ループという名の。
僕は昔からいつも自分に自信がなかった。自信のない自分に嫌気がさし、自己嫌悪になる。だからいつもからかわれたりした。別にどうでも良かった。自分以外に興味などなかった。それでも当時の先生に言われるままに理科の先生になった。生徒と上手くやっていけるだろうか。不安だらけのまま、学校に行った。
「は、はじめまして…川村健太と言います。始めての授業で分からないところがあったら言ってください…」そんな感じで授業をやり続けた。何度も何度も黒板に同じことを書いた…こんなことをしていて意味なんてあるのだろうか?また、自己嫌悪が自分にのしかかってきた。
その日も授業が終わり、たくさんの提出物を抱えていた。途中でつまずき、転んでしまった。あちこちに散らばる提出物を見ながら…もうどうでもよくなって、しばらくぼーっとしていると…「先生、大丈夫ですか?」顔を上げると…女子生徒が立ってこちらを見ていた。「こんなに一度に運べるわけないじゃないですか…私が手伝いますよ。」この女子生徒との出会いこそが僕の運命を大きく変えていった…
「ここはこうだから、こうなる。分かりましたか?」「うーん…分からないです。」彼女の名前は雲母麻友さん。二年B組の委員長らしい。理科が苦手らしく、毎日の様に職員室まで教えてもらいに来ている。あの時のお礼…といっても実は毎日彼女が来るのを密かに楽しみにしていた。自信のない僕に自信をつけさせてくれた。「いっつもそんな感じだからダメなんだよ。もっと胸はって堂々としてれば自信だってつくよ。」いつか言ってくれた言葉。胸の中にまだ温かく残っている。僕は彼女が…好きになった。もちろん、教師として失格なのは分かっている。でも…好きだった。いつか伝えよう、この気持ち。彼女は…どう思ってるのだろうか…
「先生、今日もありがとうございました。また、明日。」「はい、また明日。」この明日が来ないなんて、その時の僕には分かるはずなかった。
悲報は次の日、学校に行ってからだった。雲母さんが交通事故に遭って…死んでしまった。あんなに笑顔で、可愛くて、僕に…勇気をくれたのに。どうして?何で?分からないよ…どうしようもなくなって、屋上に行った。何故だか分からないけど、多分雲母さんに会いたかったのかもしれない。屋上から飛び降りた時…気付いたら自分のベッドの上だった。部屋にあるカレンダーも日付が僕が赴任する前に戻っている。ということは…過去に戻った…?ならば!雲母さんの未来を変えられるかもしれないっ!
「今日は残りなよ。お菓子もあるよ。」「本当ですか?」よし!これで雲母さんの未来は変わるっ!
なのに…休みの日に強盗に殺されてしまった。僕は雲母さんの家を知らない。個人情報が厳しくなった今住所を知ることは出来ない。ならばどうするか…?担任!担任になれば嫌でも住所を知ることが出来る!
それから色々雲母さんの未来を変えようと努力したけど…結局変えられなかった。何度試しても…死んでしまう。だから…決めた。これで最後にしよう。これで雲母さんが死んだら…彼女と共に死のう。これが僕の運命だと受け入れた。




