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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第8章 魔女様の冒険者ギルド誘致! 村の近所にダンジョンが見つかり、魔女様は14日ぶり8回目の大暴れ
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124.魔女様、火の精霊を村に勧誘するも、いたぶっていると勘違いされる



「ひ、ひぃい、どうして私を触れるのだぁあああああ!?」


 手のひらでがしっと火の精霊を捕まえた私なのである。

 やつは驚いているけど、知ったこっちゃない。

 

 よぉし、これから勧誘タイムだ!



「……ご主人様、終わりましたか?」


 そう思っていたら、後ろから聞き慣れた声がする。


「え!? ララ!? みんなも!?」

 

 ララを始めとして、ハンナやクレイモア、ドレスの姿が見えるではないか。

 理由はわからないけどハンスさんもいる。

 みんなはシュガーショックに乗って、ここまで飛んできたようだ。


「大きな音がして面白そうでしたので飛んできました。ご主人様の暴れっぷりが最高でした」


「魔女っ子が大暴れで羨ましいのだ! あたしもダンジョンに潜るのだ!」


「本当に感動しましたぁ! 私も貫手ぬきてで岩を破壊できるようにがんばります!」


「魔女様、溶岩の化け物の素材はさっそくもらっていくぜ!」


「ひ、ひ、ひ、ひぃいいいい、ば、化け物ぉ」


 皆はそんな感じで思い思いの声をあげる。

 考えていることがバラバラすぎる。

 

 それにしても、ハンスさんはどうして連れてこられたんだろうか。

 顔面蒼白で子犬のように震えているし。


 彼は溶岩の化け物を目撃して怖がってるんだろう。

 大きかったもんなぁ。


 ハンスさんは一人で震わせておくとして、私は経緯を話すことにした。


 ダンジョンの入り口を封鎖する音で、この火の精霊の目を覚ましてしまったこと。

 寝起きが悪いやつで大暴れしたから、とりあえず小さくしたことなどなど。

 手のひらのこいつが火の精霊であることも。



「ね、寝起きとかの問題ではない! 私は誇り高き災厄の眷属、火の精霊ラヴァガランガだ! さぁ、一思いに殺せ!」


 私の手の中にいる精霊はカエルみたいな見た目でそんなことを言う。

 ふぅむ、私はこいつを説得したいだけなんだけどなぁ。



「あんたさぁ、そもそもどうして人間を目の敵にしてるわけ?」 


「ぐむむ、それには深い理由が……」


 火の精霊は遠い目をして、「あれは私が生まれて間もなくのこと……」と話し始めようとする。


 話が長くなりそうな予感。

 言っとくけど、私に時間はない。

 さっさと村に帰って温泉に入るという重大な用事がある。


 自分で聞いておいてなんなのだが、そもそも寝起きの悪い理由を聞いてもしょうがない気がしてきた。

 どうせロクでもない理由な気もするし。



「いや、やっぱりいいわ。昔のことなんかほじくり返してもしょうがないし。大事なのは今よ!」


「ええええぇ!? い、今!?」


「そう。今だけが一番だいじなのよ。いい? あんたの目の前には二つの選択肢があるわ」


 私はそう言うと、精霊の前に指を二本差し出す。


「一つは暗くジメジメしてモンスターがたっぷりでカビ臭いダンジョンの奥で、しくしく泣きながらだらだら暮らす」


「……もう一つは?」


「2つ目は明るくてさっぱりしていて快適で三度の食事とおやつもついて、昼寝までできて親切な村人のいる私の村で笑顔で暮らす。さぁ、どっち?」


「そこから選べと?」


 そう、私はこいつを勧誘するのが目的なのだ。

 過去のわだかまりをほどくよりも、今の精霊の気持ちを大切にしたい。

 

 つまり、うちの村に来るのか、来ないのかということだ。



「ご主人様、あまりにも選択肢が誘導的な気がしますが……」


「魔女様、目が怖いですぅ」


「えげつねぇぜ。魔女様……」


 ララとハンナとドレスは微妙な顔をしているが、事実は事実。

 ダンジョンと私の村では天と地ほどの開きがあるし。


「私を!? 私をお前たちの村にだと!? 私はお前たちを殺そうとしたのだぞ?」


 火の精霊は驚いたような声を出す。

 確かにこいつは暴れたけれど、別に大した被害は出ていない。

 

 ちょっと周辺が焼き焦げて穴だらけにはなってるけど。



「あー、はいはい、そういうのいいから。心を入れ替えて来るのかどうかよ」


「わ、私は……」


「言いたいことは、わかった。つまり、迷っているってことは本心では村に来たいってわけね?」


「え? えーと、そういうわけでは、あの」


「照れなくてもいいわ。昔から言うじゃない? 迷ったらリスクの高い方を選べって。飛び込んでみたいんでしょ?」


「いや、あの、私はだな、死の精霊として恐れられ……」


「強がらなくても大丈夫。うちの村が馴染めなかったらダンジョンに戻るのもありよ。それならいいよね?」


「え、ええ、ちょっと待ってくれ。心の準備ができてないというか」


 火の精霊はあーだこーだ言うものの、その心は「村に来たい」一択のようだ。

 さっきまで「くかかか」なんて恥ずかしい笑い方をしてたくせに、実はシャイだったらしい。


 それなら、背中を押してあげるのが私の役割ってものよね。



「それと、あんたの口調も気になるのよね。そもそも、あんたが「私」って自分のことを呼ぶのもピンと来ないし。……おいら、もしくは、おれっち、ね。語尾はやんす……かな」


