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魔法少女のクズ  作者: あづまさくら
8月【1章】
5/8

4話 LOVEずっきゅん

「おはようございますですのー!」

「おはよおはよおはよですのよ〜!!」

「今日も寒いですのね〜!」

「歯磨きしますのー! フンフンフフ〜ン」


彼の名前は夢咲 夏凛(ゆめざき かりん)

華奢な身体に整った顔、胸は…ない方。

ですの口調は最近自身のキャラを変える為に考えた。

そんなお気楽な彼にも一つ、悩みがある。


「良い一日は良い歯磨きから始まりますの!」


歯磨きにうるさい点ではない。

彼は人一倍健康に気を使っているだけであって

悩みのタネは別。


「さってっと、今日の朝ごはんはオムレツですのよ〜!」

「ユーチューブで商品紹介してたから

つい買ってしまいましたの……!」

「ブゥゥッ〜ン!シュパコーン!オムレツ機〜ッ!」


そう、独り言が多いのである。

誰一人いない街外れの一軒家で虚空に向かって話しかけている。


「ん〜!美味いですの!」

「あら、また独り言を……」

「…一人じゃないですものね! ママ!」

「はいママの分!…? え?夏凛にばかりご飯作らせて

ごめんねって……?」

「良いんですのよ!ママは身体が悪いからしゃーないですの!」


虚空、いや

母親の死骸に向かって。


「じゃあ学校に行ってきますの!」


死後何ヶ月か経った母親の死骸を後に

夏凛は今日も学校へ向かう。


2054年 8月3日

彼のクラスは1ーA

「おはようございますですのー!」

朝一の挨拶は死ぬほど大事という勢いで。

ある程度離れていても耳が壊れるんじゃないかという程に

うるさく 大きな声で自分の存在をクラスに伝える。


そんな彼の

クラスでの評価はというと。


「うっわ……」

「………きつ…」


少し、嫌われ者であった。

性格に問題があるからなのか、はたまた別の事で

嫌われているのか。自身は明確に嫌われる理由が分かっていた。


「今日も皆冷たいですのね、まぁいっか」

「ひゃう!朝一の椅子は冷たいですの、スカート履いてると

これが嫌になっちゃいますの…」


そう、彼は男の娘 悪く(?)言えば「女装男子」なのである。

黙っていれば美少女、しかし喉を通って出るのは

声変わりをした男子声。


「おはよー」

「おはにゃ〜!」

「あ、姫乃さんおは…」

「葛宮さんも一緒じゃん…」


そんな彼には前々から気になっている人物が2人いる

「葛宮 薫」と「姫乃 愛子」だ。

この二人はいつもくっついて生活していている。

クラスの人気者 愛子 クラスの嫌われ者 薫

なぜ二人は仲がいいのか?

高校入学当初からこの二人は姉妹の様な感じで

みんなが友達集めに必死の時期にはもう1番に仲が良かった。


(薫さんは4ヶ月前、氷を纏って人を殺していたと

クラスの人が言っていたけれど、本当に……)

(本当に魔法少女なのか?!)


彼にとって嫌われ者や人殺しの薫は眼中になく

「魔法少女」だけが目にうつっていた。

そう、その感情は憧れなのである。


「気になりますの〜…でも声かけられませんの…」


独り言が多い 声がでかい 女装

三拍子揃った変人の彼はもう一つ弱点があり、それは。


「な〜に私たちに向かって独り言ぶつぶつ言ってんだにゃ」


「あああばばばばばばっばぃぃいひっひひぃぃ!!」


「いやそんなに驚かなくてもいいんじゃ…」


女性恐怖症なのである。

なんで女性恐怖症なのに女装をしているのか。

いつか、自分も憧れの魔法少女になったからには皆に夢と希望を与えたいから。

幼い頃の想いを今も抱き続けている夢見る乙女おとこだから。

そこに一つ、彼の運命を変える出来事が起こる。


「ひーひーふー…ひーひーふー…」

「ラマーズ法やりだしたにゃ薫ちゃん」

「面白いねこの子」


(聞いてない!聞いてないぞ!なんであっちから話しかけてくるんだ!)

