表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/47

〈43〉

作者のリアルでデッドヒートするため、次回の更新は3/2(土)の深夜一時となります

ご了承ください



時間を無駄にしたボクは引き続きサボり、校舎と校舎の間から死角になっている日陰で昼休みを知らせる鐘が鳴るまで寝ていた

少し寝不足で眠かったんだ

昼は皆で集まって昼食を取ったり取らなかったり集まらなかったりする

ベルを引き連れて皆で集まる広場に向かうと、今日は全員いた

ボクとベルが一番最後だ

ボクの姿を確認するとクリスは太陽より眩しい笑顔を浮かべ

ボクの眠気は彼方へと消し飛んだ

クリスの笑顔は寝不足にも効く

その後、セリカが詰め寄ってきた


「姫さんが抜けてから大変だったんだからな!」


「どう大変だったんだい?」


集まっているメンバーはクリス、シャルロット、セリカとボク、そしてベルなので姫さん呼びは解禁だ

一応、ベルが目を光らせているけれど、それでも聞く耳があるかもしれないから出来るだけ控えて欲しいところ

だから謝らないよ


「全員の相手させられた」


「セリカが?男子生徒全員と?」


「そうだ」


それはまた……

全員相手ということは授業の残り時間的に、時間一対一の試合形式ではなく、一斉にかかっていたと見える

寄ってたかって女子一人に挑みかかるなんて彼等にはプライドがないのか


「お疲れ様だね。勝ったんだろう?」


「当然だ。アタシが姫さん以外の相手に後れを取るかよ。でも、骨が折れた」


相手が大したことがなかったということもあるだろうが、誇るでもなく当然のことだと彼女は言う

セリカは強い

天賦の才がある

剣の腕は勿論、精神的に、戦いにおいて天才だ

今はまだ肩を並べているが、いつ置い抜かれていっても不思議ではない

楽しそうに笑うセリカを見て、彼女がクラスの連中とうまくやれていることがわかる

その場にいたわけではないが、面白半分で全員でかかっていたのに返り討ちにあって、さぞ男子生徒は驚いたんだろうね

ボクは男子ではないから少し理解が及ばないがノリは男子同士のそれな気がする

原作で男装していたのは伊達ではないね


「お姉様も学園生活を楽しめているようでなによりです。今度、お友達を紹介してくださいね?」


悪意のない天使の言葉がボクに突き刺さる

それなりに楽しんでいるけれど、友達に心当たりはない

カサンドラでも紹介、いや元からクリスと面識がある

クリスに不甲斐ないところを見せるわけにはいかない

心底嫌だけれど、友達を用意しないと


「クリスも人気者で大変じゃないかな?変な男が寄ってきていない?」


クリスに嫌悪を向ける人間なんて存在するはずがないのだから当然と言えば当然だが、クリスは人気者だ

ボクとは真逆で好意的に生徒達に受け入れられている

その分、クリスに笑顔を向けられるだけで勘違いを起こす生徒も後を絶たないはずだ


「いえ、皆さん本当によくしてくださって私は幸せです」


笑顔が作り物だ

ボクを心配させまいと本当のことを言っていない

心を許せるほどの友人はできていないらしい

クリスに釣り合う人間はそうそういないから仕方ないといえば仕方ない

それでも、クリスに心労を与えるようであればボク自ら始末しにいくことも考えないでもない

問題を起こして、国に帰るのも一つの手か


「姫さん、物騒なこと考えてないか?」


「気のせいだよ」


この時間がクリスの心が休まるならボクは嬉しい

学園ではクリスと時間を共にすることの多いシャルロットは心底気を抜いていた

うん、人見知りするタイプだもんねシャルロットは

人を寄せ付ける体質のクリスの傍にいれば余計に疲れるだろう

シャルロットからクリスにお近づきになろうという手合いもいるだろうし、ボクが無防備になるときを除いて、ベルは向こうについてもらおう


「人使いが荒すぎますぅ。悪魔、鬼畜、絶氷の魔女ぉ」


ボクの侍女の泣き言を聞き流す

侍女、もう一人連れてきたらよかった

元々いたクリス付きの侍女ヒルダは定期的に失踪する

今は失踪機関で、ベルの仕事が倍になっている

ベルには強く生きて欲しい


クリスが昼食をあーんしてくれるの学園中に自慢して回りたい


※ ※ ※


その夜、立食パーティーでボクは孤立していた

クリスは友人達に誘われて、シャルロットと共にそちらにいった

眉尻を下げて申し訳なさそうな顔で謝ってくるクリスが可愛いのでクリスを食事に誘った有象無象を許した

シャルロットが向こうに付いていったのは少し以外だったが、精神的に成長しているのだろう

