悪役令嬢 the summer !!
どこまでも青く晴れ渡った空。
その青を映してキラキラと輝く海。
太陽に熱せられた白い砂浜。
ビーチには、この世の全ての享楽と喧騒が詰まっている。
今この瞬間、最も幸福に満ちていて、平和で、しかも危険な場所。
熱い空気を少し吸って、公爵令嬢ヴェロニカはサングラスの奥の碧い目を細めた。
海水浴客が多くいる、庶民に開かれた賑やかなビーチ。
そんな場所で公爵令嬢がバカンスを楽しむことは、稀である。
公爵家ともなればプライベートビーチの1つや2つ、所持していることは当然。
あえてそれらを使わずに一般客のいるビーチに訪れたのは、人々が作り出す賑わいすら真夏の海の興として楽しもうとする貪欲さからだ。
宮廷での舞踏会では何十枚もの絹布に包まれるほっそりとした肢体は、いまは白いビキニと真っ赤なパレオを纏うのみ。
豊かな銀糸の髪は邪魔にならないよう簡素にまとめられている。
生まれつき白くて柔らかい玉の肌は日焼けに弱いので、大きなパラソルからは離れられない。
しかし、この地上の楽園に魅せられたヴェロニカは全く気にしていなかった。
あちこちで上がる歓声、誘うように寄せては返す波の音が絶え間なく彼女の耳を楽しませるのだ。
近くには、同じ学園に通う同級生の令嬢たちがビーチチェアを並べている。
「驚きましたわヴェロニカ様。ビーチって、こんなに賑やかでしたのね。」
ヴェロニカと同じようにビキニを纏い、赤い髪をゆったりと纏めた令嬢が話しかけた。
すぐに他の令嬢も同調する。
「いつものプライベートビーチでは、こんな雰囲気味わえませんものね。」
「ここにいらっしゃる方々は、平民も多いのでしょう?
ふふ、海を楽しむ気持ちは皆変わらないようですわ。」
皆、ビーチで過ごす夏を満喫している。
身分の違う者たちを毛嫌いすることなく、同じようにビーチの賑わいを喜んでくれる友人たちは、貴族社会では得難い、大切な存在だ。
ヴェロニカは持っていたノンアルコールモヒートを置き、彼女たちに語りかけた。
「皆さま、名残惜しいですが、そろそろ──」
「ヴェロニカ!メイライン公爵家、ヴェロニカ・メイライン!」
いきなり、無骨な声が彼女を呼ぶ。
ビーチでよく聞こえてくる賑やかな大声とは違う、非難の響きを持った硬い声だ。
近くにいた者達は、音が聞こえてきた方に目を向けた。
声の主は1人の男だった。
真っ白なシャツにカーキ色の五分丈のパンツ。
暑くはなさそうだが、ビーチにくるには随分とかしこまった服装に身を包んでいる。
銀色の髪に暗い灰色の瞳の、なかなか整った風貌だ。
男は、さらさらした金髪の小柄な少女の肩を大事そうに抱き、ヴェロニカを睨みつけていた。
背後には2人の従者が控えており、同じようにヴェロニカを睨む。
見覚えのある人間の登場に、ヴェロニカはサングラスをとり、ゆったりと起き上がって軽く礼をした。
「まあ、どうなさいました?殿下。
ご連絡をいただければ、お迎えに上がりましたのに。」
「誰がお前の迎えなど要るものか!」
忌々しそうに吐き捨てた男は、ヴェロニカの婚約者だ。
また、ヴェロニカが属する貴族社会の頂点に立つ、王家の一員、王太子でもある。
普段からそこまで仲が良いわけでもない。
いわゆる、政略結婚の相手だ。
それでもはっきりと対立したことはなかったため、いきなり敵意を全開にされたヴェロニカは面食らった。
「わざわざ休暇中にまで足をお運びいただき、ありがとうございます……。」
少しくらい刺のある言い方をしても揺らぐような身分ではない。
そう自負しているヴェロニカは、あまり遠慮はせずに皮肉な言葉を選び取った。
王太子には正しく皮肉のニュアンスが伝わったようで、一層強く睨みつけて居丈高に声を張り上げた。
「直接伝えることがあるから、来てやった。」
フッと笑い、少女の肩を強く抱き直す。
「俺はお前ではなく、ここにいる男爵令嬢ミランダ・ドレッセルを心から愛している!
