勇者様の変態
「っ、ちょっ、聞いてねぇぞっ!」
「何とろとろ動いてるんですか勇者様!
早く魔物を倒さないと!たぁっ!」
「普通こういうのって最初の町の
周りは雑魚ばっかじゃねーのか!?
難易度高すぎだろこれっ!
下手したら死ぬっ!!!
いや下手しなくても死ぬ!!!」
「…ふぅ…倒した…。もうっ、
勇者様!さっきから私ばっかりが
倒してるじゃないですかぁ!」
「はぁ…はぁ…無茶を言うな…。
というかあの巨大豚…。
臭いんだよ…。体当たりされた時の
臭いがまだ残ってる…。」
「さぁ!行きますよ!」
「あぁ…というかリン、今俺達はどこに
向かっているんだ……?」
「え?もちろん魔王のところに…。」
「ん?いや、そりゃ最終目標は
そこだろうが…。その前に隣町に
行ったり洞窟のボスを倒したり
するんだろ…?」
「何言ってるんですか?本当、
勇者様変ですねぇ…。魔王の城はほら、
もうすぐそこですよ?」
「………え?」
見上げると確かにすぐそこには
大きな城がある。
「…展開速すぎだろおお!!」
「ひゃんっ!だから急に
叫ばないで下さいって!!
耳がキーンとなりますっ!!」
「着いたな」
いとも簡単に魔王の城へ到着した。
「ついに…魔王との決戦の時、ですね!」
「何が『ついに』だよ。町を出て
数時間しか経ってないだろ。」
「…!!大変です勇者様!!」
「…?…どうかしたか?」
「魔王の城の入り口…
鍵がかかっています!!
残念ですが、どこかにある
鍵を探しに行かないと魔王を
倒せません……。勇者様?
何でちょっと嬉しそうなんですか?」
「いや、ちょっとそれっぽく
なってきたなと思ってさ。
いや、まぁこっちの話だ。」
「変な勇者様。これからは変者様って
呼びましょうか?」
「嫌だし、ネーミングも微妙だから
やめておいてくれ。」
「じゃあ、魔王の城の鍵を
探しに行きますよ、変者様。」
「俺が拒否してもそう呼ぶなら
最初から聞くなよ。」
「と言っても、どこにあるか
分かりませんね…。一旦町に
戻りますか、変者様」
「はいはい…。また魔物と
戦わなきゃいけないのかよ…」
「今度は私は手を貸しませんからね。」
「嘘だろ!?」
「嘘です。」
「…くっ!お前俺で遊んでるだろ。」
「ばれましたか?結構面白かったけど、
これ以上やったら勇者様が
拗ねちゃいそうなので、やめてあげます。
あとお前じゃなくてリンです。」
「勇者様ってもっと尊敬される
べきものじゃないのか…?」
その後また巨大豚(ブラックオークと
呼ばれているらしい)に三度ほど遭遇し、
二度目の戦闘の際に左腕に
わりと深めの傷を受けてしまった。
リアルに痛いからやめて欲しい。
リンが用意していた薬草のおかげで
多少痛みは和らいだが。
「疲れた…」
「ようやく町に戻ってきましたね。
でももう真っ暗ですね。今日は
宿屋で泊まりますか。」
「ん?俺が目を覚ましたあの
木の家じゃダメなのか?」
「あそこはベッド一つしか
ないですから…。ゆ、ゆ、
勇者様が私と寝たいっていう
なら別に私はい、一緒でも
良、良いんですけどねっ!」
何だこの反応、可愛いな。
「一緒に寝るか?」
「ふあっ!?ゆ、勇者様の変態!」
「痛ぇっ!お前のビンタは
マジで痛いからやめろ!!
しかも今のは理不尽だろ!!」
結局その日は宿屋に泊まることになった。
ベッドがしっかり2つ
あって少し残念に思ったことは
リンには言わなかった。
またビンタされるし。
翌朝ーーー、
「ふぁあああ、よく寝たぁ…」
「お早うございます勇者様!
さっ、早く準備して!町の人々の
話を聞いて、鍵のありかを
突き止めますよ!」
「…ちょっと思ったことを言って良いか?」
「…?…何ですか?」
「ビンタは無しな?」
「…分かりました。」
「お前のその服…さ、露出が多くて、
まぁ動きやすいのは分かるんだが、
その…」
言わんとすることを察したのか、
みるみる内にリンの顔が赤くなる。
マズイ。これは。
「勇者様の変態っ!」
「うっ!痛いって…グーパンチは
無しだろ…。顔の骨折れたんじゃ…。」
「ビンタはしてませんからねっ!」
この旅の間、あと何回リンから
殴られるのだろうか。
…少なくとも100回は超えそうだ。
2話目を読んで下さった方、
ありがとうございます。
こういうノリで書いていける
ジャンルは書きやすいですね。
そのせいか今回の話は内容が薄い気も
しますが…。気のせいです。気のせい。
ではまた3話で!