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〈14〉




ボクは城の中にある騎士団の詰所に度々遊びに行くようになった

建前は妹の守る護衛騎士に相応しい者を見定めるため

いつまでもボクや父が側にいて守ってやることは出来ないからね

本音はヒロイン、セリカ・ハーネストが来るのを待っているのだが、建前のほうがボクにとって重要なことである


「王女殿下は本当に妹思いですな」


何を言っているんだいこの筋肉ダルマは妹が世界より優先されるという常識を知らないのか


「たった一人の可愛い可愛い妹のために動くのは至極当然のことだろう?」


「ハッハッハ、そんな不思議そうに返されるとは!益々、アレクトルに似てきたな……いや、テレサ様寄りか……」


笑ってるけど後半の言葉がかなり深刻なものに聞こえたよギルダーツ


「団長!騎士になりたいという者が……」


若い騎士が来客との報告に駆け込んできた

その抑えられている笑みには人を傷つける悪意が見える

指摘しなければ気付かない指摘しても認めない有象無象特有の常識という名の悪意だろう

ソースは前世の家族


「貴様、王女殿下の御前だぞ!控えろ!」


礼儀がなっていない若い騎士を怒鳴るギルダーツ

だが気が抜けると父を呼び捨てにする貴方が言えることではないと思う


「も、申し訳ありません!」


姿勢を正し謝罪する若い騎士

顔色は青くなっている

騎士団長はボクの前では気のいいおじさんでしかないけれど、若い騎士に畏怖を抱かせる存在なのだ

さしずめ、自分は体罰より恐ろしい目にあうとでも思っているのだろう


「怒らなくていいよギルダーツ」


「しかし……」


「君の怒鳴り声よりボクは彼が持ってきた報告が聞きたいね。彼、笑いを堪えていたんだよ。さぞかし面白いことがあったんだろうね?」


「そうですか。ドラゴ報告しろ」


ドラゴと呼ばれた若い騎士の顔色は青を通り越して土色になっている

さしずめボクの期待を裏切ったら痛い目では済まないと思っているんだろう


「き、騎士になりたいとハーネスト男爵のご子息が訪ねてきたのです!」


「ハーネスト?聞いたことねぇや。地方の貴族か?」


「そ、そうですよね自分も聞いたことがありません。笑ってしまいます。はは……」


乾いた笑いを漏らすドラゴはボクをちらっと盗み見て息を止める

ビビりすぎて面白いね

内心では笑ってるけど彼にはボクが機嫌を損ねているように映っているんだろうね

ボクはクリスの前以外では無表情がデフォルトなのだけれど一介の騎士でしかない彼の知ることではないのだろう


「それのどこが面白いんだ?もういい、下がれ」


ドラゴの様子を見て助け船を出す騎士団長


「じ、自分には面白かったのですが、申し訳ありません!自分はこれで――」


「待て」


逃げれると安堵し敬礼をするドラゴを冷めた声で止める


「は、はい……!」


安堵を得て再び落とされた彼の心境はどんなものだろう

ドラゴの目の端から汗が伝っているように見えるけど今日はそんなに熱かったかな


「君、嘘をついてるね?」


ハーネスト家を知らないから笑ったって嘘に無理があるのは本人も気づいているはずだ

仮にドラゴがポーカーフェイスを通していてもセリカは一人っ子なのだから子息がいないのをボクは知っている


「本当は何を笑ったのか教えてくれるかい?」


声にほんのりと殺気を込めて質問する


「う、あ……」


彼は冷や汗が止まらず目が泳ぎまくりである

このまま続けたら泡ふいて倒れるんじゃないかな


「王女殿下、あんまし虐めてやらないでくれませんか?」


「それは誤解だよギルダーツ。ボクに嘘をついた彼が悪い」


ギルダーツがボクを窘める

まるでボクが悪者みたいじゃないか

王女であるボクに嘘を吐く雑魚こそが悪だと思うんだけどな


「ったく、ドラゴ、本当のこと話さないと逃がしてもらえないぞ。別に疚しいことじゃないんだろ?」


「……本当はハーネスト家のご子息ではなくご息女が騎士になりたいといっているんです」


わかっていたけど確認は取れた

ついに二人目のヒロイン、セリカ・ハーネストが来たのだ


「なるほど君は女が騎士になりたいなんて片腹痛いと笑っていた訳だね」


ボクは表情を崩しドラゴを安心させるように笑いかけた

ボクの笑みにドラゴは安心して壁に寄り添う


「結局、面白い話ではなかったな……」


ボクの魔力を放出して部屋中に冷気を漂わせる


「ひ……っ」


ボクの魔力に“死”を感じドラゴは腰を抜かして泣いてしまった

騎士団長も流石にボクを叱りかねない

さしずめ、ボクが《血濡れ王女》と呼ばれている知っていて必要以上に怯えているのだろう


「冗談だよ冗談。別に君を不敬罪に処そうだなんて思ってないよ。報告ご苦労下がっていいよ」


ケラケラと笑うことで安心させようとするがもうドラゴには戯言に応じる余裕もないようだ

よろよろと四つん這いで退室していった


「王女殿下……あれでドラゴが辞めたらどうするんで?」


コメカミを抑える騎士団長


「この程度で辞めてしまうなら最初から騎士になどならないほうがいいと思うね」


ベルリネッタやジェイエスならボクの殺気を感じても迎え撃とうとする気概があったんだけどな

たかが七歳の子供に屈するなんて騎士はメンタル弱すぎないかい


「全く反省しないところ昔のアレクトルと瓜二つじゃないか……」


「ギルダーツも父上を呼び捨てにする癖は直したほうがいいよ」


ボクは七歳の子供には少々高い椅子から降り退室しようと静かに控えていたベルリネッタに合図する


「王女殿下、どちらに?」


「決まっているだろう?ハーネスト家のご息女に会いに行くんだよ。君も来るかい?」



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