お前との婚約は、破棄させてもらう!」
自信満々な王太子の発言。
その唐突すぎる内容に、ヴェロニカは絶句する。
普通に生活していたらまずお目にかかれない宣言を聞きつけて、近くではしゃいでいた数人の男女が「ヒュ〜〜〜〜ッ!!!」と歓声を上げた。
指笛を鳴らすものまでいる。
海に浮かれた者たちは、どこまでも陽気だ。
「愛している」という言葉に反応したのだろうか?
ヴェロニカは首をひねった。
ただの喧嘩とも違った異様な雰囲気に、水着姿の野次馬が集まり始める。
なぜかボルテージが上がっている砂浜の熱気に乗せられ、王太子は意気揚々と続けた。
「それだけではない!お前は罪を犯した!」
ビシッ!とヴェロニカに指を突きつける王太子。
「このか弱く愛らしいミランダに、お前は何をした!?
卑劣で恐ろしい嫌がらせの数々は聞き及んでいるし、俺も目撃したのだぞ!」
王太子に肩を抱かれているミランダは、俯いていて確かに弱々しそうに見える。
さらさらの金髪、桃色の目に引き結ばれた小さな唇、ちょうどよく日に焼けた小麦色の肌が白い砂浜によく映える美少女だ。
銀髪で青い目をした怜悧な風貌の美女であるヴェロニカとは、真逆の容姿である。
「嫌がらせ、でございますか?
私、覚えがございませんが……。」
「しらを切るつもりか!
お前は取り巻きを使ってミランダを取り囲んで責め立てたり、水魔法をぶつけたり、わざと不安定な船に乗せて海に落とすことまでしたではないか!
平民上がりだからといってそのような辱めが許されるものか、お前は腐りきっている!
王妃になど、相応しくない!」
なかなかハードな攻撃の数々に、砂浜の野次馬たちもざわついた。
魔法はほとんどの者が使える力ではあるが、貴族は魔力の強さにおいて一線を画す。
公爵令嬢ともなればその魔力は一級品であるはずで、そんな強力な魔法をぶつけたとなるとただの嫌がらせでは済まない。
さらに、ミランダが平民上がりだという情報が、野次馬たちのざわめきに拍車をかける。
平民として暮らしていたが実は男爵家の落胤だと発覚し、貴族の身分を得た少女。
彼女の噂は市井で広まり、憧れの的となっている。
次第に、ヴェロニカに対する非難のささやきが強まってきた。
だが、王太子の一方的な糾弾に乗せられている野次馬たちを公爵令嬢が恐れるわけがあろうか。
悪者にされている雰囲気になど全く動じることなく、ヴェロニカはミランダを見据えた。
「ミランダさん、あなたの考えをお聞かせください。
何かおっしゃりたいことはあって?」
ミランダの桃色の目が潤む。
「ヴェロニカ様……あの、わたし……」
「ふざけるな、この期に及んでミランダを脅すつもりか!」
牽制するように大声で怒鳴る王太子を冷たく一瞥すると、ヴェロニカは短く魔法を詠唱した。
「ウォーターボール!」
丸い水弾を作り出す水魔法である。
うっすらと水色を帯びた透き通った水弾は彼女の掌の上でみるみる膨らみ、人の頭と同じくらいの大きさの球体となった。
ポン、と放り上げると、王太子たちの頭上に向けて掌で鋭く打ち出す。
いきなり魔法を行使したヴェロニカに、王太子たちは慌てて対抗する。
「黙って攻撃してくるとは、なんと野蛮な……!」
王太子がミランダを庇うように背後に隠し、従者たちは前に出て防御魔法を行使した。
見慣れない大きな魔法から逃げるように、ミランダは後ろに走って距離を取る。
「エアシールド!」
「サンドシールド!」
ただの言い争いならまだしも、魔法の撃ち合いを始めるのか。
突然の展開に見物人たちは悲鳴を上げて後ずさる。
一気に狂乱の渦が巻き起こった砂浜で───
────ミランダが、跳んだ。
短い助走のあと、シュッ!と音を出し足の裏から勢いよく水を噴射。