(落ち着け私!落ち着け……!)


「ど、どっどどどどうしたんですのののの?」

「落ち着けにゃ、はいハンカチ」

「え…?」

「これ、夏凛さんのハンカチでしょ?落ちてたよ」

「な、なんで私のだってわかったの……?名前、書いてない…」

「だっていつも大事そうに使ってるじゃん!にゃ!」

「へ……?」

「一限は移動授業だから遅れないでにゃ〜!

あ、置いてかないで薫ちゃん!まってにゃ!!!」


夏凛が恐怖の対象である女性の愛子に惚れるには

十分すぎてありきたりな展開だった。


友花高校食堂

ここで出てくる食べ物は良くも悪くも味は普通

不味くはないし上手くもない、空腹の腹を満たす

その行為を機械的に行う場所である。


「やっぱここの料理はおいしいにゃ〜」

「また愛子カレー食ってんの?」

「美味しいから仕方ないにゃ!」


愛子だけは違った、彼女は食べ物に感謝し

皿を舐めとる勢いでいつもカレーを平らげる。

カレーばかり食っている愛子に呆れながら

薫も、昼には必ずラーメンを食べる。


(いつもカレーを食べていますの………

カレー好きなんですの…?野菜なんて高価な物も

入ってないし人工の肉と加工されたスパイスだけの食べ物を

あんな美味そうに食うなんて……)


夏凛は愛子のストーカーと化していた。

それは置いておいて

季節を失った日本では野菜が高価な食べ物になっていた。

天気は雪か曇り、太陽の光なんて届きはしない。

そんな状況で植物が育つわけがなく、野生動物も活動できないため

肉は科学の力、人工で作られる。

スパイスは海外から取り寄せれば良いのだが庶民の手には渡らない

高価だからである。


(あぁ……私も真似してカレー食べてるけど

科学の味しかしませんの……)


「あっれぇ〜夏凛ちゃんじゃん!」

「あ、ほんとだ 今日よく見かけるね」

「お〜い!夏凛ちゃん!一緒に食べるにゃ!」

「へ、へっへぇぇ〜??!」

(変な声出ちゃったよ……!!どうしようどうしよう!)


「なに慌ててんだにゃ、よいしょっと」

「おあわあああわああぁいぃい???!」

「ちょっと愛子、食事中に席移動しないでよ…

前の席失礼するね!夏凛ちゃん」


食堂は四角形のテーブルが何十個かあり

その周りに椅子が前3つ後ろ3つに置かれ、相席で食う事になる。

愛子と薫は夏凛の存在に気付き前の席に座った。


「夏凛ちゃんもカレー食べてるの?」

「は、い、食べてます!カレー」

「美味しいよにゃ〜それ!何杯でもいけちゃうにゃ」

「こんな不味い食べ物美味しそうに食うの愛子くらいよ

食事なんて空腹を満たして身体を暖かくする事くらいしか役に立たないわ」

「そんな酷いこと言って〜!めっ!にゃ〜!」

「は、はは〜…………」

(やばい、女の子となに話していいかわからない…!

……そうだ!)


「き、昨日の帰りなんか慌ててたみたいだけど

なにかあった、の…?へへ、ごめんね、いきなりこんな事聞いちゃって

わた、わ、たし駄目だよね……」

「………あにゃー………」

(言っちゃ不味かった……ですの……?)

「……今日一緒に帰ろうよ、夏凛ちゃん」

「ふぇ?」

「3人で!夏凛ちゃんって街外れの家なんでしょ?

知ってんだにゃ〜我、知ってんだにゃ〜」

「我ってなによ愛子……夏凛ちゃんを家まで送ってってあげる」

「へ? 僕の? 家に?」


やばいやばいやばいやばい!!!!!

こんな事想定していなかった!!

慌ててたら一人称が僕になった!!

友達…かはまだわからないけど

を家にあげるなんて!!部屋は汚いしゲームもなにもないし。

昨日から脱ぎっぱなしにしてあるパンツもある!

