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2-2


 辿り着いた場所は、やはり図書室。

 昨日と同じく入り口からは死角となる窓際の席で、貴久は一人気持ちよさそうに寝息を立てていた。

「やっぱりなぁ。麻美とアホなケンカやってるんじゃなかったぜ」

 尋史はここにきてやっと洋輔の肩から降ろされた。

「ったく、しょうがねぇな」

 洋輔は自分の学制服を脱ぐと、貴久の肩にかけてやる。春とはいえ、うたた寝していれば風邪をひくことだってある。世話好きの洋輔らしい行動といえよう。

 眠っている貴久は子供のように見えた。

 尋史はこのまま貴久が目覚めてくれないことを心の中で小さく祈った。

「じゃあ、オレたちだけで始めっか」

「始めるって、まさか?」

「決まってんだろうが」

 洋輔はズボンのポケットの中から輪っかになった黒い毛糸を取り出す。もちろん、あやとりをするために。

「あ、あの、質問していいですか?」

「何だ?」

「斎木さんが言ってましたけど……」

「どっちの?」

 思わず突っ込まれて、狼狽する。

「オレか? 麻美か?」

 やっと洋輔の突っ込みの意味を理解する。

「あ、すいません。麻美さんの方です。それで、あやとり同好会は学校から認められてないクラブだって」

「そうだ」

「………」

 きっぱりと言い切られて、尋史は一瞬言葉を失った。

「オレは学校のクラブ活動だなんて一度も言ってないぜ。これはオレたち個人の趣味だ」

 洋輔や貴久には不似合いな趣味だと思いながらも、尋史は反論することができなかった。

「というわけで、これはお前の分だ」

 洋輔から赤い毛糸を渡される。尋史は観念して、洋輔の前に座った。そして、子供の頃を思い出して、ほうきや二段ばしごを作ってみた。


 久しぶりにやっても覚えてるもんなんだなぁ。


 尋史はちょっぴりだけうれしかった。

「ヒロっ!」

 顔面蒼白な顔をして、洋輔が勢い良く立ち上がる。

「す、すいませんすいません」

 条件反射で思わず謝ってしまう。

 洋輔はがしっと尋史の両手を握り締める。心なしかその双眸が涙でうるんでいるように思えた。 

「ヒロっ!」

「は、はい!」

 緊張のあまり声が上ずる。

「二段ばしごの作り方教えてくれっ!」

「は?」

 目が点になる。

「オレってスポーツは得意なんだけどよ、どうしてもあやとりができねぇんだよ。頼む、オレに教えてくれ!」

「教えるもなにも、これぐらいなら幼稚園児でもできますよ」

 洋輔のバックに稲妻が走ったのが見えたかと思うと、洋輔は隅っこの方で膝を組んで小さく縮こまった。

 滝のような涙をだーだーと流しながら、

「どうせ、オレは幼稚園児以下だよ。宇宙一手先が不器用な男なんだよぉぉぉぉぉぉぉ」

 地の底深く落ち込んでいった。

「あ、別に僕はそんなつもりで言ったのでなくって。誰にだって向き不向きはありますから……」

 慌ててフォローしようとするが、いい言葉が浮かんでこなかった。

「教えます。教えますから、浮上してきてくださいよ」

 半ばやけくそだった。だが、洋輔は見事に浮上してくれた。がしっと尋史の両手を握り締める。双眸は感激の涙で潤んでいた。


 たかがあやとりにここまで一生懸命になれるなんて。


 尋史は深い深いため息をついた。




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