脚のばねと水勢を利用して前を塞ぐ王太子たちを飛びこし、水弾を斜め前に捉える位置にまで浮かび上がる。
離れた場所から様子を伺っていた野次馬の誰かが、声を漏らした。
「あのフォームは……!」
右手のひじを曲げたまま振り上げ、手首を返して十分に回転を加え、飛沫を立てて一気に水弾を打ち返す。
先程まで潤んでいた瞳は、ただヴェロニカだけを強くまっすぐに見据えている。
水弾は来た時よりも勢いを増して、軌道を逆に辿り始めた。
寸分違わずヴェロニカに向かったことを確認したミランダは、振り切った手で小さく胸の前で拳を作った。
ヴェロニカをめがけて勢いよく水弾が飛ぶ。
着弾する直前にパチン、と指を鳴らすと、ヴェロニカは水弾を霧散させた。
同時に、彼女を取り巻いていた令嬢たちから黄色い歓声が上がる。
「やりましたわね、ミランダ!」
「今までで一番のスパイクでしたわ!」
隣の令嬢と手を握り合う者、飛び跳ねて喜びを表す者など、貴族とは思えないほどのはしゃぎようだ。
そんな彼女たちのもとにミランダも突貫した。
「ありがとう……ありがとう、ございます!」
全員とハイタッチを交わし、同じように飛び跳ねる。
まるで、今までずっと共に過ごしてきた友人だとでも言うように。
その勢いのまま、なんとミランダはヴェロニカにとびついた。
「カントク……カントク!わたし、できました!」
桃色の目からポロポロと溢れる透き通った涙。
周りの野次馬たちの中にも、よくわからないながらもらい泣きを始める者が出始める。
ヴェロニカは優しい微笑みを浮かべ、そっとミランダを抱き返した。
「よくここまで頑張ったわね。あなたの努力の成果よ。
……でも、これで終わりじゃないでしょう?」
ミランダは強くうなずき、弾けるように笑った。
「はい!来週の試合……全力で、勝ちに行きます!」
額には汗の粒が光る。
それはまるで、少女たちの生命のきらめきだった。
さて、覚えておいでだろうか。
彼女たちが麗しき青春劇を繰り広げる目の前には、いたいけな少女を守る役目を奪われた哀れな騎士たちが突っ立っている。
魔女の如き凶暴な悪役令嬢から愛するミランダを護らんと勇んで前に出た王太子とその従者は、虚しく空振りに終わった己が魔法を収めることになった。
悲しいかな、彼らにはヴェロニカとミランダが抱擁を交わすわけがまったくもってわからないのである。
公爵令嬢は、すこし困ったように笑いながら婚約者に話しかけた。
「誤解を招いてしまったことはお詫びいたしますわ。
私たち、対立などしておりません。嫌がらせもするはずがございませんわ。
なぜって──同じ目標を掲げた、かけがえのない仲間なのですから。」
「仲間……」
王太子は呆然とつぶやく。
はたして何の仲間なのか、考えようとするが衝撃を受けた脳はのろのろとしか動かない。
「私たち、ウォーターボール・ビーチバレーのチームを組んでいるのですわ。」
ウォーターボール・ビーチバレー。
王太子として経験を積んできた彼にとっては、もちろん既知の競技である。
2人1組となって砂浜で行われるバレーボール。
選手自身が水魔法で作り出した1つの水弾を打ち合い、相手側のコートに落とすことで得点を稼ぐスポーツだ。
水魔法に限ってボールへの干渉、自分や味方の動きの補助、相手の動きの妨害が認められており、どのような巧妙な手を用いて得点するかが見所だ。
室内で行う魔法なしのバレーボール、風魔法を使うウィンド・バレーボールに比べ、水飛沫が飛び交う涼しげな見た目も魅力である。
夏の大人気スポーツの一つ。
天覧試合も行われているため、王家の一員として観戦したことすらある。
しかし、裸足で砂の上を動き回るスポーツだ。
常に淑やかに生活する貴族令嬢とは全く結びつかない。
「お前たちが……海辺で、スポーツをするのか?
