運命という名の。
僕は雲母さんの死を回避し続けた。多少強引でもいい。これだけが僕に出来ること…最近は雲母さんを助ける度に涙が溢れてくる。でも…彼女を殺し続けているのは僕の方かもしれない…
分かった。先生が私を助けに来る理由。それが…先生を苦しめていることも。あの公園の時に分かった。決めた。先生を助けられるのは私しかいない。
今度雲母さんが死ぬ原因は…電車ホームのからの突き落としだ。どうしてこんなにも彼女は殺される運命なのだろうか。今日も職員室に残る様に説得しなければ、また一からだ。「…雲母さん、放課後に職員室に来てください。」
職員室に呼ばれた理由は分かる。私がまた死ぬ運命にあるからだ。先生は…絶対に私を説得させる。行こうものなら、縛ってでも。でもね…先生。
「ああ、雲母さん。今日は少し雲母さんに手伝って欲しい仕事があって…」「…私が死ぬからですか?」職員室全体の空気が凍った。先生の顔も。「雲母さん…?どうしたんですか?」「ここではなく、中庭で。」
中庭は日中は生徒がよく立ち寄るが、放課後はほとんど立ち寄らない。今は先生と二人っきりだ。「先生…私はもう先生を苦しめたくありません。」「雲母さん…?僕は雲母さんのことを…」「私…先生のこと好きです。大好きです。」「…止めてください…」私は止めない。絶対に。「守ってくれて嬉しかったです。きっと…何度も守ってくれたんですね。どの世界でもきっと麻友はあなたのこと…大好きでした。」「止めてくださいっ!僕は今でもあなたのことが大好きです!だから…もう止めてください…」「先生は何に怯えているんですか?」「僕は…あなたが好きと言ってくれなくてもっ!あなたを守ることだけ考えないといけないんです!それが僕の運命…」「違いますよ。」優しく微笑み返す。先生は静かに泣いていた。「私…今絶対死にます。」はっと先生が上を見る。飛行機が…こちらに向かっている。あと少しで墜落するだろう。「私…どう頑張っても死ぬ運命です。そして…私の生きたいという思いと先生の生きて欲しいという強い想いが、このループを生み出した。」「…っ!違う!僕は…」「違いませんよ。」先生にキスをする。恋愛ってものが少し分かった気がする。人を好きになるってこんなにも…素敵なんだね。「さあ、先生は逃げて。先生にはやり残したこといっぱいあるでしょ?」「ま、麻友っ!」麻友が微笑むのと、僕が麻友に押されたのと、飛行機が墜ちるのはほぼ同時だった。




