6話 ダンスロボットダンス【前編】
「ハァ…ハァ……ここまで来ればもう大丈夫にゃ」
「ここって……愛子さんのご自宅……?」
「そうにゃ!上がってってにゃ〜
あ、時間大丈夫だったかにゃ?」
「は、はい、全然平気です!
魔法少女御一行(内、一人は普通の人間だけど)
は怪物を倒してから通行人にバレない様に
ゼェゼェ息を切らしながら逃げて来た。
セミロングに伸ばした夏凛の髪の毛はボサッと乱れ
自慢の白い肌も思い切り走ったからなのか
紅色に火照ってしまっていた。
「あの〜愛子さん、下ろしてもらえないでしょうか?」
あれから薫は歩けなくなりバタリ、と倒れ
愛子がお姫様抱っこここまで運んで来てくれた。
私より一回りでかい身長で一言で言えばモデル体型
こけしの生まれ変わりと小さい頃にからかわれて
ソレが成長した様な私と違う、真逆なモノを持っていた
愛子に私は目を惹かれた。
(愛子ってよく見ると、綺麗な目してるんだな)
死んだ魚の目の私がジッと愛子を見つめる。
「な〜にジッと見てるんだにゃ」
「うっさいなぁ、さっさとおろせ!」
第1にお姫様抱っこていい歳して恥ずかしすぎる。
なんでおんぶで背負う選択肢はなかったのか。
体重が軽いから? 確かに50はいっていない
問題はそんな事ではない、女の子の夢
お姫様抱っこを無意識のうちに達成できたからだ。
達成、といっていいのだろうか。
同性に しかも異性の前でお姫様抱っこ。
女の子らしい事に興味がないと強がってた
私は自分の思考に疑問を持っていた。
赤面が収まらない。
姫乃愛子は私にとって唯一対等に接してくれる親友
授業態度は不真面目で大食いで、少しデリカシーが
欠けているけれど大事な所で私を護ってくれる。
「お、おぉ……!?」
「家の中が寒くなってきてますの…!」
「おーろーせつってんの!!」
愛子がいなかったらきっと今頃私と夏凛
は公園でのたれ倒れている所を発見され
国に保護、いや確保されていただろう。
夏凛の瞳には人前でいちゃついてる二人が
うつっていた。愛子に惚れてた夏凛だが
もういちど自分の胸に心を置いて考えてみると
その感情は恋ではなく、憧れ。
ハンカチを拾ってくれた時から、いや
誰にでも対等に接している愛子を見ていた時から
自分は女性である愛子を尊敬していたのだ。
「寒いから降ろすにゃ、夏凛ちゃんは
驚いたり恥ずかしがると冷たくなるから
面白いにゃ」
「寒いと思うならさっさとおろせ! もう!」
「すまんにゃ〜……」
この4ヶ月 薫達の周りは寒く 凍える事は無かったが
昨日から魔法少女特有の感情の表れが目に見える様になった。
つまり薫は今まで自分の本当の気持ちを殺していたと言う事
なのか、愛子は少し心配になり。
同時に寂しく 哀しくもなった。
「あの、お母様とお父様にお友達を
家にあげると確認取らなくてよろしいのでしょうか…」
「あー……両親いないから、大丈夫だにゃ
居間で話すにゃ、ここじゃ寒いし」
「で、でもいいのでしょうか」
「まぁ人の家にもいろいろあると言う事で」
愛子家は街の中にある一軒家で中は案外広い。
一人で生活しているからか、愛子の性格なのか
ゴミはそこら辺に散乱していて異臭もする。
高校生の女の子が一人暮らしして良い部屋とは
決して言えない、けれど薫は慣れていた。
何度も 何度もこの部屋に訪れていて
あの事件が起きた日から欠かさず通っているのだ。
ゴミを掻き分けながら愛子は後に続く二人を
居間へと案内していた。
ゴミ屋敷 こう例えるのが一番この現状を分かりやすいだろう。
夏凛はゴミにつまづきながら、薫は慣れた足付きで
愛子の後を追う。
「あの、こう言う事言って良いか
分かりませんけど……凄いですのね」
「にゃはは〜まぁにゃ〜」
「片しても片しても愛子はすぐ汚すし
もう諦めたわよ」
やれやれと薫はため息をついてまるで
私が一番愛子の事を分かっているような顔をし
それを見ていた夏凛は嫉妬に似た感情を覚えた。
「お…?なんかゴミが浮いてるにゃ!?」
「へ!? いや、すいませんですの!!」
「夏凛ちゃん急にどうしたの、平気?