砂にまみれて?」
「私たち貴族の女も、伝統を愛しておりますから学園や社交界では淑やかに振る舞いましょう。
ですが、知ってしまったのです。
短い夏に躍動する民草の情熱を。」
ヴェロニカの青い目は爛々と輝いている。
「燃え盛る太陽の下で全身を使ってコートを駆け巡り、球を打ち合い競い合う……。
砂にまみれればまみれるほど、盛り上がる。
まさに、夏を楽しむためにあるスポーツではございませんか!」
いきなり熱く語り出したヴェロニカにどう反応していいかわからず、王太子は返答できなかった。
しかし、周囲からワッと歓声が沸いた。
野次馬たちだ。
いかにも高貴で雲上人のような美女ヴェロニカが、自分たちと同じようにスポーツを愛している。
その姿に一気に親近感を覚えたのだ。
もちろん彼らは、先程ヴェロニカへの非難を囁き合っていたことなど覚えてはいまい。
「私は肌が弱いので、日陰から監督として皆様をサポートしております。ミランダさんは運動神経もよく、平民として暮らしていた経験から競技の知識もある、私たちのエースですの。
取り囲んでいたのは、責め立てていたわけではなくてミーティング。皆でプレーの改善点を話しあっていたのですわ。
水魔法をぶつけたのはサーブ練習です。初めの頃、ミランダ様は上手く水魔法を使えなかったので、皆でウォーターボールを出して扱いに慣れてもらいましたの。」
王太子の脳内にあった恐るべき嫌がらせのイメージが、ガラガラと崩れてゆく。
「しかし……しかしだな、簡単に落ちてしまうような不安定な船に乗せたというのは、何のためだ?」
苦笑しながらその問いに答えたのは、張本人のミランダだった。
「あれ、思いっきりわたしの失敗なので、お恥ずかしいです……。」
チームメイトは声援を送る。
「失敗なんてとんでもありませんわ!」
「あの時のミランダの勇気、最高でしたわ!」
ミランダは手で顔を覆った。
「いやもうほんと、やめてください皆様……。
殿下、実はあのボートは足腰とバランス感覚を鍛えようと、わたしが頼んでヴェロニカ様に用意していただいたんです。
砂の上でも安定して動くために。」
照れながら紡がれるミランダの告白を後押しするように、ヴェロニカは彼女の頭を撫でた。
「ミランダさんの熱心さには頭が下がりますわ。
わざとすこし不安定に作ったボートの上で立つ特訓だなんて、私たちには到底思いつきません。」
「自分から言い出したのにあっけなく転覆しちゃって、本当に恥ずかしかったです……。」
「でも諦めずに練習して、最後には5分間も立ち続けられるようになったではありませんか!」
身分の差など微塵も気にせず調子良く言葉をやり取りする2人を見て、王太子は少し考え、項垂れた。
「俺の、思い違いだったようだな……。」
ヴェロニカとミランダは顔を見合わせる。
確かに彼はヴェロニカを一方的に悪人と決めつけ、糾弾した。
野次馬の中でも、だいたいの状況が読み取れた者は彼女に同情の目を向けている。
そのまま王太子は居住まいを正し、浅く頭を下げた。
「悪かった。」
簡素な謝罪。
しかし、この国で将来最も高い地位につく男が衆人環視の中行う謝罪としては、決して軽いものではない。
ヴェロニカは深く理解していた。
「良いのです、殿下。」
だから彼女は、あっさりと許した。
「私たちの行いが……ほんの少し、貴族令嬢の常から逸脱していたのは事実。誤解しないほうが難しいでしょう。
婚約破棄については少し早まったことをされたと思いますが、所詮はこのビーチの中で宣言されただけのこと。
ここにいる方々さえ、『すこし派手な白昼夢だった』と思ってくだされば問題ありません。
皆様、かまいませんね?」
ミランダの気心知れたチームメイトたちはもちろん、野次馬の面々も笑顔で頷く。
ビーチに遊びに来たと思ったらいきなり王太子が婚約者と言い争い始め、しかも彼女が放ったウォーターボールを別の令嬢が見事なスパイクで撃ち落としたのだ。
状況が破天荒すぎて、夢とでも言わなければ誰も信じてはくれまい。
「ほら、殿下。なんの問題もございませんよ。」
楽しげに全てを力ずくで収めんとするヴェロニカに、王太子は慌てて取りすがった。
「いや、婚約破棄が成立するかどうかの問題だけではない!
