表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第8章 魔女様の冒険者ギルド誘致! 村の近所にダンジョンが見つかり、魔女様は14日ぶり8回目の大暴れ
111/352

111.ラインハルト家の野望:ガガン、ザスーラの流行病に乗じて財をなそうと企む。三男のミラージュはついでにユオの村の冒険者ギルド計画を潰そうと画策する

 ——アリシアたちが禁断の大地を訪れる、1週間ほど前のこと。



「請求がここまで多いだと!? ぬぉおおお」


 ここはリース王国の王都。

 ラインハルト公爵家のガガンはまたも怒っていた。


 騎士団や領地の維持費などに請求された金額が膨大なものだったからだ。

 

 胃がきりきりと痛む。



「昨年と同様の金額ではございますが……」


 報告に来た部下はうつむいたまま答える。


 確かに、請求金額は一年前とさほど変わらない金額だった。

 これまでのラインハルト家ならば気にもとめない金額だったろう。


 しかし、現在は魔石の売上が芳しくなく、貯蓄を切り崩している状況だ。


 その中での多額の請求というのは非常に痛い。



「ガガン様、そろそろ会合を控えるなどされたほうがよいかと思いますが……」


 部下は声を絞り出す。

 彼としても現在の状況は芳しいものではないとわかっていた。


 そこでガガンたちの浪費を必死の覚悟で諌めることにしたのだ。


「何を言うか! 会合を控えよとはなんと不敬な! 身の程を知れ!」


 しかし、ガガンはそれを一蹴する。

 彼は生まれながらの貴族であり、節約という文字からは最も遠い存在だったからだ。

 倹約質素な生活など夢にも思ったことがなかった。

 


「も、申し訳ございません! ……ごほっごほっ」


 部下はガガンのあまりの剣幕に萎縮してしまう。

 そのときに彼はつい咳き込んでしまうのだった。



「ふんっ、愚か者め。くだらんことを言う前に、自分の体の調子を整えよ! この部屋からさっさと出ていくがいい」


 ガガンは眉間にシワを寄せて、部下を追い出してしまうのだった。

 部下は無言のまま急ぎ足でいなくなる。



「まったく不敬な男ですね。我々に節約せよなどとは、よく言えたものです」


 その場に同席していたラインハルト家の三男のミラージュが口を開く。



「ふん。あの者は解雇してしまおう。不敬な発言だけではなく、私の前で咳をするなどもってのほかだ」


「まったくですよ」


「ふむ、咳か……」


 苦々しい顔をしていたガガンだったが、咳という言葉に顔色が変わる。

 彼は何かを思いついたようだ。



「そういえば、ザスーラでは流行病が蔓延しているそうだな」


「はい。咳が止まらずに体力が削られる病と聞いております。治りにくい病で知り合いの貴族にも床に臥せているものがおります」


「ふふふ、そうか。それはいい。ちょっと待っておれ」


 ガガンはそう言うと、勢いよく部屋の外へ出ていく。

 そして、数分もたたないうちに何かを持って戻ってきた。



「ミラージュよ、これが何か分かるか?」


 そう言ってガガンが差し出したのは、なにかの植物が入った瓶だった。

 その植物は乾燥しているにもかかわらず、輝いているように見える。


 植物に詳しくないミラージュは首を横に振る。



「これは聖域草だ。あらゆる病を癒すといわれている霊薬よ」


「聖域草!?」


「そうだ。先代のバカ親父が禁断の大地で採集したものがまだ残っておったのだ」


 ガガンはそう言うと、植物の入った瓶をゆらゆらと揺らす。



「ふふ、これをザスーラに売って一儲けしてやろうではないか!」


 そして、ガガンは自分の計画を話し始めるのだった。

 

 流行病に恐れる貴族や豪商たちに、この霊薬を高値で売りつけるというものだ。


 聖域草は実際に高価な薬草であったが、その数倍の価格で売り抜けようという算段だった。


 先代が禁断の大地から持ち帰ったものはたくさん残っており、在庫も十分だ。



「さすがは父上! ザスーラの貴族どもは喉から手が出るほど欲しがっているでしょう!」


「そうだろう。命ほど大事なものはないからな!」


「これで気がねなく遊んで暮らせますよ!」


 ガガンとミラージュは新しい財源を見つけたことで気持ちが大きくなる。


 彼らはさっそく聖域草を売り込む計画を話し合うことにした。

 


 





「冒険者ギルドを禁断の大地に作るだと!?」


「ははっ。おそらくは冒険者が増えてきたためではないかと思います!」


 その数日後、ミラージュは部下の一人から驚くべき報告を耳にする。


 あの禁断の大地の村、つまり妹のユオの村が冒険者ギルドの設置を要請しているという話だった。


 冒険者ギルドと言えば、大陸を横断する組織だ。


 そんなものができてしまうと、冒険者が集まり、ますます発展してしまう。

 もしも、ユオの村が発展を続けてしまうと、その発端となった自分が罰せられるかもしれない。


 ミラージュはどうにかその計画を潰せないかと考えるのだった。



「冒険者ギルドなんぞ絶対に作らせてなるものか! ふふふ、この計画で村ごと消してやるわ」


 そして、一つの計画を思いつく。

 父親に知られることなく、ユオの村を潰す方法を。

 



