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〈44〉

1時投稿と言ったな?

あれは嘘だ


立食会で女生徒の嫌がらせを阻止したのは狙いがツクシと知らず、ボクを狙っているものと思ったり、反射で動いただけで決してツクシに恩を売るためではなかった

そう伝えてもツンデレ扱いされるだけだった

非常に遺憾である


「おーおー、君が噂の転入生かー」


「不愛想で何を考えてるか分かんねぇが、クソ野郎ってわけじゃねぇぜ」


「分かってないねーオリヴィス。目で分かるよ目で」


「……」


あれ以来、ツクシの属するグループによく絡まれるようになった

呼んでもないのに勝手にボクの周りに集合しだす

今日は新顔もいるようだ


「やーやー、俺様はディー。物好きなツクシの友人だ」


「どうも」


自己紹介は必要ないだろう

総じて女生徒に疎まれる傾向にあるツクシに珍しい女友達だ

一人称が俺様なのは個性が強いね

ボクっ娘より希少だよ

それにしても身長は平均だけど大きい

何がとは言わないけれど立派な双丘だ

ボクは前世と同じく地平線なのに

あれだけ大きいと邪魔で大変なんだろうね

あったことがないから分からないけど


「今日はなんですか」


要件があるならさっさと済ませて欲しい

ないなら解散してほしい

ボクは昼寝をする予定があって忙しい

事件の調査で発展があったなら聞くけれど、期待していない

ここ最近、事件のじの字も彼女等から聞いていない

もしかしてツクシ達の記憶も消えてるんじゃないかと思う


「んー、特に用事はないな。俺様はツクシについてきただけだし。こいつ等もないと思うぜ?」


「僕もツクシ先輩に目的あって行動しているようには見えないですね」


「俺もそう思う」


じゃあ、解散して


「もー!皆、酷いよ!私が考えなしで適当に生きてるみたいじゃん!」


全員が『え?違うの?』と思ったね

今の一瞬だけ彼等と分かり合えた気がする


「そうそう、後輩君。今日は月が綺麗に見えると思うんだが、どうだよ?」


「どう、とは?」


「くくく、ただの雑談さ。意味なんてねぇよ」


オチだけ言うとボクの時間は浪費され、昼寝をすることは叶わなかった

本当に意味のない時間だった

午後の授業、寝るしかないよね


※ ※ ※


夜、静かなのはいいことだ

土足でボクの部屋を荒らされるのは気分のいいことではない

だからといって寝ずに来るかも分からない敵を待つのも疲れる

いつ襲われても対応できるように剣を腰に下げボクは真夜中の学園を探索することにした

部屋は荒らされても構わないように必要以上物は部屋に置かないようにしている

気を紛らわせるついでに行方不明者の調査をするつもりだ

行方不明者が出るのは深夜だとボクは思っている

ボクを必要以上に狙ってきているところには何者かの意思を感じる

しかし、他は無作為に襲われているのか

なんらかの法則があり、失踪しているのか分かっていない

ノーヒントなのてま宛もなくただ学園を練り歩くだけだ

寝静まった学園は風の音だけが耳を撫で、人のいない世界にボクだけがいるように錯覚させる

足元が崩れ落ちるような僅かな不安

何者もボクを縛り付けるものはないという高揚

探索の理由も忘れ、気の赴くままに足を進めた

真夜中に出歩くのは推奨されていないので、見つかったら注意されるだろうか

それとも失踪者の件の容疑者として疑われるだろうか

不自然なくらいに静かな世界をボクは独り占めしている


そんな世界にノイズが走る


足音が聞こえた

ここの廊下はよく響く

まだ距離は離れているが、走っていることは分かる

敵か

それとも変質者か

ボクは剣を抜き集中する

足音はたぶん二つ

こうも静かだとよく分かる

もうすぐそこに迫っている

角の向こうに

見えた


「……ッ!ああ、やっぱりソニア様は私の王子様かな!」


「今はニアだよ」


一つは必死の形相で疾走するカサンドラだ

もう一つは毎晩見る生気のない目の生徒だ

敵にカサンドラは追われている

間違えてカサンドラを斬らないように剣を下ろし、代わりに魔法を使う

剣で刻んで動けなくしてもいいけれど、流石にそういうのに慣れていなさそうな隣国の王女に刺激が強いグロテスクな死体は見せられない

今更な気がするけれど、そういう気分だからそうした

加減して、足を凍らせて転倒させる

生徒は顔から派手に地面にキスした


「シンシア!?」


「ああ、知り合いだった?襲われてると思ったから凍らせたけど、不味かったかな?」


「い、いえ!助かったかな!シンシア、友達なんだけど、急に襲ってきて……」


「ふぅん……」


カサンドラは荒れる息を整えながら説明してくれた

友人に夜遅く部屋に呼び出されて、不審に思いながら向かうと言葉はなくいきなり襲い掛かってきたのだとか

最初は運よく躱せて、急いで逃げ出した

どこか適当な部屋に逃げ込むなどをしなかったのは、この国の王女として民を巻き込みたくなかったから

完全に撒いてしまっては今度は別の、寝ている生徒に手を出す危険があったので当てもなく走っていたらボクに遭遇して今に至ると


「運が良かったね」


「どう、かな……。結果的に無事だけど、ニア様を巻き込んじゃったし」


「気に病むことはない。ボクとしては収穫があった」


失踪者は自我を持っていない

自動的に人を襲う、と思う

それが人を呼び出すなんて出来るだろうか

失踪者をある程度操作出来る者が存在しているのではないか

あまり深く考えても仮定の域を出ないが、集団か個人かは分からないが敵は明確な意思を持って行動している

行動は深夜帯と見ていいだろうか

次は敵の目的が知りたいね

それを潰すなり、餌にするなり、反撃に打って出ることが出来るのだから


「それでこの子、どうしようか」


「心苦しいですけど、縛って適当な場所に隔離するしかないかな」


心苦しそうに見えないけれど、あんまり仲が良くなかったのかな



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