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エレノアの祭り3~2日目の二人~

二人の内訳はカーラ1人とエレノア1人です。

二日目は朝から文字通りのお祭り騒ぎとなる。この日は魔法省が行うショーと、騎士団のパレードがある。それをひと目見ようと人々が街を埋め尽くすのだ。

カーラと魔法ショーを見学する約束をしていたエレノアは、現れた友人を見て驚いた。

「おはよう、エレノア。出発前に少しお邪魔させていただいてもいいかしら?」

そう言ったカーラは、なぜかかなりの荷物を携えていた。

エレノアとて、人前では貴族の作法として侍女や侍従に荷物を持ってもらうだけで、家では自分でした方が早いとやってしまうことも多い。だから、驚いたのはそこではなく、その荷物の量だった。

ひとまずエレノアの部屋に入ると、カーラはすぐに荷物を開き始めた。

「これから行くところへは、普段の格好では行きづらいの。悪いのだけど、貴方もこちらに着替えてね」

そう言って取り出したのは、エレノア達が普段着ているものよりも大分質素で、スカートのふくらみもほとんど無いワンピースだった。

「その代わり、ショーは最高によく見えるわよ」

エレノアは、思ってもいなかった流れに驚きながらも、それをすでに楽しみ初めていた。

「これを着ればいいのね」

藍色のワンピースを着ると、ガーラント家の侍女たちとほとんど変わらぬ姿ができあがる。

「髪もまとめ直しましょう」

カーラ自らエレノアの髪を、若い侍女がよくするまとめ髪に仕上げてくれる。カーラの手先が器用なことにエレノアは驚いた。

「我が家ではね、将来のために、こういうことは一通り習うのよ」

初めて聞くカーラの家の家訓に、エレノアはキャンベル男爵家とはどのような家なのだろうかと不思議に思った。

そしてカーラに質問をしようとしたのだが、そのとき、アンが意を決したように口を開いた。

「あの・・・失礼を承知で申し上げますが・・・お嬢様方に危険はないのでしょうか?」

アンの言葉は、侍女としては当然だ。エレノアとカーラがしようとしているのは、変装してのお忍びだ。

エレノアの安全を心配する彼女の言葉に、カーラは最上の笑顔でこう言った。

「キャンベル家が保証いたしますわ」


こうして、心配そうなアン等を残して二人の少女は出発した。ウィリアムとハロルドが不在だったこともエレノアに幸いしたといえる。侍女姿の二人には当然のこと、護衛はいない。これをガーラント家の心配性の父親や、最近父に似て心配性になってきたハロルドが知れば、阻止しなかったはずがない。

エレノアは、初めてお供をつけずに歩くことにどきどきしながらも、まっすぐ前を見てカーラの横を歩いた。

彼女はカーラに、屋敷を出たら決してきょろきょろしてはいけないと教え込まれていた。お仕着せを着た者は、祭りの日であっても主のため目的をもって歩いている。だから大道芸に足を止めたり屋台をのぞき込んだりしては、変装したお忍びの貴族だとばれてしまう。この変装を楽しんでいるエレノアは、カーラの言いつけを素直に守った。

二人は無事に王都の巨大な図書館にたどり着くと、裏口をくぐった。図書館正面は広場となっており、三叉路の合流部となったそこにはどの方面からも続々と人が集まってきている。

そこには門番が二人いたが、カーラが示した紙を見ると、にこやかに通してくれた。

「今日は、警備が厳しいの。ここはショーの真正面でしょう。それで、空き部屋をショーの関係者の控え室にしているのよ」

カーラのいう特等席は、そうした関係者のための一室だという。

小部屋が並ぶ階へあがると、そこにもかなりの数の見張りがいた。カーラが一番最初の見張りに先ほどの紙を見せると、二人は小部屋の一つに案内された。

「私たちは、ある方の侍女という扱いになっているわ。だから見張りの前ではそれらしく振る舞ってね」

とはいえ、扉を閉めてしまえばここには二人しかいない。

早速窓際に駆け寄ったカーラを追い、エレノアも通りを見下ろした。

窓はショーが行われる大通りに面しており、しかもメインの魔法が見られる中央の広場が真正面に見えた。カーラが太鼓判を押しただけあり、観覧場所として申し分ない見晴らしだった。

さらには、調度品もきちんと整えられている。キャンベル家にはそうとう特殊な伝手があるらしい、とエレノアは唸った。

「この場所を控え室に割り当てられる方って、かなりの身分の方よね」

エレノアは恐る恐る、気付いてしまったことをカーラに確認した。

「そうね。でも、大丈夫よ。どうせショーの間は特別席から戻られないし、ここに私たちがいることはその方も了承なさっているのだし」

特別席と聞いてエレノアは固まった。ああそうなの、と頷ける話ではない。本日のショーの開催宣言は、王妃がするのだったか。自分がこうして見聞きしていることは、警備上秘密にした方がよいことのはずだ。一介の子爵家令嬢が知ってよいことなのだろうか。

エレノアの表情が硬くなったのを見て取ったのだろう、カーラは彼女の手を握って言った。

「そんな顔しないで。私、ずっとエレノアとショーを見たかったんだから」

その頬は少し膨れ、いつものカーラよりも子どもっぽい表情だった。

それがカーラの本心を何より表していて、エレノアは仕方がないなと笑ってしまった。そのため、もしかしたらあったかも知れない大人達の思惑など、意識に引っかかりかけた物事もうっかり流してしまった。


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