なんでいきなり!? もしかしてからかってる?!と、

とにかく片付けてからじゃないと……それに………


ママもいるし……。


「ご、ごめんですの お母さんがお家にお友達を

連れてきては駄目と仰ってたので……」

「お家に上がらせてもらうなんて一言も言ってないにゃ」

「あ、ひぃ、ふーっふー」

「おちついて夏凛ちゃん、私たちそんな怖い人じゃないから

お家の近くまで送らせてもらうだけだよ」


焦ったぁ〜〜〜〜〜!!!!

ママの事バレたら、もう生きていけない。

よかった、よかった……。



「じゃ、じゃあ放課後、下駄箱の前で待っていますの」

「待っててね〜! 絶対だよ! 愛子とのお約束! ハグ!」

「あぁああああぁああぁあ!!!!????」

「ハグ魔かおのれは、ごめんね〜夏凛ちゃん

ほら、行くよ! 愛子!」

「あー薫ちゃん!酷いにゃ〜……

じゃあまた放課後にゃ!」


愛子さんは薫さんに引きづられて去って行く。

女性恐怖症の僕は愛子さんに触れても、嫌な気分はしなかった

女性特有の良い匂いがした 柔らかかった。

もっと、触れて欲しかった。

彼女たちと選択授業は別にとっており

私は違う教室に向かって歩いていく。


(もうこれは友達って言って良いのでは……?)


夏凛は初めてできた友達に夢中になっており

魔法少女の事なんて、忘れていた。



「夏凛ちゃんは面白くて良い子だにゃ〜」

「愛子はベタベタしすぎなのよ」

「お?ヤキモチかにゃ?」

「うっさいなぁ」

「二人とも可愛いにゃ〜愛子ちゃん

モテすぎて困っちゃうにゃ!」

「………それより、昨日助けた女性が言ってた

男の声がする魔法少女って本当に……」

「夏凛ちゃんだと思うにゃ」

「私が魔法少女だったって事バレなくて済んだけど

もし本当に夏凛ちゃんが魔法少女だとするなら

おかしいよね?」

「夏凛ちゃんが慌ててた時に周りの食器が少し浮いてたの

気づいてたかにゃ?」

「え、そうなの?」

「薫ちゃんは駄目だにゃ〜、薫ちゃんだったら周りが寒くなったけど

夏凛ちゃんは物を浮かしていた

つまり重力の魔法少女であるに違いないにゃ!」

「重力かは分からないけど、魔法……少女である事には

違いなさそうね」



昨日、怪物から助けた女性が目を覚ましたのは

あれから1時間20分過ぎた頃だった。

「この前も怪物に襲われかけた時に

男の子の声がして目の前にはゴスロリの服を着た魔法少女がいて

助けられたの」

「この前も!?おかしいにゃ……」

「こんな事ってあるのかしら…

しかも、男の子の声がする魔法少女?」

「はい、ゴスロリの魔法少女は

たしかに男の子でした、声だけでしか判断できなかったけれど……」


ゴスロリ 男の子

この二つに共有する人物が一人いる。

夢咲 夏凛だ。

友花高校は制服は支給されるが基本的に服装は自由

薫や愛子はいつも支給されている制服を着て生活しているが

夏凛はたまにゴシックアンドロリータ つまりゴスロリな服装で

授業に出る

クラスに一人だけ目立った服装の人間がいてしかも男性

顔立ちはそこらの女性より整ったほうではあるが

やはり、異常であり 記憶に残る光景でもある。


「最近また怪物が現れてたって事は…

夏凛ちゃんに聞けばなにかわかる事はあるのかもしれない」

「そうだにゃ、政府に隠して生活している魔法少女…?

が薫ちゃんの他にもいるって事も確認しておきたいにゃ」


もしかしたら怪物についてなにかしら知っているのかも。それに

学校に通ってるという事は政府非公認の魔法少女である事が確定し

薫と同じく、周りに事実を隠して生活している仲間である

のかもしれない。


「男の娘魔法少女、これはなにかしら裏がありそうね」

「あるかにゃ〜?」

男の娘魔法少女は少し無理があったかもしれません。

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