〈18〉
ボクのとき同様、五歳となったクリスを国民に知らしめるためパレードを開くらしい
父は愛娘を自慢したくて仕方ないようだ
まぁ、地に舞い降りた天使であるクリスを自慢したくなる気持ちを共感できることだね
ギルダーツも今度こそはパレードを成功させようと意気込んでいる
クリスはボクと違ってお淑やかで誰かのように無責任に抜け出すようなことは絶対にしない女神なんだから肩の力を抜けばいいのにね
ついでに前回逃げ出したボクにも顔を出させようなんて余計な計らいをしてくれるものだ
流石に迷惑かけたなと反省しているから逃げれないじゃないか
意外なことに老害貴族どももパレードに文句の一つも言わず乗り気で賛同していたらしい
ボクのときは三日三晩口論が続いたというのに、なんてわかりやすい連中だろうか
パレードは民衆を交えた無礼講のようなもの
クリスに近づきゴマを擦りこみ、あわよくば寄生しようとしているのがまるわかりじゃないか
……他には前回で父の愛娘自慢への無駄な熱意には敵わないと悟ったか脳筋のボクと違い万人に受けるクリスなら民衆に見せても問題ないと思ったからだろうね
「姫様!姫様!暇ならもっと可愛らしいドレスを着てみてはいかがでしょう?」
ベルネリッタがボクには似合わなそうなドレスを手に何かほざいているが無視しておく
今、ボクとクリスは明日のための衣装を見立てている
部屋一面には豪華絢爛たる衣装がずらりと用意されている
ボクは派手で悪目立ちするドレスを好まない
適当に地味で動きやすく実用的なドレスを選んだ
ボクが着るならそれはただの布きれ
ただの布きれに無駄な装飾はいらない
むしろドレスより男物の服のほうがいい気もする
この場に並べられている数多の無駄な布きれで貧民のどれほどが飢え死にせずに済むだろうかと意味のないことを考える
貴族の不合理的な金の使い方には呆れを通り越して頭が下がる
ただしmy favorite goddessは例外
「お姉様!お姉様!このドレス似合いますか?」
その場で一度ターンをして上目遣いで感想求めてくる妹マジ可愛い
いつものクリスは明るい度合の大人しめなドレスを好んで着ているが今日は冒険してみたようで紺色のドレスを身に纏っている
桃色の髪の女の子に紺色のドレスは似合わない?
浅はかだね
クリスは美の顕現、有象無象とは格が違う
ようはわかりきっていたことだがミスマッチな服着るクリスも可愛いということ
「いつもと違う色合いのドレスを来ただけなのに立派なレディーに成長したように見えるよクリス。いつもの愛らしいクリスと甲乙つけがたい魅力だ」
「そ、そんな褒められると照れてしまいますよお姉様……」
クリスが顔を赤らめて俯いてしまう可愛い襲ってしまいたくなるほどに可愛い
「姫様!姫様!目がヤバいです!罪人のようです!落ち着いて!」
ハッ!危ないところだった
具体的に言えばベルネリッタの声がなければ理性が蒸発して姉妹の垣根を越えクリスを美味しくいただいてしまうところだった
齢五つにしてこの圧倒的までの破壊力
クリスが大人に成長したらボクはどうなってしまうことやら……
まずはボク同様にクリスを襲うであろう父を始末するかな
「決闘のときの凛としたお姫様はどこにいったんだ……?」
「なんだセリカいたのかい」
「最初からなっ!てか、なんでアタシなんて騎士見習いがお姫様の着替えに付き合わされてるんだ?」
セリカは何故か呆然自失とした様子だったがツッコミで普段の勢いを取り戻していた
「愚問だね。ボクは君を気にいったんだ。そばに置いておくのは当然だろう?」
「こく……!?な、なら仕方ないか?いや、アタシが着せ替え人形にされてるのはなんでだよ?」
男勝りなセリカは騎士見習いになってから女モノの服を着ないようになったそうだが今はドレスである
これが幼女ではなくゲームの彼女くらい成長していたらときめきの一つでも覚えたかもしれない
「君を着せ替え人形にしているのはボクではなくクラリナ嬢だよ。それに着たそうな顔をしていたじゃないか」
暴れるセリカをベルネリッタに抑えさせて着せ替えて遊んでいたのはアスカルト家侯爵令嬢クラリナ嬢だ
セリカも嫌がっているのは形だけでクラリナ嬢はWINWINな遊びだったと見ている様子
ちなみに遊んでいたクラリナ嬢はクリスと歓談している
「……あざとすぎてありえませんね」「あざとい?なんのことだかさっぱりです」「……そういうところが」
最近、均衡がクリスに傾いてきたようでクラリナ嬢が噛みつきクリスがあしらうという図になっている
言っていることの意味がわからないことがあるのは困ったものだ
ボクは本気で脳筋になってしまったようだ
「そ、そんなことねぇし」
図星を突かれたセリカはわかりやすく顔を背ける
原作のセリカ・ハーベストは可愛い服に憧れていて隠れて女物の服を着て鏡の前でにやけているところをレオナルドに目撃されて赤面するイベントがあった
そのシーンのCGはクリスのCGの次に好きだね
「おやおや、顔がにやけていますよ?」
今も背けたセリカの顔がにやけていることをベルネリッタに指摘されてからかわれている
顔を背けたところでセリカの口角はひくついているのがわかって微笑ましい気分になる
明日はクリスに自分の駒との婚約を取りつけようと直談判に来るであろう老害どもを払わないとね