涙という名の。
唐突な先生からの一言。「…僕は、雲母さんを…雲母さんの未来を変えたいだけです。」どういう意味?あれから散々問い詰めたのに、それっきり何も言わなくなってしまった。私の未来…事故で死んでしまうはずだった私の未来?どうして先生に分かるの?聞きたいことがたくさん頭の中を描いて…まるで子供がお絵かきをしたかの様にぐちゃぐちゃになっていった…
「えー?!あの川村未来が見えんの?すごー」「奈々…声が大きいよ…とにかく、あの事故の日本当に偶然呼び止められたってわけ。私も信じてないけど…やっぱり何か知ってるんじゃないかって。」一人で考えていても頭が混乱してしまって、宿題や予習、復習も出来なかった。幸い、今日は学校がお休み。電話で奈々に話すしかなかった。「うーん…未来が見えるなら、今度明日の天気とか聞いてみたらー?分かったりして。」「…あのねぇ、別にそうと決まったわけじゃ…ん?」玄関からものすごい物音がする。チャイムも鳴りっぱなし。最初は嫌がらせかと思ったけど…両親共にいない今日は少し不安になった。「ごめん奈々。ちょっと玄関行ってくるから、また後でね。」「ちょっ…ま」一方的に電話を切り、玄関に向かう。相変わらず、物音とチャイムが鳴っている。覗き窓から見てみると…え、川村先生…?どうして?「雲母さん!早く開けてっ!早くっ!」あの時と同じだ…大声で叫び続けている。何かを感じとり、玄関を開けた瞬間…そのままお姫様だっこされて走り出した。「…せ、先生?は、恥ずかしいんですけど…それに事情が全然分かんな…」「いいから!今は黙っててっ!」真剣な先生を見ていると…それ以上何も言えなかった。
家からだいぶ離れた公園に着いてから、先生はやっと解放してくれた。荒い息づかいで周りを見渡し、私を見てから…やっぱり泣いていた。涙ぐむのではなく泣いていた。「良かった…無事…で…」「…先生?」その直後抱きつかれた時は…もう先生の疑問など吹き飛んで、ただそのまま動けなかった。