「お、おいら? おれっち? やんす?」


「そう。人間社会に溶け込むためには何事も形からよ。こまっしゃくれた精霊に未来はないわ」


「な、何事も形から? 人間の世界とはそんなものなのか?」


「できる範囲で頑張ってね」


「ええええ!??」


 火の精霊はぷるぷると震え始める。

 きっと人間の村で生活するのに不安を感じているのだろう。


 そもそもラヴァなんとなかっていう名前も長すぎるよね。

 後で愛称を考えてあげることにした。


 うちの村に来るのが決まったとは言え、大事なのは次の用件だ。

 私は一呼吸置いて続ける。



「でもねぇ、うちの村って発展途上だから、みんな働かなきゃいけないんだよねぇ〜」


「働く? この私が? いや、おれっちが?」


「そぉなのよねぇ。例外なく働くのよねぇ。私以外は週休二日制で働いてるの」


「わ、私を本当に迎え入れてくれるのだな? 仕事を与えてくれるのだな!? ほ、本当に? 冗談ではなく?」


「最初からそう言ってるじゃん」


 精霊はそう言うと、3つの目から涙を流し始める。

 その涙はどういうわけか体に触れても蒸発しないらしい。

 不思議な現象に見とれてしまう。



「……いや、その、なんというか私を消す前にいたぶっているのだと思っていた」


「はぁ? 私がそんなひどい人間に見える?」


「ぐ、ぐむむ。申し訳ありません。私に仕事をくれるなんて……」


 火の精霊は『仕事』という言葉に過敏に反応したらしい。

 ふうむ、大昔、何かあったのかも知れないなぁ。

 でもまぁ、昔のことは気にしないのが私なのである。



「それじゃ、ドレス、この子の面倒は工房で見てあげて」


「へ? あっしが? こいつをですか?」


 突然、話を振られたドレスは目を白黒させる。

 しかし、私は見抜いていた。


 ドレスの工房なら火の精霊は十二分に力を発揮してくれることを。


「ふふふ、この子、魔石を食べると燃えるのよ。意味分かるわよね?」


「燃える? ってことは、かまどが作れる? 溶鉱炉も? よっしゃあああ!」


 私の言いたいことが腑に落ちたドレスは両手を天に突き上げる。

 彼女は二つ返事で火の精霊を自分の工房に迎え入れるのだった。



「えぇー、あたしの食堂にもほしいのだ。クッキーとスコーンの火力調整にほしいのだ!」


 しかし、思わぬ伏兵がクレイモアだった。

 確かに食堂のオーブンにも火の精霊は欲しい人材。


 私だとそこまで上手く火力調整ができないから。



「ふふふ、魔女様はあっしにこの人材をくださったんだ。あっしの目には精巧なガラス細工が見えてるぜ」


「今からでも取り消してもらうのだ。熱々スコーンを作るのだよ!」


 いがみ合う二人。

 お互いともに譲れない何かを抱えてるようだ。


「二人とも仲良くしなさい。とりあえずドレスの所にいて、たまにクレイモアの所で働けるようにするから」


 取り合いになりそうだったけど、なんとか丸く収める。

 人材を巡って喧嘩することは馬鹿みたいだし、職場をたまに変えたほうが火の精霊にとってもいいかもしれない。



「それじゃ、村に帰るわよ! 撤収!」


 ふぅっと息を吐く私。


 ふふふ、これで全ては丸く収まった。

 聖域草の群生地とか大発見は色々あったけど、することは決まっている。



 それは温泉に入ること!

 

 焦げ臭くなった体を速攻でさっぱりさせたい。


 そして、あそこで震えているアリシアさんにも温泉に入ってもらうのだ。

 今度は絶対に逃さない。

 温泉のすごさを経験してもらわなきゃね!



◇ アリシアさん、震える(通算6回目)



 私は聖域草の群生地を発見して大喜びする。

 だけど目の前に溶岩の巨大な化け物が現れて、剣聖さんとコラートさんを蹴散らす。


 私は死を覚悟した。

 この村に来てから何度目かわからないけど。

 

 その化け物を村の領主様はいとも簡単どころか、まるでおもちゃみたいに扱った。


 溶岩の化け物を燃やすし、穴をあけるし。

 炎が直撃しても服さえ焦げてないし。


 そして、特筆すべきは髪の毛の色。


 彼女がなんらかの能力を使う時、ぴかっと赤く光るのだ。

 まるで燃えるような赤い光の筋が髪の毛に浮かび上がる。


 この人、本当に灼熱の魔女なんじゃないの?

 

 もし、そうなら、聖域草どころの騒ぎじゃない気がする……。



 彼女はあのラヴァガランガを


「それと、あんた」


「な、なんですか? なんでやんすか?」


「工房で暴れたら火傷させるわよ?」


「ひぃいいいい」


 なんてふうに脅していたし。


 うぅううう、冒険者ギルドになんて報告すればいいんだろう……。


【魔女様の手に入れた人材】

火の精霊:とある災厄な人物が作り出した精霊。魔石をとることで力を拡大する。大昔に暴れてしまったが、今では魔女様の部下として工房で働くことになった。名前については未定。ララは「三つ目火の玉野郎」とつけたいと提案するが満場一致で却下される。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「やっとアリシアさんが温泉だぁああああ!」


勧誘きょうはく……!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ランガ、君の勇姿を忘れない...。ナムナム...。え、死んでない。? [気になる点] あ、昼間に書いた自分の感想に一部誤り。魔力ゼロは魔女様。戦闘力ゼロはリリアナ嬢。と自分の感想に誤記報告…
2021/12/20 18:54 通りすがりの人
[良い点] 〉さっさと村に帰って温泉に入るという重大な用事がある。 そう言う問題じゃ無いのに「らしい」と思っちゃったww
[一言] 見事に人材(生贄)を勧誘(脅迫)出来た魔女さまであった!w
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