エレノアと妹2
エレノアが使ったのは、炎を鳥の形にして飛ばせる魔法だった。火という要素を生み出す、形を与える、動かすという3つが組合わさるため、なかなかに難しく、エレノアにはまだ短時間しかできない。ただ、授業中に成功させたら王女が喜んだことが頭に浮かんで、なんとなく選んだのだ。
エレノアの手の上に浮かんだ炎が無事に鳥になると、思った通りシンシアは歓声を上げた。
エレノアも嬉しくて微笑んだ。
うまくいった、そう思った瞬間だった。
興奮したシンシアが火の鳥に向かって手を伸ばした。
「危ない!」
エレノアは鳥を消そうとした。
ところが慌てたエレノアは鳥の動きを自分に向けて、そこで集中を切らしてしまった。
魔力を与えられた火はすぐには消えず、形を失ったまま飛び続ける。
エレノアは動けなかった。
迫り来る火を前に固まっていた。
「ねえさま!!」
ちり、と前髪が焦げた。その音と、シンシアの悲鳴と、誰かの声が重なった。
「水の壁!」
エレノアの目の前が白くゆがんだ。
突如現れた大量の水が球を描いて壁となったのだ。エレノアを焼こうとしていた火は、分厚い壁に吸いとられるように消失した。
「・・・ハロルド。」
部屋の入り口に、恐ろしい形相をしたハロルドの姿をみとめ、エレノアはぼんやりとその名を呟いた。
あの大量の水は火が消えると共にエレノアをぬらすこともなくかき消えていた。つまりそれをやってのけたのは、そうしてエレノアを助けたのは、ハロルドということだ。
「わあ、すごいにいさま!」
同じくそのことに気付いたシンシアがハロルドに駆け寄って賛辞を送るが、ハロルドはそれを一瞥するだけで、厳しい視線をエレノアに戻した。
「なに危ないことしてるんだよ。一歩間違えたら大けがするところだったんだぞ。」
「・・・ごめんなさい。」
「使いこなせない魔法をこんな場所で使うなんて、どれだけ馬鹿なんだよ。」
「・・・はい。」
「自分も他人も危ない目にあわせるような愚か者に魔法を使う資格なんてない。」
「・・・・・・はい。」
「今の悲鳴は何!?」
「何があった!」
開いたままの扉から血相を変えた両親達が入ってくる。
エレノアとシンシアは大人達に質問攻めにされ無事を確認された。気付けばその間にハロルドは去っていった。
両親に叱られ、抱きしめられながらエレノアは、自分の失敗と浅慮と、数段上を行くハロルドの力に意気消沈していた。
こっそり鼻をすすり上げると、かすかに焦げた髪の毛の匂いがした。




