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〈45〉

今日、学園は休みとなった

生徒は各々、自室で待機するように学園からお達しが出た

事件が起きたのだ

いや、いままでもずっと起きていた

けれどもう誤魔化しが効かないところにきたのだ


死体が見つかった

ボクが適当に放置しているものではない

行方不明者のものでもない

カサンドラの友人のものでもない

昨日まで普通に生活していた生徒のものだ

場所は食堂

それは多くの人間の目についた

暴徒と化した行方不明者の犯行なのかは分からない

死体は正面から剣で斬り殺されていたのだ

そもそも暴徒と化した生徒達が何を目的にして、どうやって、何を行っていたのか

ボクは直接目にした訳ではないのだ

ボクの自室を訪ねてくる生徒達は皆、丸腰で噛みつこうとしている動作を取っていたが、イコール剣を使わないということにはならないのではないか

ゾンビものでよく見る仲間を増やすためか

ただ食糧とするためか

奴等の目的がどちらかだと錯覚していたが、もしかしたらただ殺すのが目的だったのかもしれない

仮定に意味はない

いずれ真実は暴かれる


「さーて、今回の集まりだけど、非常に不本意な噂が立ってるわ」


何故、ボクのいるところに集まってくるのか

ツクシと愉快な仲間達がボクが一人で座っていたテーブルを囲んでいた

ボク以外は自主的にツクシのところに集まるけれど、ボクだけはそうでもないからボクのいるところが集合場所になったとディーが愉快そうに笑いながら親切に教えてくれた

ボクは面白くない

オリヴィスはボクを集合場所にするのを反対してくれているらしい

君は目付きが悪いけれどいい奴だな

飴ちゃんをあげたいよ


「ニア様、昨日は姉がお世話になりました」


「ん?ああ、気にしなくていいよ。大したことはしてないから」


「それでもありがとうございます」


「うん」


エルモートは妹の危機を救ったことに感謝を述べている

たしかにクリスの危機を身をもって阻止してくれる人間がいれば英雄だよね

ボクも妹の恩人となれば深く感謝する

この首をくれてやってもいいほどだ

変な連中とつるんでいるけれど、エルモートは悪い子ではない


「そこ!私語は慎む!」


「す、すいません!」


「授業でもないんですから固いことなしにしませんか?貴方もそう思いませんニアさん?」


「君に言われると同意しづらくなるね」


「おや、私ってば嫌われちゃってます?」


嫌いとまでは言わないけど関わりたくないから知らないところで事故死してほしいとは思ってるよ


「ライセット!」


「おー怖い。ええ、静かにしますよ。オリヴィスに噛み付かれそうだ」


「こほん。話を戻すけど、今朝、食堂で死体が発見されたのは皆知ってるわよね?連続失踪の件もあって今学園は大変なことになってるの」


確かに生徒達がピリピリしているのは感じる

学園から自室待機を命じられているけれど、従っている生徒はどれほどのものか

自室が安全なんて保証はどこにもないのだ

ボクの部屋なんて毎晩お客さんが訪ねてくる

その度に物置と化した隣室は大変なことになっていく


「生徒達の不安はもう押さえきれないでしょうね。学園側に抗議を申し出る方が多数出ているって話ですよ?」


「俺様の知り合いも直談判だって乗り込んでいってたぜ?どうせなにも出来ちゃいないだろうけど」


ディーは結果が見えてるようで肩を竦めて言った

ディーの知り合いのように今回の件で学園側の対応に燻っていた不満を爆発させた生徒は多い

生徒の安全を全力で確保しなければならない学園の動きが鈍いからだ

自室待機、それだけしか伝えられていないとハーレイ先生がツクシ達に教えてくれたそうだ

これには教員側も困惑しているらしい

生徒達に食ってかかられる教員が哀れでならない


「学園は当てになんねぇって自分等で犯人探ししてる連中もいやがる」


「それが問題なの。犯人候補に挙がってるのが私とニア君ね。おかしな話だわ。私達が犯人なんて有り得ないのに」


誠に遺憾である


「ですが、犯人ではないと証明するのも難しい」


アリバイを提示したところで信じて貰えないだろう

ボクは昨日夜中に出歩いているところを目撃されてしまっている

カサンドラを助けたと言っても犯行はそれより前に行われていたかもしれない

この世界では死亡推定時間なんておおよそでしかわからない

魔法があり科学がそれほど進んでいる世界ではない

一方、目撃証言があったわけでもないのに犯人候補に挙げられているツクシだが、被害者にイジメにあっていたそうだ

それは周知の事実で、犯行に及ぶ動機には十分と思われたらしい

実行犯はオリヴィスでは?

しかし、ワンちゃんならすぐ犯行が露見しそうなものだ


「だから、犯人をすぐに吊し上げて不名誉な疑いを晴らそうって訳!わかった?」


今は殺人の加害者の有力候補としてあげられてしまったので身の潔白を証明しなくてはならない

ボクとしては正直放っておいていいと思う

ボクがボクを犯人ではないと知っているし、クリスがボクを犯人だとは一ミリも疑っていないので誰から疑われようとどうでもいいのだ

なんで見ず知らずの生徒をボクが斬り殺す理由があるのか

もう一人の最有力候補、ツクシのほうが筋が通る

ボクはツクシと違って嫌がらせを受けていなければ、言葉を交わしたことすらないのだから

恨みようがない

動機がない

なのにボクが犯人と囁かれるのはおかしくないか

夜に出歩いてたのはボクだけではないはずだ

知らないけど


「行方不明者の件と今回の殺人事件は犯人が別だと思うんだけど、どうだい?」


「ニアさんもそう思いますか?私もそうだと思っていたんですよー」


ライセットは無視する

なんか煽ってる感じがする

イラつかないけど鬱陶しい

思ってたなら君が言えよ


「どうしてそう思うの」


「あくまで可能性の話だよ。いままで行方不明者は一人も発見されていなかったんだよね?それが急に手口を変える訳があるかい?あるかもしれないけれど、犯人が別の可能性もあるとボクは思うよ」


「なるほどね」


「行方不明者の事件に乗じた殺人事件って訳か」


「どうしてそんなことを?」


「それは犯人に聞いてみなければわからないさ。私怨か。誰でもよかったという線もある」


「殺された子は恨みを買うような子だったの?」


「ツクシへの嫌がらせに加担してた女だ」


オリヴィスがわかっていることを繰り返し言う

ここの集まりはボク以外はツクシを大事に思っているらしい

被害者のことを快く思っていなかったと思われる

……犯人この中の誰かじゃないかな

全員、縛り上げて次の被害者が出なければ問題が一つ片付く

犠牲になるのがツクシに嫌がらせをした生徒だというならクリスに害が及ぶこともないし、放っておいてもいいかもしれない

なんにせよ次の被害者が出るまでボクは様子見でいいかな


「そう、じゃあ、その子の周辺から事情聴取していきましょ」


ツクシはそう締めくくり解散の流れとなった

誰もいない静かなテーブルでボクは思う

ツクシ達に見つからないように裏庭の隠れスポットにいたのに、どうして見つかるんだろうと

次は立ち入り禁止の廃校舎にでも行こうかな……

一か所に留まるのがよくないのかもしれない……

自室に押しかけられるのは絶対に嫌だなと思いながら、折角静かになった裏庭を次なる来客カサンドラが騒がしくしてくれた

ユリウスと同じものを感じるが、クリスには遥かに劣るものの見た目は可愛いのでカサンドラは許せる

頭を撫でてやったらショートした

ちょっと面白い



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