5話 ススメ☆オトメ【前編】
「今日は雪が降ってなくて歩きやすいにゃ〜」
「そうねぇ、でも不思議だよね
この積もってる雪って凍りはしないんだよね」
「そういえばそうですの、氷で滑った事
なんてありませんし………」
3人は6限目の授業を終え、帰宅している。
今日は女装男子 夢咲 夏凛 を彼の自宅
街外れにある一軒家へと送る約束をしていた。
「でさ〜夏凛ちゃんってなんで女の子の格好
しているんだにゃ?」
「へぇっ!?」
「いやデリカシーなさすぎるだろ愛子
ごめんねほんと…言いたくなかったら
言わなくても良いからね?」
これは彼女らに魔法少女の事を聞き出すチャンスなのかもしてない。
夏凛は魔法少女に憧れを抱いており女性の格好をしている。
そして薫と同じく「ヒーローに憧れている」人種なのだ。
(本当に薫さんが魔法少女だとしても
僕が魔法少女である事がバレたら………)
そして正真正銘、魔法少女である。
「いやぁ〜あはは…趣味……ですの」
性癖でも趣味でもない、魔法少女が好きだから。
けど今は自分の正体を隠している。
同じ仲間ができる そんな想いは間違っているのかもしれない。
薫も同じ考えであった。
夏凛の素性はわからないが初めて自分以外の魔法少女に出会えた
その感情は喜びであり 夏凛も内心は喜んでいるのである。
なぜ魔法少女である事が薫の中で確定しているのか?
(す、すごいにゃ………!!)
愛子はなぜ、二人の感情を分かりきっているのか?愛子もまた
魔法少女であるから、というわけではない。
(周りが冷え切って雪が浮いているにゃ……!!)
感情が丸見えなのである。
「へ、へぇ趣味なんだ〜……あれ、なんか雪浮いてない…?」
「き、気のせいですの〜…なんか一段と寒くなってきましたの…」
(バレバレだにゃ……こりゃわかる人に
見られたりでもしたらまずいにゃ!)
「2人共、ちょっとそこの吉野家でお茶でもしてくにゃ!」
「あ、うん…吉野家って選択肢しないのがつらいわねこの通学路」
「で、ですの〜………」
二人の気をそらすために店内へ誘う。
(薫ちゃんは感情を出すのが下手なのは分かっていたけれど
夏凛ちゃんも同じだとは思わなかったにゃ……!)
愛子はこれから二人の監視役……世話係になるのかもしれない。
と、内心思っていたが嫌ではなかった。
☆
店内は空いており、CMでよく耳にするあの曲が
リズムよく響き渡る。
「人工牛丼美味いにゃ! 科学の味にゃ!」
「思ったけど2時間ちょっと前にお昼食ったのに
まだ食える愛子凄いわね」
「ぼく…あ、いや私は水だけで結構です…の……」
「私も水だけで良い」
日本の雪から取れる水は昔の雪の成分とは違い
完全綺麗な真水になる、安心して飲んでください。
と言わんばかりに見た目は透き通っており嫌な臭いもない。
という事は置いておいて、愛子は困っていた。
(この二人を合わせておくととんでもないことに
なりそうにゃ……
これは一回魔法少女から話題を話そうかにゃ)
「そうだにゃ、夏凛ちゃんは魔法少女なのかにゃ?」
「ブーーーーーッッ!!!」
夏凛が吹き出した雪解け水は容赦なく薫の顔に
降りかかって行く!
「ぃぃぃぃ…!!」
「あ、ひっ、ひっ、ぼくぼ、僕ッ
ごめんしゃい………あぁああ…!!」
そして!なんの前兆もなく発言した愛子の言葉が
夏凛の心臓に突き刺さる!深く、心の臓まで!
零した水が夏凛の周りに浮き、愛子の人工牛丼までもが
浮いてしまっていた、大体3cm程度は浮かせられるのだろう。
(愛子!馬鹿じゃないのあんた!!)
