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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第8章 魔女様の冒険者ギルド誘致! 村の近所にダンジョンが見つかり、魔女様は14日ぶり8回目の大暴れ
116/352

116.魔女様、ついにダンジョン発見です! 奥に化け物がいると聞いてちょっと嫌な予感がする

「魔女様、喋っちゃ駄目ですよ。舌をかみます」


 お姫様抱っこされた上に、そんなことを言われる。


 やだ、ハンナって、割とイケメンだったの……!?


 などと思うわけもなく、私は軽く走馬灯を見ながら落下する。


「あははは! たぁのしぃいいい!」


 崖のわずかな窪みを使って崖を降りるハンナ。

 しかも、笑いながら。

 それって人間としてどうかと思う。


 

「……つ、着いたぁ」


 生きた心地もしないまま、崖の下に到着。

 膝がガクガクと震える。

 それでも生きて降りられたのだから良しとしよう。

 

 あたりは森になっていて視界が悪く、アリシアさんたちは見つからない。



「魔女様、向こうに何かいます!」


「アリシアさんたち?」


「いいえ、違います。もっと多いです」


 心臓を落ち着かせるのも束の間、ハンナが私に警戒を促す。

 彼女は切り替えが早いのか、もう剣を抜いて神妙な表情をしている。

 モンスターだろうか?


 うごがぁっ!

 

 しばらくすると、魔獣の叫び声みたいなのが聞こえてきた。

 聞いたことのない声で、明らかに尋常ではない雰囲気。


 私達はその声がする方向に近づいてみることにした。




「シュガーショック、この牛どうしたの!?」


 開けたところに出たら、シュガーショックが立ち尽くしていた。

 足元にはたくさん牛の頭が転がっている。 


 こ、これってなんなの!?


 うちの村には牛がいないとはいえ、牛肉がどうしても食べたかったんだろうか。

 何の罪もない家畜をやっつけちゃうなんて……。

 シュガーショックの飼い主として本当に謝りたい。



「魔女様、ただの牛ではありませんよ。これは牛男ぎゅうおです」


「ぎ、牛男!?」


「えぇ、牛と男が合体したモンスターです。こう、がちゃんとくっついてます」


「なるほど……」


 よく見てみると、シュガーショックの周りにはバラバラになった魔獣の体が転がっていた。

 ハンナの言う通り、下半身は筋骨隆々とした魔獣の体だった。

 うぅう、気持ち悪いので、とりあえず燃やしちゃおう。


 どうやらただの牛ではなかったらしい。

 誰かの家畜を襲ったのかもしれないと思ったけど取り越し苦労だったようだ。


 くぅうううん。


 シュガーショックはこちらに気づいて駆け寄ってくる。

 その体は魔獣の血で汚れていたけれども、 怪我はないようだ。

 村に帰ったら洗ってあげなきゃいけないね。



「シュガーショック、アリシアさんたちは無事?」


 尋ねるとシュガーショックは森の方を鼻で指し示して教えてくれる。 

 どうやら森の方向に行ってしまったらしい。

 歩けているってことは無事ってことなのかな?



「ま、魔女様! あれを見てください!」


「な、なんなのあれ!?」 


 ハンナが驚いた顔で指差したのは、岩場にぽっかりとあいた大きな穴だった。

 しかし、ただの洞窟じゃない。


 入り口には明らかになんらかの文明の手が加えられている彫刻が施されている。

 私には読めない文字が彫られている。

 目を引くのは入り口にある6つの円が重なっているレリーフ。

 何かのマークだろうけど、見たことはない。


 大昔の遺跡か何かだろうか?

  


「魔女様、ハンナ!」


「あ、おじいちゃんだ! 皆さんもいらっしゃいますよ!」


 振り返ってみると、村長さんたちが手を振っている。

 アリシアさんもコラートさんも無事らしい。 

 良かったぁあ。



「申し訳ございません! ご迷惑をおかけしました!」


 アリシアさんは私たちに平謝りに謝る。

 どうやら泣いていたらしく、目の周りが赤い。

 あんな崖から落ちたのにメガネは無事だったらしい。


「二人とも、ご無事で何よりです! さあ早く帰りましょう」


 とりあえずギルドのふたりを回収できた。

 崖を飛び降りたのは怖かったけど、その甲斐があったと胸をなでおろす。

 冒険者ギルドの審査官に万が一のことがあったらと思うと、身震いしてしまう。



「……これはまずいことになったのぉ」


 いざ帰ろうと思い立ったけれど、村長さんは神妙な顔でそういうのだった。

 そう言えば、この崖をよじ登ろうなきゃいけないんだっけ!?


 そりゃ、たしかに無理だ。


 ……私が崖を適当に爆破して、階段を作っちゃうってのはどうかな?



