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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第8章 魔女様の冒険者ギルド誘致! 村の近所にダンジョンが見つかり、魔女様は14日ぶり8回目の大暴れ
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121.魔女様、悪趣味極まるあいつが出てきました! それでも、心優しい魔女様は眠りを妨げたことに罪悪感を感じます



「魔女様、あれを見てください。ハンナたちがやってくれたようですぞ」


 ダンジョンを防ぐバリケードが完成したぐらいのタイミングだった。

 村長さんは村の方角の空を指差す。


 そこには白い煙が立ち上っていて、作戦成功のサインだと分かる。


 よかったぁと胸をなでおろす。


 ハンナもクレイモアも無事でいてくれるといいんだけど。


 ……あれ?

 

 そう言えば、リリとメテオはどうなったんだろう?


 ハンナたちは「大丈夫、私達にお任せください。安全に崖の上に戻ってもらいます」って言うだけだった。

 あの二人って実はすごい運の持ち主だし、なんとかなるよね。




「ユ、ユオ様、こちらに来てくださぁああい!」


 遺跡の周辺を見回っていたアリシアさんの声がする。

 悲鳴に近い高い声で、緊急事態みたいだ。

 コラートさんが護衛にいるはずだけど、万に一つのことがあったのかもしれない。

 モンスターが潜伏していた可能性もある。


 私たちは慌てて、アリシアさんのもとに駆け寄るのだった。



「こちらです!」


 アリシアさんがいたのは崖にできた亀裂のところだった。

 人間がちょうど通れるぐらいの大きさ。

 どうやらモンスターが崖にぶつかって割れてしまったらしい。


「こ、こちらにどうぞ!」


 その亀裂はトンネルのようになっていて、その先には開けた空間ができていた。

 アリシアさんは開けた所に手招きする。


「あうあうあう……」


 アリシアさんは棒立ちでぽかぁんとした表情をしていた。

 コラートさんは困った顔をして眉間を押さえていた。


「うわぁ、すごい花ですね」


 足元には黄金色の花がたくさん咲いている。

 見渡す限りの一面のお花畑である。


 って、わざわざお花畑を見せたくて呼んだんだろうか?

 そりゃあ、私だってお花畑は好きだ。

 暇さえあれば花かんむりだって作りたい。


 しかし、アリシアさんも随分乙女チックな人だなぁ。

 


「違いますよ! ユオ様、これ全部、聖域草ですよ!」


「へ? これ全部?」


「全部です! これだけあれば、病気の人がみんな回復するかもですよ!」


 これには驚いた。

 アリシアさんが採取した幻の植物が繁殖していたのだ。


 そう言えば、村で現物を拝見するのを忘れていたのを思い出す。

 へぇえ、これがその聖域草だったのか。



「ふぅむ、種が飛んできたんじゃろうかのぉ。珍しい」


 村長さんも驚いたような顔をしている。

 なかなか育たない植物らしいけど、この崖の空間にはもっさもさと生えている。

 雑草に近い生え方で崖の壁面からも生えていた。


 黄金色の花はそよそよと風に揺れて、蝶たちがふよふよと舞っていた。

 甘い花の香りが鼻をくすぐる。

 ちょっと香りが強すぎる気もするけど、香水とかにするといい香り。

 

 気持ちがよくなった私はちょっと眠くなるのを感じる。



 そんな時だった。



 どっがぁあああああああんっ!


 耳をつんざくような爆発音が背後からするではないか。



「魔女様、遺跡で何かあったようですぞ!」

 

 そう、轟音はさきほど封鎖した遺跡の方向からだった。 

 ちょっとぉお、せっかく塞いだって言うのにトラブル発生!?


 私達は慌てて、封鎖した遺跡に向かう。

 



「な、何よ、あれ!?」

 

 そこにあったのは黒くて大きな腕だった。


 遺跡の入り口から、人間ほどもある腕が出てきて、あろうことかバリケードを破壊していたのだ。

 

 その腕は真っ黒い色をしているけれど、ところどころが赤く光っている。


 しゅおぉーっと白い蒸気を吹き出しているところ見るに体の温度が高いのだろうか?


 遺跡にいたモンスターはあの岩の化け物に押し出されたのか、あたりに散らばってぴくぴくしている。



「ひぃいいいいいい!?」


 バリケードを作っていた村人やドワーフの面々は慌ててこちらに逃げてくる。

 

 あ、あれって何?


 もしかして、ダンジョンの主とかそういうの?



「……ふぅむ、起きてきてしまったか、難儀じゃのぉ」


 村長さんは険しい表情で眺めながら、ポツリとつぶやく。

 あれが村長さんの言っていた、ダンジョンに眠っている化け物なんだろうか。


「ひいっ、もっと出てくるぞぉっ」


 ずるずるっと這い出るようにして、ダンジョンの入口から真っ黒い巨体の化け物が現れる。


 よぉく見ると、その黒い体は岩らしきものでできている。

 ところどころが赤く光り、頭らしきところには3つの赤い目が見える。

 口らしきものもみえるけど、どれもこれも赤くて趣味が悪い。


 大きさから言っても、明らかに尋常の怪物ではないことが窺える。



「私を起こしたのは貴様らかぁあああ?」


「しゃ、喋った!?」


 これには驚いた。


 モンスターは喋らないものだと私は思い込んでいたからだ。

 いっつも、ぐがぁあとか、ごげぇええとかばっかりだったし。

 怪物は知能が低いものだと思っていたよ、ごめんなさい。


 その真っ黒いモンスターは蒸気を上げながら、私達に向き直る。

 それだけで、ずしぃんっと地響きがする。

 とんでもなく重いのだろう。



「もう少し寝ていてくれればよかったんじゃがのう!」


 村長さんはそう言うと剣を抜いて切り込んでいく。

 

 ものすごい身のこなしで、怪物の首を急襲!