何よりお前のことだ。
先程、俺はくだらない誤解からお前の名誉を踏みにじった。
お前の心を、傷つけてしまったのではないか?」
公爵令嬢は少し黙って、目を見開いた。
王太子が自分の心を思いやってくれることは、彼女の想定の外にあったのである。
彼女はゆっくりと目をつぶって首を横にふり、答えた。
「私が、良いと申し上げているのです。
先程、殿下は『平民上がりだからといってそのような辱めが許されるものか』、とおっしゃいました。
私は嬉しかったのです。
このところ私が考えていたことと、一致いたしましたので。」
穏やかな表情で、婚約者の目を見つめる。
「学び舎を一歩出てこれまで知らなかった身分の違う方々と触れ合ってみると、いつも驚かされます。
彼らがもつ力強さに。
暮らし向きが安定せず、苦しい者もいるでしょう。
それでも、厳しい冬を耐え、春の訪れを祝い、暑い夏がやってくれば、太陽を全身に浴びてこれを楽しむ。
この情熱を強さと言わずして、なんとしましょう。
身分に甘んじることなく、彼らの情熱を取り入れ続けることこそ、これから国を導く私たちに必要なこと。」
周囲は静まり返っていた。
面白半分で見物していた者たちも、思わず聴き入っている。
ヴェロニカの声は、ただ波の音だけに包まれていた。
「殿下が人を身分で差別することなく、かつて平民だったミランダさんのために怒ってくださったことが、私には嬉しいのです。
私たち、同じ方向を見ているのですね。
きっと今後、国王と王妃として、よい国を作るために共に努力ができるはず。
ですから殿下、もう謝罪なんておやめくださいませ。」
ヴェロニカの言葉の全てが、王太子にとって新鮮だった。
初めて触れる、彼女自身の考え。
一つ一つ噛み締めて、彼は真摯に婚約者に答えを返した。
「婚約破棄も、お前を王妃に相応しくない、と言った言葉も撤回させてくれ。
お前の考えは本物だ。
お前は、この国を導く王妃に相応しい。
謝罪は良いと言ってくれたが、俺の気がすまない。何か詫びをさせてもらえないか。」
「ありがとうございます、殿下。
それでは、一つだけお願いをさせてくださいませ。」
そしてヴェロニカは真剣に、その望みを語った。
「今年の大会、私たちは本気で優勝を狙っています。
将来のことは抜きにしても、今私が情熱を注ぎたいのは、仲間と戦うウォーターボール・ビーチバレーなのですわ。
私が賭けたい青春は、ここにありますの。
どうか殿下、私たちを見守って──応援してくださいませ。」
一気に言い切って、悪戯っぽく笑ったヴェロニカ。
王太子はなぜか、その白い歯が目に焼き付いて離れなくなった。
観衆から、まるで雄叫びのように力強い声援が上がる。
王妃となる自らの運命を受け入れ、民を愛しながらも、己の青春に情熱をかける少女。
彼女と彼女の仲間たちの戦いは多くの人々に見守られ、今この砂浜から始まったのであった────。
翌週開催されたウォーターボール・ビーチバレー大会に意気揚々と参加したヴェロニカたちだったが、一回戦であえなく即時敗退となった。




