【決意】
魔王ディフェルの世界征服
第4話【決意】
ウィルがエンド達に拾われて4年の時が過ぎた。
「ウィル、大事な話がある」
いつも通りエンド達と訓練をしていた時、そう言われたのだ。
呼ばれたからには行かなければならないので、【神々の溜まり場】へ向かった。
「4年前、私達が何と言ったか覚えているか?」
「『私達は原初の世界の主神、魔神、邪神だ』的なことを言ってましたね。それがどうしたんですか?」
「原初の世界。その世界がもう時期滅ぶ。だから、滅ぶ前に原初の世界の意志、力、そして……私達を君の魂と結びつけたいと思う」
「それってどう……」
何故、急にそう言いだしたのか、わからなかった。
『原初の世界が滅ぶから私達も眠ろう』と意味なのだろうか。
「どうしてか?それは確認してきたからね。原初の世界は明確なる意志を持つ。それは、私達の希望であり、世界は私達の家族だ。だから……」
「そうじゃない!!どうしてエンドやガイア達が眠らないといけないんだ!!」
ガイアは口を閉じた。暫く沈黙の時間が訪れ、ある時、エンドが口を開いた。
「悪い。でも、バラバラにならないためにもこうすることした手段がないんだ」
「何で滅ぶことが前提なんだ!!」
「前に言ったはずだ。世界は滅ぶものなのだと。本当は君が寝ている間に済ませてしまおう。そう思っていた。でもね、やっぱりそれはダメだと思ったのだ」
「嫌だ。離れるのは嫌だ」
ウィルは必死にそういう。
「ウィル……俺は、俺たちはこの世界のような世界が可笑しいと感じれるお前のような人と出会えてよかったと心から思っている。ウィル、俺たちの願いを聞いてくれないか?」
ウィルは俯いたまま黙り込む。
「頼む」
「嫌だ。絶対に嫌だ」
「ウィル、ここは嫌でも首を縦に振らないといけないところだよ?だって原初の世界が滅んでしまったら後は何も残らないんだから。
ガイアやエンドは言っていなかったけど世界が滅んでしまったら無所属にならない限りその神は死滅してしまうんだ」
「アクア!!」
「エンドは黙ってて。ねぇ、お願い。一緒になるのは嫌だよ」
「…………嫌だ」
小さな声でそういうウィルをそっと抱きしめる。
「ウィルは一人じゃない。僕達がいつまでも一緒に居てあげるから……ね?」
いつまでたっても首を縦に振らないウィルを見てガイアは口を開いた。
「仕方ない。なら、こうしよう。私達が定めた目標を達成する度に再会することにしよう」
「ガイア!!」
「エンド、ダンジョンコアにプログラムしてこい」
「……わかった」
エンドが急いで管理室へと向かった。
ガイアはエンドがいなくなったのを見て
「1つ目の目標はこの国を制覇しろ。そしたら、目覚めて出てきてやるさ」
「…………わかった」
ようやくウィルから了承が取れたことにホッとし、これからのことを説明し始めた。
「今、エンドはダンジョンコアの初期化と新しい別の情報を書き込んでいる。あいつが戻り次第詠唱を行う」
ガイアがそう言って暫くした頃、エンドが戻ってきた。
「よし、じゃあ始めるぞ」
『全ての始まりは膨大な力なり。始まりは原初、生み出すは創造、滅ぼすは破壊、世界を支えるは時空。原初より存在し力よ、意志に従い意志に結びつけ。
繰り返すは転生、世界の法則は理。2つの力よ、意志に従い意志の願望を叶えよ【結束】』
ウィルの体が光に包まれ、体に魔法陣が次々と展開されていく。
次に、洞窟の天井に別の魔法陣が展開してエンド達の体を光で包み込んだ。
その光は魔法陣を介してウィルに流れ込んでいく。
「じゃあな、ウィル」
そう言い残してエンド達はウィルの魂に吸収されていった。
彼らが魂の格に収まると、天井の魔法陣は更に大きくなり、そこから膨大な力が流れ込んできた。
恐らく、これが世界なのだろう。
その全てを逃すまいと意識を保ち、その力が全て器に収まるまで待つ。
「ぐっ……」
その力は絶えることはなく、容赦なくウィルに流れ込んでいく。
「うがああああああ!!」
流れ込む力が器の容量を超えたため、力がウィルの体内で暴走する。
(ここで死ぬわけには……)
ウィルは意識を保っていられなくなり、気絶した。
それでも、力は流れ続けた。
翌日、ウィルは紅い水溜りの上で目を覚ました。
「これって……俺の血か?よく死ななかったな俺……」
この量は確実に出血多量で死んでいてもおかしくない量だった。
それでも生きていた。
「エンド〜……ってもういないのか。仕方ない。1人で片付けるか」
血を拭くため、雑巾を取り出そうと引き出しを引いたところ、手紙が入っていた。
『この手紙を読んでいるってことは今目覚めたところか?
まあ、時間なんてどうでもいい。
えーっと、あれだ。そう、ここはダンジョンだ。
これからはお前にダンジョンを経営してもらう。まずはダンジョンコアがある部屋まで来てもらおうか。
じゃあ、コアに触れて展開と言え。そうすればメニューが表示されるはずだ』
血を片付けた後、ダンジョンコアのところへ向かった。
「展開」
すると、ダンジョンコアの周りにメニュー画面が表示された。
手紙の方に目を向けると続きが書かれていた。
『メニュー欄にあるダンジョン生成のところに指を持っていくと現在の階層が表示されるはずだ。
ダンジョンは初期化されているはずだから第1階層となるだろう。
階層を確認したら第2階層を生成しますか?というところを触れ。
階層は右上にあるダンジョンポイントがある限りいくらでも増やすことができる。
でも、あまり無駄使いはするなよ?
魔獣を配置するときにも必要だからな。
そのポイント増やす方法は俺個人が定めた仕事をクリアする。もしくは、ダンジョン内で生き物を殺す。または、ダンジョンで生まれた魔獣が敵を倒した時に獲得できる』
ここでダンジョンコアの操作に戻った。
手紙に書かれた内容通り行う。
階層を増やしたところでちょっとした地震が発生したが、特に問題はなかった。
『新しく生成されたは第1階層となるから1と書かれたところに移動し、魔獣配置というところを触ってくれ。最初に選べるのはインプ、ゴブリン、ガーゴイルだ。
スケルトンやゾンビに関しては人族系統の死体を要求されるから後にする。
最後に、壁とか罠とかを作りたければ作りたい場所を触れば別のページが出現するからそれを見てくれるといい。
これで基礎的な内容は終わりだ。
そして、この手紙の終わりでもある。続きが欲しければダンジョンをちゃんと経営することだ。いいな?じゃあな、ディフェル・ウィル・エンド』
手紙を最後まで読み、その通りに操作をする。
「折角、沢山の罠があるんだ。第1階層は罠だらけにしよう」
入り口の前を熱湯風呂に続く落とし穴とし、その熱湯風呂部屋の出口に大量の虫の死骸が降ってくる罠を設置した。
ウィル自身も引っかかりたくないと思うほど気持ちの悪いものが完成した。
「この調子で階段まで心が折れるような罠を張りめぐらそう」
と、近い未来くるであろう探索者が苦しむ姿を想像し、ニヤニヤしながら作業を進めるのだった。