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EP2

「あーい、まずはさっきの漢字テスト返すぞー」という先生の大きな声で、夏期講習8日目の第2時間目が始まった。


俺の元に帰ってきたテストの答案の点数は、100点中やっぱり50点だった。クッソ!!『グギャオアラ』め!!と、良くわからない漢字に怒りを露わにしながらも、「めぐみは何点だった?俺50点だった。」と冷静に隣のめぐみに聞くと、めぐみは「えっへん!私も50点だった!!」と鼻高らかに俺の顔に自分の答案を観せながら返答してきた。馬鹿野郎。お前も50点じゃねぇかと、めぐみの答案をよく観ると、『グギャオアラ』だけ回答したことによって50点を取れているようだった。俺は「え??『グギャオアラ』だけ分かって他の漢字分からなかったの?」と言うと、めぐみは「いやー困ったよ。先生のサービス問題である『グギャオアラ』が無かったら、私テスト0点だったかも!」と返答してきた。


で、俺の答案を観るなりめぐみは「え!?てか『グギャオアラ』だけ分からなかったの??超サービス問題じゃん!!?」と、めぐみが当たり前のごとく俺に大声で言ってきた。その大声を聞くと、先生も、「そうだぞ!折角先生がみんなのために超サービス問題である『グギャオアラ』を出してあげたのに、「笹山」と「磯山泰助」だけは解けなかった!!先生は悔しいぞ!!まぁどちらも他の漢字は全部出来ていたから、優秀は優秀なんだがな!ワッはっは」と言ってきた。どうやら俺と同じクラスの泰助も俺と全く同じテストの答案状況らしい。俺と泰助はその先生の発言に対し、同時に「アハハハハ」と苦笑いしたあと、お互いの顔をじっくりと意味深に見つめ合った。


泰助はこの夏期講習で出会った、小柄な男の子だ。髪型はパッツンとしていて、大きな眼鏡を装着している。いつも泰助は誰よりも早く塾に来て、予習と復習をしているらしい。さらに中休みになってもクラスの中に留まり、ずっと勉強していることが多く、その勉強に対する熱意もあってか、泰助は塾内でいつもトップの成績を取っていた。そんな絵に描いたような秀才君も、さすがに今回の『グギャオアラ』は回答できなかったみたいだ。しかし、今朝のオッサン小鳥といい、異様な漢字テストと言い、今日は何か少しおかしな日だなぁ。


塾の2時間目が終わると、20分の中休みに入ることになった。各々中休みになると違うクラスの奴に会いに行ったり、息抜きに近くのコンビニに行ったりと、様々な行動にでる。俺もいつもと同じくコンビニにコーヒーを買いに行こうとめぐみを誘おうとした、その時だった。


「きさらぎ君。少し話出来るかな?」メガネクイッ


と泰助が俺に声をかけてきた。俺は「ちきしょう!今からめぐみとコンビニ行くのに!!邪魔しやがって!」と若干戸惑ったが、「でも、先ほどの『グギャオアラ』についての話を聞けるかもな」と思うと、俺はめぐみに「ごめんめぐみ。先コンビニ行ってて!」と一言言った。めぐみは何かを察したのか、そそくさと財布をカバンから取り出し、「うん分かった!」と言い去り、コンビニにタタタと走って行ってしまった。あぁ。めぐみ。走る姿も可愛いな。うん。。。と鼻の下を限界まで伸ばし、めぐみに見惚れていた俺の横顔を泰助は観るなり、「あのぅ・・・」とさみしげにこちらに話しかけてきた。俺は「おぉ!!すまんすまん」と正気に戻り、泰助の話を聞く体制に入った。


泰助「きさらぎ君は『グギャオアラ』って漢字、やっぱり知らなかったんだよね?」

俺「もちろん!てか、しかもその問題が超サービス問題ってのもなんかおかしな話だよな?」

泰助「そうなんだよ!しかも誰も嘘ついてるような顔じゃなくて、本当に“当たり前だろ?”みたいな顔をしてるんだよね。」

俺「なー。俺さ、グギャオアラだけじゃないんだよ。朝さあ、変なオッサンの顔した小鳥観てさ」



泰助「!?!?!?!?!?」メガネパリーン

俺「!?どした!!眼鏡のレンズが飛び散ったぞ!!!」



泰助「いや・・・。ビックリしたのさ。。。僕と全く同じ経験している人が居て・・・」

俺「なんだって!?じゃあお前もオッサン小鳥みたのか!??」

泰助「うん。。。」


そういうと、泰助は今朝のオッサン小鳥遭遇秘話を語りだした。



~何時間か前~


ちゅんちゅんちゅん


泰助「ああー!!今日も素晴らしい朝だな!良し、毎朝恒例のマラソンにでも行くか!」

「お母さん!マラソン行ってくるねー」

泰助ママ「はーい。気を付けるのよ~」

泰助「はいはーい」


ったったったったったったったったったったたったったったったったったったったったっ


「そういえば昨日夜に大きな音がしたな。雷だったのかな。」

   「でも家族の皆に聞いても知らないっていうしなぁ。気のせいだったのかな?」

   「まぁいいか・・・」


はあはあはあはあ


   「よし、ここの洋菓子店を左に曲がると、もうちょいで家だ。」

   「ってあれ!?和菓子屋になってる!!?」

   「おかしいな?違う道来ちゃったかな」


?「おい」

泰助「ん??今声がしたような」

?「おい。ここだよここ。」

泰助「!?やっぱり声がする。だけど周りには人が居ないしなぁ。」

?「ここっだっつってんだろうが!!」タバコ首にジュウウウウウ


泰助「あっちゃああああああああ」

   「な、なんだ?え??肩の上に居る小鳥が喋ってる!!?しかもタバコ吸ってる?」

   「てか、ん?オッサンみたいな顔してるな」

   「ま、まさかね、ま、まぁ、に、日本には人面犬や人面鯉の目撃例があるように、」

   「こ、小鳥にもオッサンみたいな人面が居ても良いわけで・・・」クイクイ


オッサン小鳥「おい。」眉毛キリ

泰助「は!!!はい!!!!!!」メガネボキボキ!

オッサン小鳥「俺を妖怪の類と一緒にするんじゃねぇ。」タバコぷはぁ

泰助「す、すいません!!!!!許してください!!!!」

オッサン「分かれば良いのよセニョリータ。じゃあな。」バサバサ

泰助「なんだったんだ・・・てか、なんでタバコでヤキいれられたんだ・・・」


----------------------------------



泰助「という話があったんだよ」と話終えると、得意げに泰助はヤキ入れられた部分を見せてくれた。


俺「てかさ」

泰助「なに?」


「お前の眼鏡、驚いたら勝手に割れたり、ぶん投げたり、ボキボキになるの?」

「そだよ?ていうか、メガネかけてる人は眼鏡を感情表現に使う事なんて当たり前の事だよ」クイクイクイ

「へぇ・・・凄いね。」




というわけで、俺の周りには普通の人間が少しづつ居なくなっているように感じ始めたのはこの頃からだった。


とはいえ、俺と同じ体験をしている泰助はとても強い味方だ。泰助だけはいつまでも俺と同じ境遇の人であって欲しいものだ。

俺はこのあと泰助とMINEの友達登録をし合い、その日は漢字のテスト以外は何事も無く夏期講習は終わり、各々家に帰宅することになった。


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