エレノアの魔法修行2
必殺技が完成しました。
冬は子ども達の父も領地に帰るので、王都の屋敷は寂しい。しかし、エレノアが居るとなんだかんだと騒がしい気がする。
「エレノア様、何をなさって居るんですか?」
侍女のアンが困惑気味に聞いたのは、エレノアが先ほどからずっと柱の影に陣取って動かないからだ。
「見て分からない?待ち伏せよ。」
「ええ・・・ですから、なぜそんなことをなさっているのですか?」
普段ならば淑女たるもの・・・と自分で自分を律している彼女だ。いや、今も一応壁に張り付きつつも、背筋は美しく伸ばしているのだがそれではいろいろ無意味であることに、侍女としては気付いて欲しい。
「必要なことなのよ。だってね・・・・あ!」
小声で答えながらも目では柱の先を見つめていたエレノアが、突然動いた。
「ハロルド!」
腕を掴まれてぎょっとした顔のハロルドに、エレノアが叫ぶ。
「今日こそ攻撃してもらうわよ!」
魔法の特別補講におけるエレノアの目的は、確固たる防御力を確保することだ。
そこでホールデンは、相手を倒したい訳ではないから攻撃を相手に返すような高度な技は必要ないと割り切り、エレノアの唯一の長所、一点集中型の威力を生かした単純でも持久力と強度の高い「壁」を作ることに力を注いだ。
正直見栄えは良くない。硬いイメージが簡単だった土の要素で、とにかく身を守るためのそれを見て、正直なカーラは
「亀みたいでかわいいわね?」
と言ってくれた。それでもいい、確かに頭を引っ込めた亀のような土のドームに華々しさはないが、エレノアの要求を満たしているのだ。
最初はドームの大きさが足りず、這い蹲って本当に甲羅を被った亀のような状態だった。しかし修行の成果で、現在は優雅に立ったまま甲羅を被るに至っている。淑女として地面に鼻をつけている姿勢はいかがなものかと思っていたので、この優雅な亀はエレノアを非常に満足させた。
呪文も一声だ。
最初は「出でよ、土の壁!」だとか「土よ我を守れ!」だとか唱えていたのだが、その辺りの形式美はホールデンによって切り捨てられた。
魔法の肝は魔力とイメージであり、呪文とは唱えたときに何をイメージするかという取っかかりに過ぎない。だから極端な話、同じ呪文を唱えていても、魔法使いによっては違う技が出てくることもあり得る。まあ、イメージが予備知識に引きずられるため大体は似たような呪文で同じような技を出すのだが。
そんなわけで、
「防御に速さは必須だ!もっと短くいこう!」
「形が非効率!壁で駄目なら変えて!」
「イメージがぶれてる!」
「声だけ大きくても駄目!」
と駄目出しを受け続けた結果、
「土の壁!」
「壁!」
「丸壁!」
「壁ええ!」
「亀ええ!」
「よし、それでいこう!」
と、最終的には「亀」になってしまった。
その亀の甲羅もかなりの厚さになったところでホールデンはエレノアに一つの課題を出した。
「それじゃあね、エレノアちゃん。君の亀で・・・」




