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エピローグ2

「じゃあここにしよっか」とめぐみが選んだ席は、本来洋菓子店だったはずの2階のテーブル席だった。2階と言えど、この店は山の頂上付近に位置するため、ちょうど山の下の都会を一望できる。そのため景色は抜群だった。


洋菓子店だった時のこの店には入ったことが無かったため、この場所がこんなに景色の良い場所だとは思わなかった。


めぐみがヨイショと席に座ると、その窓から見える景色を見ながらもぐもぐとポテトを食べはじめた。俺もヨイショと座り、それを見てもぐもぐと照り焼きブリたまサンドを食べ始めたのだが、中に入っている照り焼きのブリが臭すぎて「くっせ!!なんだこれ!!魚くせぇ!!旨いけども。でもくせぇ!!」と、重い上に臭いこの料理を頼んだことに少し後悔をしていた。




俺はその臭さ極まる照り焼きブリたまサンドからめぐみへと視線を移した。するとどうであろう。めぐみが可愛く見えた。夜景が見えて、ロマンチックな雰囲気だからか?


はたまたもぐもぐと一生懸命小さな口を開けてポテトを食べているからか?


というか俺は自分の今までの重大なミスに気付いた。


めぐみは可愛かったのだ。


サラサラした髪、キリッとした顔立ち、透き通るような肌、すらっとした体型。性格も気さくで話しやすく、優しい。


まさに俺好みの人間だった。


俺は今まで恋愛なんか興味なかったため、めぐみと会った時も、今までめぐみとはなしていた時も、恋愛に興味のない俺の目には特殊なフィルターがかかっていたようだ。だから、めぐみを観ても何も感じなかった。


そんな俺のフィルターが今日、目から外れてしまったのは、おそらく洋菓子店から和菓子屋、しかも店内はファーストフード店に1日で変わった異様な店を目にして驚いてしまったからであろう。


とはいえどうしよう。凄いドキドキしてきた。


「恋愛というのはやっかいで、一度誰かに恋をすると気になって仕方ないんだよ。」と、高校で同じクラスのハンサムボーイ池田が話していたことはどうやら本当だったみたいだ。


ハンサムボーイ池田の顔を思い出しながらめぐみの顔をちらりと観ると、めぐみは「ん?どうした??」と少しハニカミながら返答してきた。


イチコロだった。俺はその笑顔を観たその瞬間、めぐみに恋をしてしまったのだ。


俺はブホッ!!!と咳込んだ後、「い、いや、なんでもない」と、少し頬を赤らめながらめぐみに返答した。もう今話題の照り焼きブリたまサンドの味なんてどうでも良くなっていた。


めぐみはその俺の焦った様子を観ると、「だ、大丈夫!??あ、わかった!!ははーん。さては私に恋をしてるな?ん?」とニヤニヤしながら茶化してきた。


めぐみは今に限らず、いつもこんな感じで茶化してくる。


例えば昼になると高校の食堂で俺はいつもコロッケパンを購入し、もぐもぐするが、俺が目を離した隙に、その俺の生命線を維持する神が与えし神器であるコロッケパンをめぐみは一噛みしてくることなんてザラにある。で極めつけが、俺がコロッケパンに目を戻し、かぶりついたその瞬間に「あ、間接キッスした!!やだーもう。」なんてケラケラ笑いながら俺を茶化してくるから、めぐみにとっては、この「ははーん。さては私に恋をしてるな?」発言も、きっと俺をただ茶化しているだけに違いない。俺も今までは“俺フィルター”が目だけではなく、心にもかかっていた状態だったため、そのめぐみの行動には何も感じなかったが、今は状況が違う。


だってめぐみにさっき恋しちゃったんだもん。


俺はその発言にドキンとしてしまい、目をぐるぐるきょろきょろさせながら、手にじわぁと汗をかきながらも、正直者の俺は「う、うん・・・」と答えてしまった。


めぐみは「え・・・」と俺のまさかの返答に戸惑ったのか、俺と同じく目をきょろきょろぐるぐるさせて、少し間を置いた後、「え・・ほんと?」といつもの茶化す雰囲気ではなく、真剣な顔で聞き返してきた。


聞き返すなよ!!そんな顔で聞き返すなよ!


と自分の心の中で呟きながらも、めぐみの顔を真っ直ぐ観て、俺はグッと拳を握り「ほ・・・・ほんとだよ」と言おうとしたその瞬間、




バンバリバリバリバン!





とかなり大きな音がした。

その音はどうやら外から聞こえてきたようだった。めぐみと俺はビックリして、バッとその音がした方向を窓から覗くと、そこには何も異常がない、いつもどおりの近所の光景があった。


お互い「なんだったんだ?」という顔でキョトンとしていると、めぐみは「あ!もうこんな時間だよ!」とめぐみが左手の腕についている猫型の腕時計を見せてきた。時計の針は12時30分を指していた。俺はそれを見て「ま!!まじかよ!!もうこんな時間か!??」と俺は少し戸惑った。が、「もう遅いし親も心配するから帰るか!」と返答し、俺らは先ほどのロマンチックな状態はどこにいったのかというような感じで、帰り支度をイソイソと開始し始めた。


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