〈34〉
ごめんなさい
今週は書けてないので休みます
皆様、SIN終わりました?おにーさんはメルトとリップでさくっとクリアしましたよ
ええ、ゲームしてたから書けてないんですね申し訳ない
ドラゴ・エルリュートは気にしなくていいです
両親はアレクトルが王になり、まぁ、すぐ失脚して前のように酒池肉林の日々が帰ってくると高を括った
されど、テレサに不正の証拠を持ち出され、爵位と領土を没収される
ここで漸く事態の深刻さに気付いたが手遅れで、国を出るタイミングを失っていたことを知る
老害貴族と馬鹿にしていた者は、不正を上手く隠しているのか、不正に目を瞑っても見返りがあるほど有能なのか
彼等は自堕落な生活を送っていたにも関わらず、少なからず愛国心を持ち合わせていたために見逃された
そんな貴族共は自分に益のない者を抱き込まない
両親は老害貴族に縋れず、貴族でもなくなり、貴族に返り咲くことを息子ドラゴに期待する
両親の期待を背負って騎士団に志願した
コネがないのでドラゴは真っ当に入団し、両親の期待に応えんと真っ当に上を目指していた
しかし、限界を感じた
才能がなかったのだ
両親のドラゴを押し潰さんとばかりの期待に答えれないと悟り、項垂れ、少しずつ少しずつ憔悴してゆくドラゴに声がかかった
グランツが条件付きで、好待遇で迎えてくれるという
当然、うますぎる話に疑念を抱いたが、条件のハードルに納得した
命が幾つあっても足りない『非情姫』の誘拐
好待遇で迎え入れてもらわねば釣り合わない
そう言い聞かせて都合の悪いことから目を逸らす
※ ※ ※
ドラゴ・エルリュートは焦燥と憤怒に苛まれていた
クソクソクソッ!話が違うじゃないか!と辺りにあるものに手当たり次第に蹴りつけて怒りを表現していた
ドラゴはヴォルキア騎士団の末端に席を置いている
そのことがドラゴには屈辱でならなかった
私ほど才のある人間が隊を任されないとはどういうことか!
何故、私ではなく『姫騎士』セリカ・ハーネストなどという女風情が持て囃されるのか!
そもそも高貴なるエルリュートの血族である私が泥臭い騎士団になどに身を置いていること事態が間違いではないか!
ドラゴは自己顕示欲が強く自信家であった
実際のところドラゴの実力は下の中
素人に毛が付いた程度のものでしかなく幼いセリカの足元に遠く及ばない
そのことに本人は気づかず指摘されても認めず手合わせをしても間違いだのなんだの言い訳をしては現実から目を逸らす
ドラゴはエルリュート伯爵家の長男として生を受けた
その頃はまだ前国王が貴族に媚びへつらえ民から税を絞り煌びやかに腐敗していた
ドラゴは贅の限りを尽くした生活の中で成長した
行き過ぎた贅沢は人を腐らせる
例外なくドラゴは自分が世界の頂点だと錯覚していた
親が意図してドラゴに目上の相手をさせなかったからだ
挫折を味わったこともなかった
ドラゴのやること成すこと全てが上手くいくように従者が誘導していたからだ
かくしてドラゴは駄目な大人へと成長した
その頃に前国王は消えアレクトルが新たな国王となりヴォルキアは生まれ変わることになった
同時にドラゴのまやかしの天下も終わった
しかし、ドラゴは現実を受け入れなかった
こんな筈があってたまるか
私は選ばれた人間だ
私の楽園は終わらない
そんな彼に仮面の男は囁きかけた
「えぇ、そうですともそうですとも。
貴方様はこんなところに燻っていていいお方ではない。
そこで提案があるのですがどうでしょう?」
ドラゴは単純な男であった
世事を世事と気付かず真に受け気を良くした
ドラゴは第一印象で胡散臭い奴だと評価した仮面の男の言葉を促す
私の価値がわかる男だ
間違いは言うまいと彼はほくそ笑む
「ヴォルキアでは貴方様は輝くことは出来ない。
ならばヴォルキアを出るのです。
グランツは貴方様を歓迎致します。
新天地を目指すのです」
ドラゴは納得して案内するように名もしらぬ仮面の男に命ずる
すると仮面の男は言った
「その前に一つお力を貸していただきたく。
貴方様にしか出来ないことなのです。
成功した暁にはグランツでの貴方様の未来はより輝かしいものになることを約束致します故」
ドラゴはその話に乗った
魔力持ちのガキを浚い、忌々しい第一王女をグランツに送り届けた
仕事を終えると一旦、ヴォルキアに戻るように願われた
怪しまれるのではないかとドラゴは尋ねる
「奴等は貴方様が犯人とは気付きませんよ。
なぜなら貴方様ほどの天才を埋まらせるような連中なのですから」
それもそうかとドラゴは納得して何食わぬ顔でヴォルキアに引き返した
甘い毒を啜った愚かさに気付かぬまま、
家族を毒の盛られた皿に連れ込もうとしていることにも気付かずに
※ ※ ※
家族はドラゴに期待するだけで何も助けてくれない
誉めてくれても、休むことを許してくれない
重圧ばかり増していく両親
ドラゴはなんでも出来ると思っている節のある妹
そんな家族をドラゴは愛している
愛していたのだ
※
妹の頼みだった
ヴォルキアに人形を忘れたのだという
代わりはいくらでも買ってやると言っても聞き分けてくれない
こうなると両親でも妹には勝てない
裏切り捨てたヴォルキアに戻るなど、危険すぎる
命を捨てにいくようなものだ
だが、妹の頼みとあらば戦場でも魔族の住み処だろうといってやるとも
ドラゴは死ぬ覚悟でヴォルキアに蜻蛉返りをして、それが家族との今生の別れとなった
※ ※ ※
問題なく、ヴォルキアに帰りついた
問題なさすぎて不気味なくらいだ
聞くところによると亜龍が魔獣の群れを率いてヴォルキアを目指しているのだという
なんたる幸運か
いまならば、妹の人形を取って戻ることも出来る
人形なんて取りに帰るべぎではなかった
幸運なんてものはなかった
※ ※ ※
喉がひりつく
膝が震える
どうか嘘であってくれと目を何度も何度も擦る
けれど、見える光景は変わらない
肌を刺すような寒気が嫌でも現実だと知らしめる
目は乾き、涙もでない
グランツは滅んでいた
氷に覆われた国からは生命の気配はなかった
「ああ…、ああああああああああ!!」
ドラゴは膝から崩れ落ちた
犯人は分かっている
あいつだ
冷酷で残忍でで非常な人の形をした怪物『血濡れ王女』
あまりにも順調に進んでいて、油断していた
侮ってしまった
相手はあの怪物だというのに
だって想像できるだろうか
見てくれは幼い子供であるたった一人で国を滅ぼしてしまうなんて
想像できるはずがない
後悔なんて意味はない
起こったことは戻らない
ああ、神様
もしおわすなら
私も家族と共に…
氷に閉ざされた国に男の慟哭が響く
誰にも届くことなく、氷った国は何も男に返すことはない