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〈42〉



さり気なく名前を聞いたところキレながら教えてくれたオリヴィスに案内された先

科学準備室にツクシはいた


「いらっしゃいニア・アーチボルグ君!貴方から会いにきてくれて嬉しいわ」


彼女は一瞬だけ驚いてから、ボクが訪ねてくるのが予想通りだというように笑いかけてきた

他には名前を憶えていない担任教師

初日に学園を案内してくれたルークシュアーツ兄妹の兄の方

一見優男に見えるが狐を思わせる胡散臭い雰囲気のするイケメン


「ソ……ッ、ニア様!どうしてここに?」


「やぁ、……エルモート?」


「なんで不安そうなんですか……」


よし合ってた

妹のほうはカサンドラ

しっかり覚えてるんだけど、兄のほうは影が薄くてうろ覚えだったんだ

妹の方、カサンドラはクラスが違うけれど、よく話しかけてくるし男子寮にも乗り込んできて毎日顔を合わせているが、その隣に彼はいなかった


「少し縁があってね。君こそ先輩達と仲が良かったんだね?」


「ああ、貴方が噂の!私はライセット・レイヴン・ディノアと申します。以後、お見知りおきをニア・アーチボルグ」


会話にいけ好かない雰囲気の先輩が入ってきた

レイヴン、そんな国もあったね

こいつも王族だ

ツクシが貴族設定のボクに対して強気だったのは王族二人分の後ろ盾があるからか?


「ヴォルキアとは懇意の間柄。クリスティーナ様にはいつかご挨拶にお伺いしたいと思っているのですが……何分忙しいようで」


ボクから話を挨拶の場を設けてほしいのか

笑わせてくれる


「弁えろよ三下。君如きがクリスの人生に関与する必要はない」


「おおっと、気に障られましたか。随分とクリスティーナ様と仲がよろしいのですね公爵子息殿」


格下に毒を吐かれて、怒るでもなくおどける

こういうタイプは愚者にしろ策士にしろ総じて厄介だと母が言っていた

関わりたくないし、クリスの目に映したくもないね

厄介事を起こす予感がある


「幼い頃からの仲でね。妹のようなものだよ」


実際、妹だけど

世界一可愛い妹だけど

お前なんかに合わせてやらないからな

ベルに全力ガードさせてやる


「ふーん、そういうキャラなんだ。私抜きで雑談なんて好きじゃないわよライセット」


「いやー、申し訳ない。性分で」


王族にも砕けた口調とかこの女無敵か

それを許すライセットが器が広いのか

それだけ気を許しているのか

どちらにしろ変わり者なんだろう

担任教師は会話に混ざってこない

様子見しているのか

勝手に溜まり場にされているだけなのか

そもそも、この部屋の主は彼ということでいいのか


「ニア君はどうして私に会いに来てくれたのかな?」


心の距離感近過ぎない?

パーソナルスペースどうなってるんだろうこの女

初対面の時もやたらとフレンドリーだったよね


「先輩の言っていた行方不明者の件にボクも協力したいんです」


「嬉しいけど、それはどうして?」


「先輩方に嫌疑をかけられてしまいましたからね。早めに解決しておくに越したことはないと思いまして」


自分で言ってて嘘くさすぎる

エルモートとツクシ以外は納得してなさそうだ

だが正直に毎日睡眠妨害を行ってくる黒幕をぶち殺すためだと言うわけないだろう

行方不明者にトドメを刺して捨てているんだから


「まだ若いのにいい心掛けね!そういうの好きだわ!」


「どうも。ボクの知人にまで被害が出る前に始末をつけたいんです」


「なるほど、それならば納得がいきます。私がツクシさんに協力しているのも彼女の友人としての他、私の騎士が行方を眩ませたからなんですよ」


隙あらば自分語り

レイヴンの王子の事情なんて聞いてないよ

身内に危険が及ぶ前に問題を対処したいという理由で取り敢えず納得してくれたらしい


「ところで行方不明者について何か手掛かりはあるんですか?」


「ないわね」


「捜査は行き詰っていてね」


予想していたけど、想像以上に役に立たない


「あっ、今役立たずと思いましたか?」


分かってるなら言わなくていい

この男、鬱陶しい性格してる


「失踪した生徒を分かっている範囲で纏めてみているんですが、その数は30人を超えています。それにも関わらず学園側は静観しています。それどころか生徒達の危機意識があまりにも薄い。明らかな異常事態。なにか恐ろしいことが水面下で進行している気がするんです」


「なるほど」


半分ぐらいがボクの隣の部屋で氷漬けになっているね

あくまで確認できている範囲という話だし、実際はもっと失踪しているんだろうけど

可能性の一つとして挙げるなら、魔力持ちによる学園全体に及ぶ認識の阻害、とかかな

なら、ここにいる奴等は何故この影響を免れている?


「異常事態なのに、生徒達は日常生活を続けていて、僕達だけが世界に取り残されているような違和感があります」


「でも、手掛かりは一切なしと」


「そうなのよ。皆が、いつ、どこで、どこに、なんで、消えてるのかなーんにも分からないの。好きくない状況ね」


「なにかいい案はないですかニア君?」


「そうですね……。行方不明になった生徒達の直前の行動を調べるなどはどうでしょう」


失踪する直前の行動を調べればどの時間帯に被害にあったのか絞れるはずだ

事件が起きている時間帯が分かれば動きやすい

犯人を始末できれば文句なしだ


「やってみたが何も手掛かりは得られなかった」


まだボクの後ろにいた先輩がぶっきらぼうに吐き捨てる

まぁ、ボクが思いつくようなこと誰でも考え付くか


「失踪した生徒と仲が良かった人達に話を聞いて回ったんですが、記憶が虫食いみたいに欠けていて、一人一人の発言が異なって辻褄が合わなくなるんです」


「なんでかそこら辺の記憶があやふやになってるのよね。友達のことすっかり忘れてる人までいるわ」


「いつ彼等が消えてしまったか。不思議と誰にも分からないというわけです」


時間帯は不明か

標的に共通点があればいいんだけど、ボクが見る限り、貴族も平民も、男女、学園、全てランダム

無作為に襲われているようにしか見えない

他国の貴族が行方を眩ませているのに学園はノータッチ

国家間の問題に発展しかねないのに、この事態を正しく認識できない状態にあると見ていいかもしれない


「あ、あの……」


これまで一言も発さなかった担任教師がおずおずと目を泳がせながら口を開いた

なにか思うところがあるのか


「どうしたのハーレイ先生?」


ああ、ハーレイ

そんな名前だったか

自信のなさが見て取れる


「皆さん、今授業中なんですが……大丈夫なんです……?」


「……」


「……」


そういえばそうだったみたいな顔で目を合わせられてもボクは困る

学生だということ忘れてたのかな

先生は特に有益な情報を持っているわけではなさそうだ

先生の一声でこの場は解散となった

ツクシ達は役に立ちそうにないから二度と来ないかも

せっかく、授業を抜け出したのに時間を無駄にした気分だ


……今すぐクリスを抱き締めて胸一杯にクリスニウムを吸い込みたい


※ ※ ※


「『ここはゲーム盤。今はプレイヤーがテーブルに着くのを待っている』?」


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