「私にご用件とはなんでしょうか?」


 数日後、ミラージュは身分を商人であると偽り、王都に冒険者ギルドの職員を呼び出す。

 彼はコラートという初老の人物だ。

 ザスーラ首都の冒険者ギルドで働いている。

 

 ミラージュの隣にはザスーラでの商売上のパートナーである、アクト商会の職員も控えていた。

 そのため、コラートはミラージュのことを本物の商人だと勘違いする。



「禁断の大地の村の冒険者ギルドの設置を潰してほしい。あの村は最悪の村なのだ。世界中に災いをもたらしているぞ」


 ミラージュは自分が禁断の大地の村に大損害を被っている商人であると説明する。

 冒険者ギルドを作るなどもってのほか。

 むしろ、あの村に冒険者が行かないように<<移動禁止令>>を通達するべきだと伝える。



「申し訳ございませんが、私が請け負うわけにはいきません。設置の審査は公正に行われますゆえ」


 話にならないといった具合に、コラートは席を立とうとする。

 自分にとって辺境の村を陥れるメリットなどなかったからだ。

 そもそも、冒険者ギルドは一種の権力組織だ。

 簡単に買収されるはずもなかった。

 

 しかし、ミラージュは口元に笑みを浮かべてこう言うのだった。



「コラート殿、金がいるらしいじゃないか。娘が流行病なのだろう?」


 その言葉にコラートは固まってしまう。

 

 図星だったのだ。


 彼の娘の一人はここ数ヶ月、病に臥せっていた。

 

 医師にも治せない病気と診断され、その看病のためには高価な薬を使わなければならなかった。

 しかし、それでも熱は下がらず、途方に暮れているのが現状だった。



「禁断の大地の村の冒険者ギルドを潰してくれれば金を全て出してやろう。いや、移動禁止令を出すようにしてくれれば、この霊薬をつかわせてやってもいい」


 そういうと、ミラージュはコラートの前にとあるガラスの瓶を差し出す。

 その中には黄金色に光る植物が収められていた。



「こ、これは……」


 コラートは思わず目を見張ってしまう。


 この植物は聖域草と呼ばれ、辺境のごく一部にしか生えない薬草だった。

 様々な難病を癒すことから、奇跡の霊薬とも呼ばれるものだ。


「ふふ、ザスーラの貴族でも手に入らない代物だぞ? 冒険者ギルドの職員ごときが使わせてもらえるなんてことはないと思うがな」


 非常に高価であるが、それ以上に入手困難であることで知られていた。

 今、ザスーラ中の貴族や豪商がこの植物を求めており、花一つだけで家が買えるとさえ言われていた。


 コラートの喉から「ぐっ」と音が漏れる。


 この薬草があれば娘の病気を治すことができるかもしれない。

 元気だった頃の娘の姿が頭に浮かび、コラートの心を揺らす。

 

 コラートにとって、この依頼は自分の娘を人質に取られたようなものだった。



「この仕事、受けさせていただきます……。移動禁止令が出るように努力させていただきます」


 コラートは一呼吸の後、そう答えるのだった。


 返事を聞いたミラージュは満足そうに笑う。




「ほう、それでは冒険者ギルドの職員を消せばよいのですな?」


「そうだ。査察中に事故に見せかけてやってほしい」


「ははっ」


「給金は弾むのだ、しっかりと仕事をしてほしい」


 コラートとの面談が終わったあと、ミラージュは別の人物と話し合っていた。

 その人物は聖王国から派遣された魔獣使いだった。


「もちろんですとも。ぎひひ」


 提示された金額に魔獣使いは口元を引き上げる。

 その笑顔はあからさまに下品で、ミラージュは少し辟易する。


 しかし、それでも彼は魔獣使いとがっちり握手をするのだった。 


「ふくく、冒険者ギルドの職員が死ねば、ギルドの設置計画など水の泡だ。いや、冒険者さえ来なくなるだろう。そうなれば奴の村も終わりだ! 全て元通りになるぞ!」


 冒険者ギルドの職員を殺すことはミラージュにとって保険だった。

 コラートを消すことで、冒険者ギルドは禁断の大地へのポリシーを見直さざるを得なくなるだろう。


 ミラージュは自分の計画にほくそ笑むのだった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「ラインハルト家にはむしろ頑張ってほしいぜ……!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

メイドさんの活躍する新連載スタートです! 下のURLをクリックしたら見られます

https://ncode.syosetu.com/n0699ih/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

書籍版第三巻が発売中です。
l017cqekl6nkc64qf50ahkjj6dry_vk2_dc_ix_7qao.jpg

コミカライズ版第1巻が発売中です。

g2opjx6b84b9kixx3rlfe0tedyf_1b5q_dc_iy_2tr1.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] 普通にエリクサーが流通する⚐゛かな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