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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第8章 魔女様の冒険者ギルド誘致! 村の近所にダンジョンが見つかり、魔女様は14日ぶり8回目の大暴れ
117/352

117.魔女様、「ダンジョンなんて爆破しちゃばいいじゃない? うちの村には温泉があるんだし」とこともなげに言う。「それはやめて」と仲間たちは必死に止める。

「ご主人さま、ご無事で何よりです! それにしても大変なことになりましたね」


 村に帰還すると、みんなが集まってくる。

 みんなワクワクした表情で、興奮を隠しきれないという感じだ。

 私はまだいまいちダンジョンのすごさにピンときていない部分もあるけど、みんなが喜んでいるならよしとしよう。


「これから忙しくなるで! うち、興奮してきた!」


「私ももっと頑張ります!」


 メテオもリリも嬉しそうに声をあげる。

 

 冒険者ギルドの2人が遭難した時にはびっくりしたけど、怪我の功名っていうやつなんだろうか。


 とはいえ、盛り上がっているのは私たちだけで神妙な顔をしている人達もいる。



「皆さん、私たちの話を聞いてください!」


 それは冒険者ギルドのアリシアさんとコラートさんだった。

 二人は眉間にシワを寄せて泣き崩れそうな顔をしている。

 彼らにとってダンジョン発見というのは喜ぶべきことなんじゃないだろうか。


 何かあったのかな?



「あのぉ、皆さん落ち着いて聞いてください。ダンジョンが見つかったときに、あることが起こると言われているんです」


「あること?」


「ま、魔物のスタンピードです」


「スタンピード?」


「はい。これまで閉じ込められていた魔物が一気に表に出てくることなんですけど……」


「何十年も閉じ込められていたのなら、その規模は非常に大きくなると予想されます」


 アリシアさんたちはスタンピードという現象について詳しく教えてくれる。

 魔物が大量発生し、群れで襲ってくることを言うらしい。


 禁断の大地のダンジョンなので、より強力なモンスターがあふれる可能性もあるとのこと。


 ふぅむ、さっきの牛男程度の群れなら村長さんやシュガーショックとかで片付けられそうな気もするけど……。



「それがスタンピードで真っ先に狙われるのは近くに住んでいる村や街なんです」


「え?」


「たくさんの村や街がダンジョンが発見された直後に滅んだことが記録に残っています」


「村が滅ぶ?」


 魔物が大群をなして行進してくる様子を想像して、背筋がちょっと冷たくなる。


 うちの村は腕利きのハンターがいるとは言え、人口のほとんどは農民たちだ。

 温泉のおかげでマッチョになったけど、自衛能力が格段に高いというわけではない。

 この村にまで攻め込まれちゃったら、一巻の終わりかもしれない。




「ご、ごめんなさぁああああい! 私が、私達が悪いんです!」


「本当に申し訳ございません!」


 私達が微妙な顔をしていると、冒険者ギルドの二人はどういうわけか土下座をしてくる。

 しかも、頭を床にしっかりとこすりつけるタイプのやつを。


「えぇえええ、ちょっとどうしたんですか!?」


 当然のことに困惑する私。

 訳がわからないので落ち着かせて話を聞くことにした。


「実はあそこに聖域草が生えていて、結界だと知らなくて抜いちゃったんですぅ」


「領主様、私が悪いんです! アリシアさんをそそのかしたのは私です」


 アリシアさんとコラートさんは二人で事の顛末を教えてくれる。

 いわく、ダンジョンの近くに聖域草が生えていたので抜いてしまったこと。

 アリシアさんはお母さんの、コラートさんは娘さんの病気を治癒するためだったこと。


 聞くところによると、ザスーラでは流行病が蔓延しつつあるらしい。



「領主様、剣聖様、申し訳ございません。私はこの村を……」


 コラートさんは更に言葉を続ける。


 彼はとある商人から薬草を受け取るのと引き換えに、冒険者ギルドの設置を阻止しようとしていたというではないか。

 聖域草が見つかったので、実際には行動に移していなかったが、村に損害を与えようと画策したのは事実らしい。

 未遂なら話さなくてもって思うけど、だいぶ、潔い性格らしい。


「全ては私が悪いんです。アリシアさんには何の罪もありません。私を魔獣の餌にしてください」


 コラートさんは土下座のまま、頭を床にこすりつける。

 あんまりにも痛そうなので、とりあえずやめてもらう。



「コラートさんも、アリシアさんも、もういいわ。十分に謝意は伝わったから」


 私は二人を許すことにした。

 已むに已まれぬ事情があったこともわかったし、第一、ダンジョンができたのは薬草をひっこ抜いたからだけじゃないと思う。


「ふむ。今朝の地震ですな。確かに遅かれ早かれ、あれの封印は解けることになっておったんじゃろう」


 村長さんも私の言葉に頷いて同意してくれる。

 そう、彼らの行動はきっかけだったかも知れないけど、それが全部じゃない。


「それでも私が村を陥れようとしたのは事実です! 私に罰を与えてください! 私のせいでこの村はスタンピードに巻き込まれようとしてるんです……。あの素晴らしい温泉を私は……」


 コラートさんはなおも引き下がらない。

 瞳には涙を浮かべて謝罪してくる。


 この人もなかなかに頑固な人だ。

 温泉の村の発展を妨げようとしたことに強い罪悪感を覚えているんだろう。

 

 はぁっとため息が出る。


 私の内側にあるのは怒りの気持ちだった。


 コラートさんの娘を思いやる気持ちを利用したゲスな商人への、強い強い怒り。

 

 人の弱みに付け込むやつっているんだよね。


 そういうやつってだいっ嫌い!