「いや、そのことではございません。魔女様、あれを御覧ください」


 村長さんが指差したのは、 先ほどの大きな洞穴だった。

 どうやら深い洞穴らしく、ここからじゃ内側が全く見られない。



「あれは何十年か前、このあたりを調査した時に発見した、古代の遺跡かなにかです」


 村長さんはあの洞穴についての経緯を教えてくれる。


 昔、この地域の調査をするときに偶然発見したということ。

 村長さんいわく「とんでもない化け物」が眠っていたので、仲間と一緒に封印したとのことだ。


「仲間の賢者も呼んで、二重三重に封印をしておいたんですが、地震で崩れてしまったのかもしれませんのぉ。魔物を封印するための聖域エリクサーもなくなっておりましたし」


「聖域エリクサー?」


「えぇ、魔物を封じ込める薬草ですじゃ。こちらの土地ではたまに生えておったんですがのぉ。あれをちょちょいと組み合わせると魔法陣がわりになるんですじゃ」


 なるほど植物を使ってモンスターを閉じ込めるなんていう技術もあるのか。

 ふぅむと唸ってしまう私である。


 村長さんが言っていた、「近づくと危険」という場所はまさしくここだったようだ。



「あうあうあうあう……」


「……これは、まずいですね」


 アリシアさんとコラートさんは神妙な表情を崩さない。

 そりゃそうだよね、偶然とはいえ、おかしな遺跡を見つけちゃったんだから。


「この谷は昔から瘴気がひどく、あの洞穴がモンスターを発生させるんですじゃ。おそらくはこの牛男たちも、あの遺跡から出てきたのじゃろう。ちょっくら見てきますぞ」


 村長さんそう言うと、遺跡の方に様子を見に行ってしまう。

 崖から飛び降りたって言うのに、疲れた素振りは一切ない。



「……あ、あのぉ、牛男って、ミノタウロスのことですよね?」


「そのようですね。剣聖様はたやすく斬られましたが、あれは間違いなくミノタウロスです」 


「それじゃ、あれってもしかして……ダンジョンじゃないですか?」


「瘴気がひどくて魔物が自動発生する場所。古代の遺跡。……ギルドの決める、ダンジョンの定義がすればそうなるでしょうね」


 アリシアさん達は遺跡を眺めながら何かを話し合っている。

 そして私の方に向き直ってこう言うのだ。



「ユオ様、あれってダンジョンですよ!」


「ダンジョン? ダンジョンって、あのダンジョンですか!?」


「そうです、たぶんきっとダンジョンです」


 アリシアさんの表情が凍っている。

 もちろん私の表情も凍っている。


 ダンジョンといえば、モンスターがうようよ現れる場所だ。

 古代の遺跡ならお宝なんかも眠っているかもしれない。

 つまり冒険者をホイホイ呼び込む場所なのである。


「すごいことです、これ……」


「ですよね……」


 すごいことだとは思う。

 もし、あれがダンジョンなら、村への経済効果、間違いなしだ。



 でもちょっと引っかかるんだよね。

 あの村長さんが「化け物」が奥に眠っているなんていうのが。


 そんな場所を暴いちゃって良かったんだろうか?


 村の安全を考えると再び封印した方がいいのかもしれない。



「魔女様、とりあえずの応急処置をした方が良いようですじゃ。内側に眠っておったモンスターが目を覚まして出てくるかもしれません。どうにか時間稼ぎをしましょう」


 村長さんはそう言うと大きな岩を転がして、 洞窟の入口を塞ぎ始める。


「おじいちゃん、私も手伝います!」


 ハンナそう言うと村長さんを手伝い始める。

 なるほど岩で遺跡の入り口を封鎖してモンスターが出てこないようにしようっていう話らしい。


 確かにモンスターを野放しにするのはまずいよね。

 シュガーショックが牛の味に目覚めたりしたら嫌だし。



「剣聖様、私にできることがあれば教えてください!」


 居ても立っても居られなくなったのか、アリシアさんも駆け寄ってくる。

 村長さんは「ふむ」と頷いて、「村に戻って魔物避けと村の男どもを連れてきてくれんか」と答える。


 なるほど、魔物よけがあれば、多少は時間稼ぎになるかもしれない。

 私はアリシアさんと、怪我をしているコラートさんをシュガーショックに乗せる。



「それじゃ、行ってきま———ひきゃああああああ!?」


 そして、二人は悲鳴を上げるまもなく消えてしまう。

 シュガーショックが本気だすと、ちょっと怖いよね。ごめん。



「村長! わしらの出番だと聞いたぞ」


 シュガーショックは10分もしないうちに村のハンターたちを連れて戻ってきた。

 説明を聞いた彼らは、皆が皆、表情をこわばらせる。


 私はその作業を見守りながら、このダンジョンをどうすべきか考えているのだった。

 

 ダンジョンの奥にいる、化け物ってどんなのだろう?




◇ 災厄の六柱、ラヴァガランガ、目覚める



 長い間、私は眠りについていた。


 暗く、冷たい地の底で。

 最後に地上を歩いてから、もう何百年か過ぎ去ってしまったのだろうか。


 破壊してやる、何もかもだ。


 私は私を封印した人間への恨みを忘れてはいない。


 人間。

 寿命の短い、脆い存在。

 

 奴らは我らをこの地底へと誘導し、さらには封印を施した。

 真正面からは私に敵うはずもない。

 なんと小賢しい奴らだ。


 しかし、ついに封印が完全に決壊した。


 最初に感じた異変は熱だった。

 それはじわじわと私の体を温めた。

 それはとても心地よく、私の体を鼓舞するかのようだった。


 決壊の決め手は地震だった。

 私を封印していた巨岩が割れ、さらには浄化の魔法陣も消えたのだ。



 数百年ぶりの呼吸。

 熱が湧き起こり、体中に染み渡っていく。

 行き場のない私の怒りが、今まさに世界に放射されようとしている。



 蹂躙してやる。

 この世界の全てを。


 私を見捨てた魔族どもも、何もかも。


 手始めは人間、お前たちだ。

 災厄の六柱たる、このラヴァガランガが本当の恐怖と絶望を味わわせてやる。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「ひさびさに強そうなぎせいしゃ……」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ラヴァガランガが魔女温泉で懐柔されそうな気配w 他の五柱はどうなるかw ところで、アリシアさんはいつ入浴するのかな?w
[一言] 強 そ う な 犠 牲 者 強そうとは一体・・・? てか、犠牲決定事項で草。
[良い点] あと5柱も犠牲者がいるのか・・・
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