(やっべにゃ、やっべ〜死のうかにゃ)
(まず声でかいのよ!! お客さん私達以外
いなかったからよかったけど!バレたらやばいじゃない!)
夏凛は大きな声を抑え、静かに口を開く。
「は、はは…バレてましたか………ですの…」
「へ?」
「まぁ…雪が浮いてた時から薄々……」
「案外あっさり認めちゃったにゃ……」
「場所移動しますの、店員さんもいるし」
☆
意外にもあっさり自分の正体をさらしてしまった夏凛。
感情が全身に浮き出ると、文字通りモノを浮かしてしまう。
「それじゃ、見ててくださいですの……っ!」
公園に移動した3人は夏凛の能力
いや、魔法を見せてもらっている。
「すごいにゃ…!」
「まるで魔法使いみたいね……」
「いや魔法少女だからそれでいいんにゃ」
夏凛が枯れ木に向かって手を伸ばし、力を入れた
と思った瞬間枯れ木が15cm少し浮いて
こちらへフラフラしながら浮遊してくる。
「っハァ………ぅ…」
「大丈夫!?夏凛ちゃん!」
「大丈夫…ですの………」
「前に薫ちゃんが変身した後と同じ症状にゃ…」
「鼻血出てるよ夏凛ちゃん! ティッシュ!」
魔法を使うと身体的に悪い方の症状が出てしまう。
薫は嘔吐 夏凛は鼻血…貧血か?
お互い運動不足という点は否めないが
それとこれとでは疲れの様子が違う。
「これで……本当に私が魔法少女であると
信じていただけましたの……?」
「信じないわけないでしょ?!」
「そりゃあ信じるにゃ!でも、なんでそこまでして
私達に証明をしたかったんだにゃ…」
「しかも感情を表せてもないのに魔法を使えるなんて…」
魔法少女は感情を出してはいけない、魔法が誤作動するからである。
しかし夏凛は悲しんでもないし楽しい様子もない。
「薫さん……ハァ…ッ……も、魔法少女ですよね?」
「どうしてそれを…………」
「今……僕達の周り…ッすごく…寒いですの…」
「薫ちゃんは感情が高ぶると寒くなるんにゃ…
さっきの帰り道から薫ちゃんが魔法少女である事を
分かってたんだにゃ…」
薫が感じている感情は、驚きだった。
「夏凛、あなたもこの事を隠して生活を……」
「……まぁ…そういう事になりますの……ハァハァ…」
『仲間』
そう確信をした、自分意外にも魔法少女がこの街にいる。
しかも同じ条件下の中生きてきた、ひとりの男の……
男の子の…。
「なんで男の子なのに、魔法少女に……」
「薫さん、僕 魔法少女が好きで 昔から…
ハァ……ゥッ…」
「夏凛ちゃん、落ち着いて話すにゃ」
「スー………ごめんなさいですの…」
二人の女性に介抱されて落ち着きを取り戻す。
彼はもう、2人の事を恐怖の対象として見ていなかった。
「魔法少女が好きで、ずっと…ずっと
その存在に憧れていましたの
小さい頃は男なのに女の趣味してるって
笑われたりもしたけど
でも、私が見ていた世界はキラキラして
とてもきれいで……」
夏凛は喋り出すと止まらないタイプであり。
「普通の魔法少女は生理が来たと同時に
なれるものだと聞いていましたの、でも…」
「その………精通…してから………
魔法が使える様になりましたの………」
重大な事実も隠し持っていた。
「精通…?」
「えぇ……え、えぇ?」
女性である薫と愛子、彼女達はその事実に驚愕し
二人で顔を見合わせた。
「まぁー……男の子だもんね」
「この時期に精通は遅いほうだと思うけどにゃ…」
「うぅう……」
時刻は5時を周り、あたりは暗くなっている。
扉絵を追加しました、よろしくお願いします。