁ見えて、交渉上手なのであーだこーだ立ち回るとは思いますけど」
クエイクが言うには有罪が確定した場合には最悪の可能性さえあるとのことだ。
今朝、捕まったばかりで裁判はまだだろう。
だれど、一刻を争う事態なのは間違いない。
「そんなの簡単なのだ! 黒髪魔女様が敵の牢屋をいつもみたいに爆破すればいいのだ!」
「それはいいアイデア……。いや、それはアウトでしょ!」
クレイモアは意気揚々とそんなことを言い、私も危うく賛同しそうになる。
だが、他の領主の牢屋を爆破なんてした日にはうちの領地は完全に終わってしまう。
おそらくはザスーラ全体を敵に回すし、信用はゼロどころか地面深くに潜ってしまう。
最悪、連合軍みたいなのに討伐される可能性だってある。
っていうか、いつも爆破しているみたいな言い方をされるのは非常に心外だ。
うーむ、困ったぞ。
「……考えたんですけど、うちのオカンに頼んでみるしかないと思います」
「お母さんに!? メテオが会いに行くって言ってた人に!?」
「えぇ。うちのオカンはかなりの有力者なんです。魔女様ならいけます! お願いします、お姉ちゃんを助けてください……」
クエイクはそう言って気を失ってしまう。
どうやら張り詰めていた心の糸がこのタイミングで切れてしまったのだろう。
彼女は姉を思う一心で過酷な道を越えてきたのだ。
その頬は涙で濡れていて、私の胸をぎゅっと締め付ける。
「わかったわ。アクト商会だろうと、ビビッド商会だろうと、相手になってやるわ!」
そして、私は決意を固めるのだ。
まずはビビッド商会に赴き、協力を取り付けることを。
メテオは私の温泉リゾートに欠かせない存在だ。
こんなことで失うわけにはいかない。
そして、何より、私の大切な友人なのだ。
こんなことで終わりになるなんて、絶対に許さない!
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「白い粉(温泉の素)は合法です!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。






