102.ラインハルト家の受難:ガガン・ラインハルト、女王に忠誠心を示すために頑張って足置きになっちゃいます!
「なぁっ!? ローグ伯爵が島流しだと!? 何が起きたのだ!?」
リース王国の王都にて、ガガン・ラインハルトは耳を疑う。
彼の盟友、ローグ伯爵が追放されてしまったという一報が入ったのだ。
「サジタリアスで錯乱して大暴れしたとのこと!」
部下が言うには、サジタリアスとの婚約でごたごたが生じ、それを不服と思った伯爵が暴れたために取り押さえられたということだ。
しかし、暴れた原因や経緯についての情報はこれ以上出てこなかった。
女王はローグ伯爵の一件を黙って聞き、
一言、「追放じゃ、このアホ」と伝えたとのこと。
伯爵は貴族籍を剥奪され、平民として僻地に流刑される身になった。
「くそっ、あの忌々しい女王め……」
部下の報告を聞きながら、ガガンは舌打ちをする。
彼が思うに、これは女王が自分たちの力を削ぐために行なったことだということだ。
あの計画的なローグ伯爵がそこまでずさんなことをするはずがない。
彼にとってローグ伯爵は『使える』男だった。
様々な国とコネクションをもっており、資金も潤沢。
ちょっとお願いすれば、すぐに資金を出してくれるお人好しでもあった。
とんでもなく好色で、悪知恵しか働かない男だったが、それがゆえに御しやすかった。
「最近ではサジタリアスの聖女を担ぎ出すと息巻いていたが失敗というわけか……」
ガガンは「はぁ」とため息をつく。
怪しい占い師に頼って聖女なるのものを見つけ出し、女王を倒す時の旗印にしたいと伯爵は熱く語っていた。
しかし、聖女がいないとなれば話は別だ。
彼は計画の延期を決定することにする。
聖女以外を担ぎ出す方法で、女王を打倒する方法を模索することにしたのだった。
彼は女王を打倒することを諦めていなかった。
必ず弱点を見つけ出し、この王国を自分のものにするのだという決意は揺るがなかった。
「ガガン様、これにはまだ続きがございます。ローグ伯爵はサジタリアスでラインハルト家の名前を出したとのこと。これについて、女王陛下が申し開きを求めています」
「なぁっ!?」
そう決意したのも束の間、ガガンの部下がとんでもないことを言い出す。
なんと伯爵は自分の名前を使って、隣国を脅すようなことをしたということだ。
確かにローグ伯爵とは仲がいい。
しかし、勝手に自分の名前を使われるほど安請け合いした覚えはない。
「あんの、バカ男が……」
ガガンは歯噛みをするが、あの恐怖の女王に謀略がバレてしまってはまずい。
彼は急いで王宮へと向かうのだった。
◇
「ふむ、ガガンよ、ローグのアホが先日、隣国のサジタリアスで大暴れしてのぉ」
王宮につくと、女王はいつもの冷たい眼差しのまま喋りだす。
「その際に、『自分にはラインハルトがついている』と辺境伯に啖呵をきったらしいのだ。これについて、どう思うか?」
「全くもって愚かなことです。私は今回の一件に一切関与しておりません」
女王のじろりと冷たい視線にガガンは身じろぎをする。
しかし、自分の潔白を示さなければ、ラインハルト家も取り潰される可能性がある。
ガガンは慎重に言葉を選びながら、そう伝えるのだった。
「しかしのぉ、貴族が他国で暴れるというのは通常ではありえんほど愚かなこと。サジタリアス辺境伯は温厚な人物だったので良かったが、ザスーラの他の連中じゃそうはいかんのぉ」
女王は蛇のような性格だった。
初めは言いたいことを封印し、こちらが弱みを出したときに食らいついてくる。
ガガンはそれがわかっていたので、敢えて黙ったままでいる。
「リースにはローグのような不忠者はいらん。金儲けはうまいが、国を滅ぼしかねんからの」
「そ、そうです。私も女王陛下には常に忠義心をもっております」
ガガンはそう言うと、しっかりと頭を下げる。
忠誠心をしっかり見せることで、女王に敵意はないということを欺くことだ。
「そうか、お前にはまことの忠誠心があるのだな?」
「ははっ。私こそ、女王陛下、第一の臣であります。いつでも、なんどでも、陛下をお支えいたします!」
「ふふっ、そうか、支えてくれるか」
女王は嬉しそうに笑う。
もしも、女王のことを知らなければ、純粋無垢な美少女だと思うだろう。
「もちろんでございます! お支えします!」
ガガンもその笑みにつられて愛想笑いをする。
「それなら、わらわの足を支えてくれまいか。最近、足がとっても冷えて困っておってのぉ。いつでも、なんどでも、忠誠心を示してくれる優秀な家臣がいるらしいからの」
女王はそう言って足をバタバタさせる。
まるで、足が疲れているとでもいうかのうように
「はぁ? 支えるというのは、そのような意味ではなく」
「ふむ、それでは、先程の言葉には偽りがあると?」
「い、いえ、滅相もありません!!」
そして、ガガンは体を丸めて足置きになった。
女王が玉座に座っている間、足をぽーんと投げ出すためだ。
とうぜん、行儀がとてもよろしくないが、誰も文句を言うことはない。
先日は椅子だったが、同じように屈辱的な姿勢であることは間違いない。
「ふふふ、いつでも支えてくれる忠誠心とはいいものじゃのぉ」
女王の姿は少女だが、実際には妖怪のように狡猾なハーフエルフだ。
彼女は不敵に笑いながら、足置きの感触を1時間ほど楽しんだ。
ちなみに女王がこのような真似をするのは、ガガン以外にはほぼいない。
『くっそぉおおおおおお!』
ガガンは歯を食いしばりながら耐える。
全ては打倒女王のためと自分に言い聞かせながら。
しかし、この日の一件もすぐに王都中に広まり、ラインハルト家の名声はさらに下降するのだった。
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