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エレノアの誤算
「何で・・・」
エレノアは呻いた。
信じられないものを見たというように、両の目を大きく見開いて。
「どうかしましたか?」
組んだ足をゆったりと組み替えて、彼は首を傾げた。
エレノアの驚きが意外だとでも言いたげに。
そのわざとらしい仕草に、彼女の中の何かがはじけ飛んだ。
血の気の引いたエレノアの唇が怒りのままに動く。
「何であんたがここにいるのよ!?」
エレノア・ガーラントの人生には、挫折がつきものだった。
それは幼少期から始まり、彼女は多くの敗北を味わい、様々なものを失ってきた。
失ったものは数え上げるなら、そう。
自分への自信。
安心できる居場所。
跡取りという立場。
大切にしていた仕事。
そして、頼りにしていた、優しい婚約者。