 がぎぎぎぃんっと金属の擦れる音!


 しかし、その怪物には傷一つついていない。



「くかかかか! 人間どもよ、この怒りと恨み、晴らさせてもらうぞ」


 化け物は両腕を振り回して、村長さんをはねのける。


 村長さんはひらりと地面に着地して、ちぃっと舌打ちをする。



 相手はどうやら私達に対して恨みを感じているらしい。


 ひょっとして、ダンジョンの入り口で工事をしていたのが気に食わなかったのかも知れない。


 確かに寝床で騒がれるっていうのは不快だよね。


 私も今朝は地震に叩き起こされたけど、頭がぼぉっとしてちょっとイライラしていた。

 だから、気持ちはわかる。

 

 しかし、相手が喋れるのなら、話し合いで解決できる可能性もあるかも知れない。

 村長さんもモンスターも喧嘩腰で行くのではなくて、誤解を解く努力をすべきなんじゃないかな。



「貴様らに私の怒りがわかるか! 地の底で眠り続けていた私の怒りが!」


 化け物は眠りがどうとか、怒りがどうとか言っている。


 やっぱり私の思ったとおりだ。

 眠りを妨げたことが相当、癪に障ったらしい。



「せっかく聖域草が見つかったのにぃ、あわわわわ……」


 アリシアさんは岩陰に隠れて、がたがたと震える。

 そりゃそうだよね。

 ダンジョンから突然、岩の塊の化け物が出てきたんだから。


 しかも、相当、寝起きが悪いらしく、めちゃくちゃ怒ってるし。


「ひぃいい、あれは寝起きとかいう問題じゃないですよぉおお!?」

 

 アリシアさんはそう言うけれど、あれは眠りの問題だと思う。

 化け物とはいえ、眠りを妨げられることほど怒りを買うことはないんじゃないかな。


 そろそろ眠れそうだなぁってときに起こされたのかも知れない。

 あれは相当キツい。



「魔女様、わしに任せて逃げてくだされ! こやつは村を襲いに来ますぞ!」


「剣聖様、私も加勢いたします! 怪物め、私の屍を越えていけ!」


 村長さんとコラートさんは剣を構えて、臨戦態勢に突入する。

 

 えぇえ、ちょっと待ってよ!


 あの喋れる化け物と話しあってみたいっていうのに。



「魔女様、ハンナに強く生きるようにお伝えください」

 

 しかも、村長さんがそこまで言う相手なの!?

 あの木の化け物と戦ったときも、村長さんは諦める様子はなかった。


 この岩の化け物はあれ以上ってこと!?

 

「ぐはは! よく言った! 私を止めてみよ!」


 岩の化け物の寝起きは大ぶりのパンチを村長さんに放つ!

 化け物の体はますます大きくなり、拳だけで掘っ立て小屋ぐらいの大きさだ。

 

 あんなものに当たったら、普通は死んじゃうよ!?



「甘いわ! 斬鉄斬!」


 しかし、村長さんは伊達じゃない!


 間一髪で攻撃を避けると、相手の腕に強力な一撃を喰らわせる。

 

 ずぅんっと重い音ともに、岩の化け物の片腕が地面に落ちる。


 すっごぉい!


 しかし、勘違いから思わぬ戦闘になってしまった。


 どうやったら止められるだろうか。

 あいつに眠りを妨げる意思はないことを伝えたいけれど、言葉はもう届きそうにない。

 やはり人間と怪物は相容れない関係なのだろうか。



「ほほう、この時代にも活きの良いやつがいるようだな。しかし、お前ら人間とでは命のあり方が違うのだ! かかかか!」


 怪物はそう言うと、肩からいくつかの小さな腕を発生させる。

 うにょうにょと動く黒い触手のようなもの。


 うげげ、キモチワルっ。


 ……うーむ、こんなやつと対話して問題解決っていうのは難しいかな?

 

 私の心の中に諦めという感情がむくむくと湧き起こる。


 しかも、何がしたいのか、その小さな腕で周辺にうずくまっていたモンスターを襲うではないか。


 ぐぎぃいい!?

 うぎぎ!?


 モンスターたちの悲鳴があたりに響く。

 その異様な光景に私達は思わず唾を飲む。


 な、なにがしたいわけ?



 次の瞬間、私は信じられないものを目撃する。


 モンスターが燃えたのだ。


 しゅおぉーっと青い炎を出しながら灰になっていくモンスターたち。

 


「ぐははは! いいぞ、いいぞ!」


 岩の化け物は嬉しそうに笑い声を上げ、さらに他のモンスターを灰に変えていく。


 その声はまるで子供のように無邪気なものだった。

 

 あいつ、モンスターを燃やすのが趣味なの?

 


 ……趣味悪くない?


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「あれ? 死霊ドラゴンの群れを一瞬にして灰にした人がいた気がするんですが……」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] おやすみ中失礼しました。 こんどは永眠をプレゼントしますね。
[一言] 趣味とかそんな次元の話じゃ無いんだよなぁ… 魔女様の天然は何処まで進化するのだろうか...( = =)
[一言] 焼滅させてたらOkなのかな?
感想一覧
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