表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/47

〈38〉



ルークシュアーツ兄妹に案内され、ボク達はまず荷物を各自の部屋に置き、一息ついてから食堂で夕食を済まし、学園を回った

正直、ゲームにはマーキュリーのマの字もなかったので新鮮だ

クリスがめんこい


「姫様」


「大丈夫だベル。ボクは平常だ」


「平常より抑えめでお願いします」


善処するけど、無理かもしれない

制服のクリスヤバない?

呼吸と口調が乱れる

キャラ崩壊がなんじゃい

ボクは元からボクっ娘じゃねぇんだよ

いや、一旦落ち着こう

グランツ以来、クリスリウム過剰摂取で暴走しがちだ

抑えなくては

クリスの前では完璧な姉を演じるんだ


「顔は無表情なのに騒がしいってこれもうわからねぇな……」


なに矛盾したこと言ってるんだいセリカ

変なことを言うから案内役の兄妹が不審がってるだろう

興味津々に視線を忙しなく動かすクリス可愛すぎてクリスを観察するボクも忙しい

カサンドラのテンション高めの説明もきっちり聞いてたし、相槌も売っていたから問題ないだろう


「ところでソニア様……?」


案内もそこそこ回った頃

学園を案内してくれたエルモート・ヴァン・ルークシュアーツは妹と顔を見合わせて、素朴な疑問をぶつけた


「なんだい?」


「何故、男子生徒の制服を着られるのかな?」


「他国はボクに良い印象は持っていないよね?名前だけじゃ不安だから性別も隠すことにしたんだ」


偽名で学園に編入することになったけど、見た目でバレると思うんだよね

あと、ズボンのほうが落ち着く


「な、なるほど……」


あれ引かれてる?

頬引き攣ってないかい

逆にカサンドラは嬉しそうだね


「って!姫さんが男子生徒やるならアタシも男子生徒でよかったじゃねぇか!なんで女子制服なんだよ!」


「とかいって着たそうな目をしていたじゃないかセリカ。似合ってるよ?」


「セリカさん満更でもなさそうな顔していましたよ?制服とても似合っています」


クリスのいう通りだ

クリスのいうことが全て正しい

ボクの好意を無駄にしないでほしいね

どうせ鏡の前でにやけていたんだろう

鏡の前でターンとかしてにやついていたんだろう

見ていないけど想像がつく


「そんなことねぇし!?そんなことねぇし!?」


二回も言って動揺してるじゃないか

素直に喜べばいい


「…ニア、ニア。似合…?」


「うん?うん。似合うよシャルロット」


偽名、ニア・アーチボルグだから似合うか聞かれたのに一瞬気付かなかったよ

シャルロットは何故か侍女長の推薦により学園に同行していた

シャルロットもボクからあまり離れたくないようで手放しに賛成したとか

愛い奴め

頭を撫でてやる


「お姉様?私には何も言ってくださらないのですか?」


「クリス!ああ、愛しのクリス!眩しすぎて目が焼かれそうなくらいに似合っているよ!」


人前じゃなかったら抱き締めているよ

流石に公衆の面前でそんな破廉恥なことは出来ないから我慢する

ボクえらい

だからベル、羽交い締めにしようとしなくていい

ボクはまだ(かろ)うじて理性を保っている


「え、私のソニア様はこんな人じゃないかな……」


私のってなにかなカサンドラ

ボクは誰のものでもないんだけど


「人気者は大変だな姫さん」


「ああ、いつ命を狙われるかも分からなくて刺激的だよね」


「そういう意味で言ったんじゃないんだけどな姫さん」


「それはそうとセリカ、学園では姫さんと言わないように。ボクは男子生徒なんだから」


「男子にしては綺麗な顔だよな」


「セリカこそ男装なんて無理なくらいが女の子らしい顔じゃないか」


「そーですか」


セリカとボクは身分を気にせず軽口を叩き合う騎士と姫というより悪友と言える距離感になっていた

こういうやり取りに心地良さを感じている

カミーユとは別のカテゴリーの友人だ

セリカにとってボクは理想のお姫様ではなかったそうだ

知ったことではないね

絵本の中の綺麗なお姫様なんて鳥肌が立つ

ボクは転生者で悪役王女なんだから


「ニア様」


「なんだいクリス?」


「ふふ、呼んでみただけです」


何、ボクの妹小悪魔可愛い

こんな子になら騙されて死んでも本望だね


「でも、この呼び方、少し……照れます」


照れ隠しに微笑むクリス

なるほど、ここが天国だったか

思わず心臓が鼓動を刻むのを一瞬忘れていた

さっきまでなんの話をしていたんだっけ

記憶が飛んでいる

ああ、シャルロット心配しなくていいよ

わりといつも通りだよ


「これはこれであり……かな……」


「やはり噂はあてになりませんね」


さっきと反対な表情してるね君達

ボクの噂なんて碌なものじゃないよ

割りと間違ってないのがどうしようもないからね


「皆さん、次の学園長室で最後です。お疲れ様でした」


五つある校舎の一つ、その最上階にある学園長室に踏み入ると一人で酒盛りをしている老婆がそこにいた

樽が転がっているが、一人で空けたのだろうか

ボクは前世でも成人する前に死んでいるので酒を飲んだことはないのだが、この老婆が酒に強い、なんといったかウワバミだったか

酒豪であることは分かった


「……」


「……」


無言の時間が数秒流れると、真顔の老婆は咳払いをし、席を立つ


「おうおう、入学おめでとうヴォルキアの若者達。あたしが学園長アンギル・ミュラーさ。今は特に言うことはないからゆっくり休んだ長旅の疲れを癒すといいさね。以上!解散!」


一言だけ言って締め出された

あれがトップとか大丈夫かこの学園

いや、ヴォルキアの王も大概だし、トップで判断するのは早計か


あけましておめでとうございます

今年も「悪役王女に転生したようなので主人公に嫌がらせを」をよろしくお願いいたします

皆様の応援があるかぎり毎週更新ガンバリマス

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