「ひ、ひぃいい、ユオ様、あの、その髪が……」


 私の怒りが伝わっちゃったのか、アリシアさんが今までみたこともないような表情をしている。

 なにかに怯えたような表情と言うか。


 あっちゃあ、いっけない、また私、頭に血がのぼっちゃったらしい。

 領主たるもの、こういう非常事態のときこそ冷静でなくちゃいけないのに。



「よっし、じゃあ、一旦、状況を整理するわよ。大丈夫、止まない雨は降らないわ」


 心を落ち着かせて状況を把握する。


 ・あと数時間もすればスタンピードが始まり、魔物があふれること

 ・真っ先に狙われるのはこの村であること

 ・村まで攻め込まれたら、さすがに守りきれないこと

 ・もしかしたら、村長さんの言っている化け物がいるかもしれないこと



「なっかなかのピンチやな」


「でもまぁ、ご主人さまならなんとかしちゃうんでしょうね」


 メテオやララはこんな状況なのに不敵な笑みを浮かべている。

 なんとかしちゃうなんて期待されても困るんだけどなぁ。

 相手はダンジョンだし……。

 


「そうだ!」


 ここで私の脳裏に素晴らしいアイデアが浮かぶ。


「いっそのこと、ダンジョンごと爆破しちゃえばいいんじゃない? 万事オッケーじゃん!」


 そう、ダンジョンが問題を引き起こすのなら、ダンジョンごとなくしちゃえばいいのだ。

 

 そもそも、うちの村は温泉があるし、魔石もとれるし、ダンジョンなんていらなくない?


 そう、ダンジョンなんて害悪なのだ!

 温泉だけあれば、それでいい!



「却下や」


「ひぇええ? なんでよぉっ!?」


 しかし、即座に反応を示したのがメテオ。


 彼女は続ける。


「あのな、ダンジョン言うのはそらもうお宝の山なんやで? これを根こそぎ爆破するなんて話聞いたことないで? 温泉があればそれだけでええってわけには、そらいけませんよ。とおりません」


「くっ、メテオのくせに生意気な……」


 あのメテオにこんこんと諭される私なのである。

 正論が耳に痛い。


 まぁ、ちょっと言ってみたかっただけだし、別に本気だったわけじゃないんだけど。

 なんだか腹が立つ。



「そうですね。ダンジョンは世界にとって神様のプレゼントだと言われています。適切に管理できれば、ものすごい富を生み出すのは事実ですよ」


 ララも口元に手を当てて、冷静に分析してくれる。


「そうだぜ、諦めるのはまだ早いんじゃないかな。どうにか有効活用する方向で行こうぜ!」


「せっかくのダンジョンなのだ、遊ばない手はないのだ! とにかく潜ってみるのだ! 飽きたら爆破でもすればいいのだ」


 ドレスやクレイモアも私の意見に反対らしい。

 クレイモアはただ戦いたいだけに思えるけど。

 

 ものすごい富ねぇ。


 この村の近くにダンジョンができるって具体的にどんな感じなんだろう?

 うちの村の特産である温泉と組み合わせてアイデアを考えられないかな。


 ふむふむ。


「例えば、こういうこと? 冒険者がダンジョンに入って疲れるでしょ? 温泉に入って回復するでしょ? そしたら、再びダンジョンに潜る……」


「そういうことです! どう考えても富の無限ループですよ、ご主人さま!」


「なんせうちの温泉は疲労がめっちゃとれるからなぁ」


「こちとら素材もとれるし、一石二鳥だぜ!」


「リゾートももっともっと拡張できるで!」


「魔物どもと遊んだ後は温泉に入って、美味しい料理を食べるのだ! 食堂も儲かるのだよ!」


 私が温泉とダンジョンを組み合わせることを提案すると、みんなは諸手を挙げて賛成する。

 ダンジョンだけで儲けるって言うより、ダンジョンに集まる人達で儲けるってことか。


 そうなれば、冒険者向けの武器屋・防具屋、酒場にレストラン、はてにパティスリーや花屋さんまでできるかもしれない!


 温泉リゾートだってもっともっと発展させられる!

 お土産物屋で街ができちゃったりなんかして!



「あ、あのぉ、盛り上がっているところ悪いんですが、魔物のスタンピードですよ? わかってます? 村を捨てて避難したほうがいいのでは?」


 アリシアさんが消え入りそうな声で質問してくる。


 しかし、私たちにはもうビジョンが見えている。

 ダンジョンと温泉を往復する冒険者の姿が。

 そんな冒険者をおもてなしする村のみんなの姿が。

 

 私はアリシアさんに向き直ってこう答えるのだった。



「大丈夫。私に考えがあるわ。ハンナ、村長さんのお散歩コースの地図を持ってきて」


 スタンピードを止めるには、あれしかない。


 私は自分の血が熱く煮えていくのがわかった。




◇ アリシアさんの回顧録


「ダンジョンを爆破しちゃえばいいじゃない!」


 領主がそう言った時、私は面食らってしまう。

 この人、ちょっとおかしくなっちゃったんじゃないかって。

 気持ちはわかる。

 だって、せっかく築き上げた村が崩壊しそうなんだもの。


 でも、いざ作戦が始まってみると……。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「ダンジョンを爆破するって、あんたそらとおりませんわ……」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] サブタイトルにある“しちゃばいい”について。 サブタイトルは誤字報告の対象外なので、脱字であるなら“え”が抜けていると、こちらに報告しておきます。
[一言] まぁ、ダンジョンのモンスターの皆様は敵(犠牲者)ですからねぇ〜w
[一言] みんな、まず、あっさり爆破ができる点、それをすんなり受け入れてる点についてなにか疑問におもわんのかね?
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