【恐怖】
魔王ディフェルの世界征服
第7話:【恐怖】
とある少女は走っていた。
なぜ走っているかというと、それは数時間前に遡る。
ウィルがオークの巣に入る前、少女はオーク達に犯されていた。
が、それでも誰かが助けてくれるかもしれない。そんな希望を持ちながら耐えていた。
そんな時、出入り口の扉が勢い良く外され、外から何かよくわからない動物の死骸を持った少年が入ってきたのだ。
その少年は次々とオークを倒していった。
その時見えてしまったのだ。少年が持っていたのは動物の死骸ではあるが、人の死体だったのだ。
そして、つい声を漏らしてしまった。
自分の声が聞こえたのか、少年は自分の方を向いた。
まだ……まだ自分が助かるかもしれない。
希望を捨てきれず話しかけてみたところゴミを見る目で
「匂いが服に移るから話しかけるな」
と言われた。
その時から少年が悪魔にしか見えなくなった。
あの少年は人の皮を被った悪魔だ。
このままだと近隣の町が滅ぼされるかもしれない。
もしかしたら………大事な家族が殺されてしまうかもしれない。
そう考えた少女は走り出した。
──悪魔の存在を知らせるために。
その悪魔は今どうしているかというとゴブリンの巣までやってきていた。
「さて、ここのゴブリンは従ってくれるかな」
ゴブリンの巣に足を踏み入れた。
暫く階段を下り続けると第1ゴブリンと出会った。
《お前は誰だ》
《俺はウィル。ダンジョンマスターだ》
魔獣言語で話してくるゴブリンの問いに答える。
《この村に何の用だ》
《ダンジョンの戦力確保のため勧誘だ。もし、こちらに従うのであれば住処はもちろん食糧はくれてやろう。ダンジョンに貢献したゴブリンが望むのであれば女だってどこかから攫って来よう。どうだ?》
ゴブリンは暫く黙り込んだ。
そして、《長に相談する》と言ってこの場を去っていった。
ゴブリンが去ってから少し時間が経った時、何か怒鳴り声が聞こえてきた。
《なりません!!長!!人族と取引しては!!いつ裏切られるかわからないのですよ!!》
《ムガロ、長が決めたことだ。黙って従え》
《そんなわけにはいきません!!人族は醜い生き物なのですから!!》
ゴブリンはウィルのことを人族だと思っている。が、今となっては間違いだ。あの時融合を遂げたウィルは人間ではない。魔神だ。
《待たせてしまって申し訳ない》
《次から早く来てくれるとありがたい》
《貴様!!》
ゴブリンの長?に無礼な態度を取ったせいかその横にいるゴブリンは声を荒げた。
《待て。ダンジョンマスターと名乗ったそうですが、それは本当ですか?》
《本当だ。ここから少し離れたところにダンジョンがある。と言っても生まれたてだから戦力がなければすぐに攻略されるだろうがな》
《証拠を見せろ。と言っても見せれないのは知っています。ですが、貴方は私達を養えますか?》
《養える。作物とかは近隣の村から奪うか、創造魔法で作ればいい。肉類は近くに生息する獣や魔獣を狩ればいい。そうだな………信じれないのなら今から創造魔法を行使してみせよう。生き物だって構わない》
《では、牛を創って貰いたい》
その言葉を聞いて魔力を練って牛を思い浮かべ、古代魔法という魔法を使って血肉を創造し、冥界に干渉して適当に魂を捕まえて器に放りこんで牛を創り出した。別に魂を創り出しても良かったが、こっちの方が都合が良かったのでこうしたのだ。
《素晴らしい。私は構いません。が、民にアンケートを実施します。賛成の方が上回ったのであればダンジョンに移動しましょう》
《長!!》
《村のためだ》
《ゴブリンキング、四日後にまたここに来るからそれまでに決断しておけ》
《わかりました》
ゴブリンキングにそう言って街に帰るため地上に出た。
「何時迄も歩み続けるのは風。誰にも邪魔されることはない、自由の象徴、羽ばたけ見えない翼よ、導け【天空飛翔】」
ウィルは宙に浮き、街を目指した。
その頃、少女は街の近くまでやってきていた。
「あと少し……」
(あと少しでみんなに会える……)
少女は限界を超えてもなお、街を目指して走り続けた。
少女の目には光り輝く町が見えている。後数kmだ。歩いても1時間で着く距離だ。
そして、ようやく街に到着した。
少女は門番の騎士に保護され、近くの医療施設で治療を受けていた。
「これで魔獣に襲われることはないぞ」
保護した騎士がそう言う。
「あの………」
「なんだ?怖いのか?」
「このことを信じてくれますか?」
少女は騎士にそう言った。騎士は頷く。
「実は私がオークの巣に囚われていた時、人を武器のように扱ってオークを倒す悪魔を見かけたの」
「悪魔!?どんな外見をしていた?!」
「見た目は黒髪の冒険者ぽかったけど……とにかく恐ろしかった。服は血で塗れて笑みを浮かべてオークを殺していたの……」
「黒髪の冒険者……?あの少年か?まあいい、その冒険者が持っていた人はどんな服装をしていた」
「その人も冒険者ぽい服装をしていて銀色の鎧を着ていたかな」
門番の騎士は記憶を辿る。
ウィルの後ろをつけていた冒険者が来ていた鎧は………銀色だった。
でも、ウィルが仮に冒険者の死体を持っていたとしても犯罪者扱いにはできない。もしかしたらあの冒険者がウィルを襲ってああなったという可能性を捨てきれない。
少々行いには何か言ってやりたいと思う気持ちはあるものの、少女を心配させないため考えるのをやめて近くにいてあげるのだった。