この家の惨状に驚いたのかな」
「そりゃないにゃ!」
「違いますの〜!」
誤解を解く夏凛の声が愛子家に響く。
揶揄い甲斐のある奴だ、と薫は心の中で笑い
顔がほころぶ、識をからかって遊んでいた
昔のあの気持ちが少し蘇った気がした。
「ここ、居間ですの……?」
「そうにゃよ〜 え、そんなに驚く?」
「無理もないでしょ、廊下と同じ感じなんだから」
居間は廊下から雪崩れたゴミが侵食し
部屋全部がゴミ箱と化していた。
「こりゃ掃除が必要ですの……」
「え、今!?」
「今、居間でかにゃ!?
面白いにゃ」
「つまらないギャグ言ってんじゃなくて……
さっきの怪物の事について話さないと
明日に引き伸ばして何か起きたらどうするの」
「何かもなにもありませんですわ!
こんな部屋じゃお話もできない
パパパっと片付けますのよ!」
「だ、大丈夫だにゃ夏凛ちゃん
また私が汚しちゃうし……」
「ダメですの!愛子さんに清潔さという
概念をしっかり脳裏に叩きつけてやりますの!」
夏凛は歯磨きをしっかりやるだけではなく
極度の綺麗好きであった、愛子家に入る前から異変に気づき
中の惨状を見て驚愕し、居間は流石に片付けられている
だろうと自身に言い聞かせていた、けれど同じ様な感じの汚さに
とうとう我慢の限界を迎えさっきまで怪物と戦っていたとは思えない
流れで掃除をはじめた。
「まぁちょうど片付けしたいと思ってたから良いにゃ
このまま夏凛ちゃんに任せて…」
「二人も手伝うんですの!」
「夏凛ちゃんって綺麗好きだったんだね……」
「にゃ〜…片付けきらいにゃ……」
☆
「ふふふ……あーしの開発した機械
【まほーしょうじょ探索機】があの家から
2つも信号を受信してるじゃねーですか」
「これで私以外の魔法少女を発見して、捕まえて
政府に売ればあーしはお金持ちですよ……!」
「けど、抵抗されたら嫌ですので……作ってきました!
じゃじゃーん!【まほーしょうじょナレール】!
いやーあーしは天才ですね………!」
「これを腕につけて合言葉を認識させれば……!
くふふ……!」
「今、魔法少女って言ったか?」
「!? 誰だ!」
「桜、こいつ魔法少女らしいで」
「他人の家の前であんな大声出してたら
気づかれるっつーの」
「まさかお前たち、政府の…!!」
「あ、知ってるんや」
「あーしが捕まってどうする!装着!変身!!」
「うわ!? なんや?! 辺り一面
白煙で覆われて…! 桜! 大丈夫か!」
「大丈夫…!それよりアイツは…!」
「ダメや…いなくなってる」
「そう………まぁいいわ、怪物の跡処理もできたし
早く帰りましょう、怒られてしまう」
「そうやな……」
「危なかったじゃねーか……
あーしが開発したまほーしょうじょナレールで
透明にならなければ連行されて殺されていた……」
「って、やばいやばい!もう充電切れる!
くそっ……一旦帰って充電しなおしだ……!」
私は一体何を書いているのか、これがわからない。