109.魔女様、メテオの真面目な発表に感動するも、やっぱり緊急事態です!
「最後はうちの発表やな」
そして、村おこし発表会のトリを飾るべく、立ち上がったのがメテオだった。
彼女はいつものへにゃるんとした表情ではなく、真剣な表情でステージにあがる。
背筋のぞわぞわが止まらない私。
クエイク以外、どれもこれも難ありだったからなぁ。
うちのトラブルメーカーのメテオにははっきり言って期待できないよなぁ。
「うちの発表するのは……」
ごくりとつばを飲む。
どうか、魔女様の自伝発売とか痛いことを言い出しませんように!
「この村への冒険者ギルドの誘致や!」
「へ……? 冒険者ギルド?」
「せや! この村でとれている魔石や素材は大好評や。村を街に持っていくためにも冒険者ギルドを村にいれて、しっかり管理できる態勢を整えようっていう提案や」
「えぇええ……!?」
開いた口がふさがらないとはこのことだ。
メテオが、あのメテオがちゃんとしたことを考えている!?
なんだか悪いことが起こるような胸騒ぎさえしてきた。
……うちの温泉が涸れたりとかしないよね?
「涸れるかっ!! あぁ、もう、ユオ様はうちを疑いすぎやって! うちかてこの村のことを真剣に思ってるんやからな!」
メテオがいつになく真剣な顔で抗議してくる。
真面目だ。
そうかぁ、メテオだってちゃんと村のことを考えてるんだ。
村になにもない頃から一緒に頑張ってきたんだから当然だけど。
いや、もちろん、メテオには感謝しているよ。
村の財政をララと一緒に考えてくれているのは知っているし。
「ほんでな。先日、冒険者ギルドのザスーラ本部に申請書を送ったんやけど、ついに審査にはいってくれるっちゅう話やねん!」
メテオはそう言うと、ばばんっと手紙らしきものを私達の前に広げる。
手紙にはこの土地での冒険者ギルドの設置について詳細が書かれていた。
「偽造では……ないようですね。ここに冒険者ギルド長の魔法サインもあります」
ララは鋭い目つきで手紙を鑑定する。
確かに手紙には重厚そうな印章までついている。
「す、すげぇぞ、冒険者ギルドができるのかよ」
「これで自分のレベルに合わせた仕事ができるぜ」
「ランク上げにもつながるわ!」
冒険者ギルドの誘致の言葉に冒険者たちは声を上げて喜ぶ。
「みんなも知ってるように、うちの村はまだまだや。特に冒険者の扱いは未発展もいいとこやで」
メテオは私達の村の問題点を解説し始める。
彼女が言うには大きな問題として以下の二点があるという。
・冒険者のレベルに合わせた仕事が斡旋できていない
・冒険者がいくら頑張ってもランク付けに貢献しない
まずは1つ目だ。
冒険者に仕事を割り振る時、仕事内容をしっかり精査する必要がある。
例えば、森トカゲをやっつけるのはCランクとか、そういう風に。
しかし、うちの村には人手不足で仕事を精査する能力のある人がいない。
しょうがないので、依頼を掲示板に貼り出して、冒険者一人ひとりが自己判断で臨むことになっている。
明らかに危険な仕事は私やハンナや村長さんが扱うルールになっているんだけど、それでも安全とは言い難い。
この間もハンスさんはアナトカゲに腰を抜かしていたし。
「冒険者ギルドが間に入ることで、もっと安全快適に仕事を斡旋できるんやで。これってデカイやろ?」
「大きいね、たしかに」
私はメテオに頷き返すのだった。
そして、問題の2つ目、村の仕事が冒険者の実績につながらないということ。
「一番大事なのがこれやな。ギルドがあるとランク付けのための実績が得られるんや。これはでかいでぇ」
「うーむ、なるほど」
私は思わず唸ってしまう。
このランク付けという側面は完全に盲点だったのだ。
メテオは続ける。
「冒険者っちゅう職業は仕事をすればするほど実績が得られて、それに応じてランクが与えられるんや。エースならA級、国をまたがる仕事ならS級っちゅうぐあいに」
「こつこつ積み重ねてランクをあげていくってこと?」
「せや。けどな、うちの村ではゼロやねん、これが。いくら頑張ってもお金と素材しか手に入らんねん」
私たちのやり取りに冒険者たちは、無言で頷いている。
私としてはお金や素材さえ貰えればいいのかと思っていたが、そうではなかったらしい。
冒険者たちには称号というのが金銭と同じか、それ以上の価値を持つそうなのだ。
ことの重大さに今更ながら気づく私なのであった。
「俺、ずっとC止まりだったからなぁ」
「私も森で素材を採集できるようになったし、かなりランクが上がるわよね?」
冒険者にとってランクというのは自分の社会的地位そのものらしい。
トカゲ嫌いのハンスさんも自分がCランクであることを誇りにしていたものね。
「まとめると、冒険者ギルドが間に入ることで、安全性は確保できるし、実績もつく。そしたら、冒険者が増えるし、冒険者向けの商売も増える。結果、村にはもっともっと人が集まるで!」
これからのビジョンを高らかに宣言するメテオ。
村の発展のためには冒険者ギルド誘致は欠かすことができないってことがよくわかる。
「いいぞっ!」
「すごいじゃないか!」
「大歓迎よ!」
村人も冒険者も諸手を挙げてメテオに拍手を送る。
私も思わず大きな拍手を送る。
「魔女様、お姉ちゃん、そうとう頑張ってたんですよ! ギルドの本部とは、もう何回もやりあったんですから!」
クエイクが駆け寄ってきて、フォローを入れてくれる。
メテオは冒険者ギルドの設置のためにずっと動いてくれていたらしい。
「どや、ユオ様、なっかなかのサプライズやったろ?」
メテオはそう言って私にウィンクするのだった。
「もちろん! とびきりだったよ! ありがとう!」
メテオにハグをして激励する私なのであった。
きっと私一人じゃ冒険者ギルドなんて考えもしなかっただろう。
メテオはちょっとふざけちらかす時があるけど、商才は一流。
もちろん、私の大事な仲間だし、親友だ。
彼女の素晴らしさを改めて噛みしめる私なのであった。
「ふふ、それでな、冒険者ギルドの審査官がもう少したったら来るはずなんや。辺境伯よりもはやいとは思うけど、あいつら仕事遅いし数週間後やろうなぁ」
「よぉし、しっかり準備しなきゃだね!」
メテオが言うには、ザスーラの首都にある冒険者ギルドから審査官が派遣されるとのこと。
その人達が最終的な判断のための報告書を作るのだという。
「辺境伯といい、冒険者ギルドといい、おもてなしが大変ですね、ご主人さま!」
「ほんとだよ。いやー、村が発展して困っちゃうね」
「せやな〜」
ララの言葉に私達はふふっと笑うのだった。
まだまだ課題は山積みだけど、きっと私達なら解決できる。
「よぉっし、冒険者ギルドの審査官を頑張っておもてなししちゃおう! 村のみんなも頑張るよ! 冒険者の皆さんも協力お願いします!」
「おぉーっ!」
「やるぞぉっ!」
「任せとけっ!」
村人も冒険者も皆が拳を掲げる。
今、村は大きな目標に向かって前に進みだそうとしている。
そんなときだった。
信じられない言葉が聞こえてきた。
「あのぉ〜、魔女様、、村の門のところに冒険者ギルドの職員を名乗る人が来ているのですが……」
村の門番を頼んでいた村の女の子がかけこんできて、そう言ったのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「順調なときほどご用心ってね……」
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