喜ばしいことだ

セリカもまた友人に誘われてそちらにいった

セリカは当然、ボクも誘おうとしたけれど知らない人大勢と立ちながら談笑に付き合いたくないので辞退した

ベルは体調不良らしく自身の部屋で休むとのことだ

働きすぎはよくないね


「ニア様、もしかしてお一人様かな?」


「ああ、カサンドラ。見ての通りだよ」


お一人様ってなんか見下されてる気がする

ぼっちは被害妄想しがちだよね

一人のほうが気は楽なんだよ

何も恥じることはないじゃないか

少数派は声高らかにぼっち最高と叫んでいいとボクは思う

ボクなら叫ばないけど

頭おかしいやつみたいに見られるの嫌だし

いや、もう十分浮いてるんだけどね


「じゃあ、一緒に食べてもいいかな?」


「君の好きにすればいいよ」


「よっし!」


ボクと一緒に食事したって楽しいことないと思うけれど、カサンドラは嬉しそうだ

物好きはどこにでもいるね

ボクも彼女といると、遠巻きにボクの様子を窺う視線から気が紛れる

好奇心や、嫌悪の視線はどこでも付きまとう

この学園でボクに直接関わってくるのはカサンドラくらいなものだ

たくさんいればいたら鬱陶しいのでこれくらいがベストだと思うね、うん、ベストだ


「やっほー!ニア君!」


「……」


「なーんで無視するの!先輩だよ!君のツクシ先輩だよ!」


この先輩のフレンドリーさにはいい加減慣れたけれど、より一層、周囲の視線が強くなったのが気になる

この人も人気者らしいね

悪い意味で


「何か用ですか先輩」


あしらうように言うと酷いとでもいうように大袈裟なリアクションを返してくれた

人生楽しそうだね


「前にご飯食べようって言ったじゃん!」


ああ、そんなこと言っていた気がしないでもない

社交辞令ではなかったのか


「忘れたんでしょ。女の子との約束忘れるのは好きくないなー」


別に君に好かれたいと思ってないからね

ツクシは笑顔を消してボクの顔をジッと見つめていた

またボクの目を覗き込んでいるようだ


「ニア君は私を見てるようで見てないよね」


「どういうことか分かりかねます」


「まっ、今はそういうことにしといてあげる」


「ツクシ、先輩。ニア様とも仲がよろしいのですか?」


置いてけぼりになっていたカサンドラが参加してきた

ツクシに向けた言葉に棘がある

ボクでも分かる


「貴女は、エル君の妹ちゃんね。仲いいわよー、ニア君と私は友達なんだから」


え、本人は初耳

いつ友達になったんだろう


「ニア君、なんだか不本意みたいな顔してない?」


「何の話ですか?」


誠に遺憾である


「隣いい?」


「どうぞご自由に」


勝手にすればいいと思う

恨めし気に見ているカサンドラが眼中にないらしい

大したメンタルだよ

感心する


「おおっと危ない!」


擦れ違い様に女生徒がわざとらしく躓いて手に持っていたグラスを投げ、ようとしていたのでそれより早く腕を取る

咄嗟だったので少々乱暴だったが、悪意の見える相手に遠慮する道理はない

なんならこのまま手を捻り上げてもいい

周囲の視線を見世物への嘲りから恐怖一色に染め上げてしまおうか


「ニア君、離してあげて」


優しくさとすようにツクシがボクに言う

ボクがこの女生徒の腕を叩き折ろうと考えてたのがバレたか

なんにせよ

さっきのボクは物騒すぎた

多少ストレスで思考が過激になりつつあるかもしれない

注意しよう

腕を離すと女生徒は青褪めた顔で謝罪し、生徒の波の中に逃げていった

そんなにボクは剣呑な雰囲気だったか

変わらない表情に怯えただけか


「ニア様、手が汚れちゃってるかな」


「ああ、うん。服が汚れるよりマシだよ」


幸いグラスの中はただの水だったようだし、放っておいても乾く


「ごめんねニア君」


「どうして先輩が謝るんです」


「私が妬ましい人がいるのよ。イケメンを侍らせてる女は嫌われるの」


「ああ、なるほど。苦労しますね」


さっきのはボクではなくツクシがターゲットだったか

ボクが巻き込まれないところでやってほしいね


「おかげで女友達は一人だけ。彼女、物好きよね」


ボクに寄って来る先輩も物好きの類だけれどね

愉しい立食会はこのまま何事もなく終わった


クリスの周りに人の渦が出来ていたのは不本意ながら鼻が高かった

流石、ボクの自慢の妹

万人に愛されるのが当然

可愛いの概念といっても過言ではないね


いっけなーい!遅刻遅刻ぅ!

一日、遅れて申し訳ないっす!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